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Ubuntu Weekly Topics

2009年11月13日号 10.04の開発と諸元の変更・9.10へのアップグレード・UWN#167・CUPSとWebkitのセキュリティアップデート

10.04の開発

9.10のリリース(と,リリース直後に毎回発生する怒濤のアップデート)と,リリース後の「お祭り」であるUbuntu Open Weekも終了し,Ubuntuの開発ベースは次バージョン10.04 “Lucid Lynx”へ移りつつあります。

Lucidの開発における主要な目標はUbuntu Developer Summit/Lucidで決まるのですが,UDSを前にBlueprintへの大量の登録が行われています。中には妙に印象的なものもありますので,これから何回かに分けて,筆者の主観に基づいて「気になるもの」「凄そうなもの」をお届けします。

ただし,これらはまだUDSでの議論を経ていませんし,誰が責任を持つのか,本当に実装されるかといった点がまったく決まっていません。以下の「新機能」のいくつかは(場合によっては多くは)10.10回しになったり,あるいは日の目を見ずにそのまま忘れられていく可能性もあります。すなわち,下記の文章のほとんどには,「かもしれません」や「たぶん。きっと」といった語尾を適切に補って頂く必要があります;)

Ubuntu ServerとCloudサポートのARM版

Ubuntu 9.10ではARMプロセッサ搭載マシンの「Desktop向け」サポートが提供されていましたが,10.04では「Server」用途へのサポートが追加される可能性があります。ターゲットとするアーキテクチャはARMv7(Cortex A8とA9)とあります(注1)。

これだけであればそれほど大きな話ではないのですが,wiki.ubuntu.comにあるSPECには,「Bootloader」という項目があります。この項には,「今のところu-bootがブートローダとして広く使われているが,このままであることはあまり望ましくない。Ubuntu Serverには標準的なARMのブートローダを開発し,それを用いることを検討すべきだ」といった記述があります。同様の議論は以前からあり注2),いずれCanonicalによる「ARM環境の標準的なブートローダ」の提供を期待できるかもしれません。

注1
ちなみに,Ubuntu 9.04のARMサポートはARMv5まで,9.10はARMv6までとなっているため,もし仮にこの提案が採択された場合,「毎バージョンサポートされるARM命令セットが更新される」という恐ろしい展開になります。もっともこれは「Server」のみの話ですし,9.10 Desktopの主要なARMサポートはMarvellの"Dove"(ARMADA 510。Cortex A8より対応命令セットが狭い)であったため,Cortex A8未満を切り捨てということにはなりにくいはずです。
注2
ARMデバイスの多くは,「標準的な起動手法」や「標準のデバイス構成」というものが確立されていません。デバイスの数やバリエーションがあまりにも多すぎるため,機器ごとに実装が異なり,また標準化されたブート手法といったものがないためです。ARMSoftbootLoaderはこの解決策として,「Linux Kernelをブートローダの代わりに使い,GRUBと同様の設定ファイルを用いて起動し,そこからさらに別の任意のOSを起動する」実装です(言い換えると,「一度Linuxを起動させて,そこからさらに別のOSを起動しなおす」ことでLinux Kernelをブートローダの代わりに使う実装で,最初のLinuxはデバイス標準のLinuxに細工したものを用いる=Linuxが動くすべてのARMデバイスでサポート可能,というものです)。

10秒で起動するデスクトップ

以前にも何度かお伝えしている,「10.04では10秒でデスクトップが起動するようにする」という目標です。9.10でUpstart関連の大きな移植が終わり,チューニングによって十分に時間の短縮を積み上げることが可能になったため,かなり期待できるでしょう。

また,体感性能の改善にもつながる,スムーズな起動遷移も期待できるものです。「Provide a smooth boot experience for the transitions between grub/KMS/usplash/xsplash/gdm/session.」ということで,GRUB時点から(GRUB2になって高解像度な画像も利用できるようになったので)グラフィカルなデザインを表示し,そこからスムーズにGDMやデスクトップ画面までつなげる,という動作が期待できるでしょう。

開発体制の変更

10.04の開発を円滑に行うため,9.10で得た知見を元に,開発体制やそれに付随するツールも更新されようとしています。

KVMを使ったテスト環境

10.04の開発では,よりの動的にKVMを使ったテスト環境を用いる方向になりそうです。UECを使ってテスト環境を作り,そこにVNCなどで接続してもらうのはどうだ,最新に近いKVMの新機能である,「HTTP越しにISOイメージを取得しながら起動する」(例:kvm -m 512 -cdrom http://example.org/ubuntu-10.04-desktop-amd64.iso)機能の利用・PC上にKVMを起動して随時テスト,などといった内容が話し合われています。

主な論点は,「技術者以外のUbuntuユーザーにAlpha・Beta・RCを気軽にテストしてもらえる環境を作りたい」という点です。議論よりはブレインストーミングに近い形の議論ですが,この内容はおそらくUDSに持ち込まれ,何らかの形になって帰ってくることが期待されます。

Debianスタイルのパッチタグへの変更

これまでUbuntuのdebパッケージでのパッチに含まれるタグは,上流であるDebianとは微妙に異なるフォーマットを取っていました。これが,DebianのDEP-3形式のタグ方式に統一されることになりそうです。これにより,DebianとUbuntuでパッケージのパッチをより少ない作業で共用できるようになるため,Debian・Ubuntuの両方に手を出している開発者や,双方に存在するパッケージの管理負荷が軽減される見込みです。

9.10へのアップグレードは不安定?

英The Registerに,9.10へアップグレードしたらさんざんな目にあったという趣旨の記事が掲載されています。「9.10にアップグレードしたユーザーの10%だけが上手くいって,あとの人はヒドい目に遭う」(意訳)といった発言も掲載され,物議を醸していました。

この内容に,CanonicalのHead of platform marketingであるGerry Carrさんが,UbuntuForums.orgの投票結果を添えて反論しています。いわく,「9.10で特別にアップグレードに失敗するユーザーが増えたという事実はない。10%の根拠を示すべきだ」。

もちろん,こうした投票のたぐいは母集団によって大きく左右されるので判断は冷静に行うべきですが,「わざわざCanonicalの社員が能動的に(しかもblog.canonical.comで)批判する」というのは非常に珍しい事態のため,どのような形で収束するのかを眺めてみると,メディアの問題を考える一助になるかもしれません。

Ubuntu Weekly Newsletter #167

Ubuntu Weekly Newsletter #167がリリースされています。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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