Ubuntu Weekly Topics

2011年1月21日号 QtとUbuntu・Unity 2D・新しいXスタック・UWN#219・Ubuntu Server Survey 2011

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4.5 分

QtとUbuntu

Natty(11.04)の開発にエンジンがかかる中,Mark Shuttleworthが,⁠Nattyの次では,QtライブラリもLiveCDに含められればと思っている」というblogエントリを公開しました。QtはKDEなどで使われる(そして,UbuntuがメインにしているGNOMEが採用するgtkと同じような)アプリケーション開発のためのライブラリで,GUI表示を含めた広汎な機能を担うものです。現在のUbuntuではQtは含められておらず,もしQtを利用したアプリケーションを利用したい場合,かなりの容量の追加インストールが必要な状態です。言い換えれば,LiveCD環境では通常の場合,Qtを利用したアプリケーションは利用不可能でした。Qtを利用したアプリケーションには(gtkと同じように)完成度の高いものが多く,⁠容易にインストールできない」というのは,LiveCD環境の使い勝手を損ねる状態となっていたと言えます。

「Nattyの次」でQtがデフォルトインストール対象になれば,この状況は大きく変化するかもしれません注1)⁠

Qtも利用するようになる,ということで,⁠GNOMEはどうなる?」という疑問が沸いてくるかもしれませんが,Jono Bacon(Canonical社員&Ubuntu Community Manager)のblogに掲載された記述ではそうしたことはなく,⁠UbuntuがGNOMEから離れる」というわけではありません注2)⁠

いわく,⁠Q: Does this mean you are supporting GNOME less? – A: not at all. Ubuntu will continue to be built on GNOME technologies and ship GNOME applications. This decision is not reducing our commitment to GTK or GNOME, it is merely expanding it to include Qt.(参考訳:Q: これはGNOMEサポートが後退したりすることを意味しますか? A: いいや,そんなことはない。UbuntuはGNOMEの技術を利用し続けるし,GNOMEアプリケーションを含んで出荷される。Qtライブラリを同梱する,という決定は,GTKやGNOMEへの注力を減らすものではない。あくまで,Qtライブラリを含む形に拡張される,というだけだ)⁠

また,⁠Qtをデフォルトでサポートする」ということは,単に「Qtで書かれたアプリケーションが利用しやすくなる」というに留まらず,旧Ubuntu Mobile(現Netbook Editionや一部タブレット・Smartbook向けバリアント)系で使われる「組み込み環境向けの,Xを必要としないQt環境」で開発されたアプリケーションもまた,デフォルト状態で動くように準備しやすくなる,ということでもあります。

注1
ただ,LiveCDの容量確保はとても大変な取捨選択を伴うものなので,これによって削られるものが何なのか,という問題は別途発生します。UbuntuのLiveCDは,非圧縮2GB前後のファイルシステムを「なんとか」CDサイズまで収めたものであるため,Qtライブラリが新規に容量を食うようだと,デフォルトインストールから落とされるソフトウェアが出てくる可能性があります。
注2
デスクトップ環境が純粋なGNOMEからUnityへ移行することと合わせると,⁠GTKもQtも選べる」という事実から,妙な深読みをされてしまうのは仕方のないところではあります。

Unity 2D (Powered by Qt)

Ubuntu 11.04のデスクトップ環境,Unityにも大きな変化がありました。11.04版Unityは10.10のNetbook Edition版Unity(Mutterベース)とは異なり,Compizをベースにしたもので,いわゆる3Dデスクトップ(Composite)が利用できない環境では動作しないものでした。ですが,Qtを用いた2D版Unityが実装されたため注3)⁠この状況は大きく変わるかもしれません。スクリーンショットはWEB UPD8LifeHakcerのものを,実際にインストールしてみる手順はこちらを参照してください。

ただし,こうしたパッケージの導入はいわゆる「人柱」になる覚悟をし,バックアップを取ってから(あるいは,壊れても構わない環境を準備してから)にしましょう。

注3
これにより,UnityにはMutter版・Compiz版・Qt版と三種類の実装が存在することに……。

New X Stack

昨年の11月に話題にした11.04のX.orgのバージョン選定に関連して,xserver 1.10 + mesa 7.10環境のテストスタックが準備されています。

Ubuntu Server Survey 2011

「Ubuntu Serverがどのような用途に使われているのか」を収拾するための大規模アンケート,Ubuntu Server Survey 2011が開催されています。このSurveyはUbuntu Server Editionのユーザーを対象に行われるもので,Ubuntu Serverの開発方針にも一定の影響のある,重要なアンケートです。

前回2010年の結果は2010年4月2日号から確認してください。

今回のSurveyはhttp://survey.ubuntu.com/から「Ubuntu Server Edition Survey 2011」をクリックすることで,誰でも回答できます。特にUbuntu Serverを業務で利用している場合や,今後業務で利用する可能性がある場合には,回答を行っておいた方がよいでしょう。

Remnant,Googleに移籍

Ubuntu(とCanonical)を代表する開発者の一人,Scott James Remnant(Ubuntuのinitデーモン,Upstartの作者)CanonicalからGoogleに転職することを明らかにしました。RemnantはUpstart以外にも多くのコアパッケージのメンテナンスに関わる人物で,この転職を短期的に評価すると,⁠Canonicalにとって痛手である」と言えます。もっとも,Ubuntu全体やLinux全体から見ると,Upstartを積極的に利用しているChrome OSに,より積極的にRemnantの影響が加わる,という考え方もでき,Upstartの開発・業界全体への影響といった観点から見ると,マイナスばかりでもありません。

RemnantはGoogleへの転職後もUpstartの開発に関わる,という宣言をしているので,これによってUpstartの開発作業が停止する,といったこともなさそうです注4)⁠

注4
UpstartはChrome OSでも利用されているため,開発を止めてしまうとGoogleにとっても困ったことになってしまいます。

Ubuntu Weekly Newsletter #219

Ubuntu Weekly Newsletter #219がリリースされています。

その他のニュース

  • GRUB2の起動画面を変更する方法
  • NVIDIAのビデオカードを用いて,外部モニタをうまく扱う方法。
  • Nexus SにUbuntuを入れてみた例。
  • Nattyで利用される壁紙募集
  • 新しいSoftware Center(のApp Store)モックアップが掲載されています。
  • 新しいUbuntu Oneのコントロールセンターのモックアップも公開されています。
  • 開発者向けの小物ツール,check-mirが公開されました。check-mirは,MIR時,対象とするパッケージがbuild上依存するパッケージをリストし,MIR可能かどうかをチェックするためのツールです。通常のユーザーにはあまり影響はないのですが,check-mirはPythonで書かれた小さなプログラムです。aptやdpkgに関わる小物ツールを作ってみたい場合,良いサンプルとなるはずです。ubuntu-dev-toolsパッケージをインストールし,中身を確認してみると良いでしょう。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

コメント

コメントの記入