Ubuntu Weekly Topics

2012年11月9日号 UDS-Rの議題(1)・Steam for Linuxのベータテスト・UWN#290

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UDS-R(1)

UDS(Ubuntu Developer Summit)が行われ,Raring(13.04)の開発がスタートしました。この連載でも今回から何回かに分けて,UDSで話し合われた新機能(=Raring世代で実現されるかもしれない新機能。注1について見ていきます。

今回は,おもにFoundations(Foundationは,カーネルを除いたUbuntuのコア部分のことで,Ubiquityなどのインストーラーやパッケージマネージャー,あるいはブート時間などの性能要件などが含まれる)⁠Desktopの2つのカテゴリから,全体方針に影響する話題を中心に抜き出しています。

なお,Ubuntu本体はRaringではアルファ版をリリースしない方針となっており,スケジュールもこれに基づいたものに修正されています。

  • foundations-r-wubi-redesign:Wubiを再デザインし,より使いやすいWindows向けインストーラーを準備しよう。
  • foundations-r-arm-boot-resume-speedup:ARMハードウェアを中心に,ブート時間やサスペンドからの復帰の時間を短縮できるようにしよう。
  • foundations-r-upstart-user-session-enhancements:UpstartのUser job機能を使って,デスクトップ体験を向上したり,安定したサービス実行が行えないか検討してみよう。たとえば「起動してからずっと動いている」プロセスは,もういっそデスクトップセッションとして管理するのではなく,Upstartのjobとして管理する手もあるはずだ。
  • foundations-r-opt-installation:商用アプリケーションのようなもののために,/optにソフトウェアを導入しても問題が起きないようにしよう。AppArmorが動作を制約してしまったり,Dashから見えなかったり,といった問題を解決しなくてはならない。
  • foundations-r-aarch64:aarch64(64bit ARM)やARMv8のために,コンパイラや周辺ツールを整理しておこう。
  • foundations-r-improve-cross-compilation:クロスコンパイルが簡単に行えるように,ソフトウェアビルド上のいろいろな問題を潰しておこう。
  • foundations-r-uefi-fastboot-ui:Ubuntuにも「次の再起動後にファームウェア設定画面を開く」というオプションを追加しよう注2)⁠
  • foundations-r-arm-ubiquity:ARM向けに,インストーラーをもう少し軽量なものにしたり,より適したものにできないか検討してみよう。
  • foundations-r-python-versions:13.04こそ,インストールメディアにはPython 3だけを含めるようにしよう。
  • foundations-r-improving-dist-upgrades「アップグレードしたら動かなくなった」といった問題がおきないように,もっと安定したアップグレード方法がないか検討してみよう。
  • foundations-r-dh-apparmortemplat:AppArmorの適切なテンプレートを,⁠ベース」定義から自動的に生成できるようにしてみよう。たとえば「ネットワークアクセス」⁠個人的な写真」といった定義から,適切なプロファイルが生成できれば,いろいろなアプリケーションを包括的にAppArmorでガードすることができるようになり,誰でも簡単に強制アクセス制御の恩恵を受けることができるはずだ。
  • foundations-r-gaming-platform-binaries-longevity:Ubuntuをゲーム用環境に利用できるように,環境を整備しておこう。
  • desktop-r-gaming-platform-graphics-support:ゲーム用環境として利用できるように,利用できるAPIの整理やハイブリッドグラフィックス環境(Intelの内蔵GPU+外付GPUで構成されたノートPC)での動作,そして「Unityがゲームの邪魔をしない」状態にしよう。
  • desktop-r-gaming-platform-input-support:ゲームにはパッドやジョイスティックが必要なので,そうしたデバイスを適切にサポートできるようにしよう。PCに接続できるゲームパッドはいろいろな種類があり,さらに入力できるボタンや認識する方向キー,アナログ入力か否かなど,さまざまなサポート項目が必要だ。ひとまず最初の目標として,Xbox 360やPS3のゲームパッドをサポートするようにしよう。
  • desktop-r-gaming-platform-process-cleanup:ゲームコンソールとして動作するには,アプリケーションがクラッシュしたら「無事に」デスクトップに戻る機能が必要だ。もともとのウインドウレイアウトや解像度を適切に復帰させるにはどうすればいいか検討してみよう。
注1
UDSで話し合われた機能は,⁠こういうものを実現してみよう」という段階でしかなく,ここから設計や実装が行われます。結果として「やってみたら明らかにムリ」というものも含まれてしまうため,実際に13.04に搭載されるかどうか(=現実的に実現できるか・リリース品質に達してQAを通過できるか)は確定していません。ここで紹介した機能のうち,実際に実現するものは7割程度と考えておくのがいいでしょう。もしも「この機能はぜひ実現するべきだ!」といったものがあれば,開発コミュニティは常に人手不足ですので,人的,あるいは金銭的なリソースの提供は歓迎されるはずです。なお,現状はまだFeature Definition Freezeすら迎えていないため,ここで挙げられた機能のうちいくつかは,開発にすら入らずに撤回される可能性があります。
注2
なぜわざわざOS側にこのような機能が必要なのかというと,UEFI FastBootを有効にしたマシンでは,起動時にUSBキーボードが利用できず,設定画面に入るための操作が行えないことがあるからです。⁠ことがある」というか,特にWindows 8世代のハードウェアではブート時間短縮のためにこの傾向が顕著で(UEFI的にUSB HIDドライバのための処理を省略してブートする)⁠結果として「どんなボタンを押そうが設定画面には入れない,唯一起動時に有効なのは,リカバリーモードに入るための,電源投入時の特殊なボタン押下のみ」というマシンがごろごろしています。Windows 8を搭載したメーカー製PCには,こうした操作を行うために「高速ブートを無効にする」といったオプションが用意されているようです。

Steam for Linux

「ゲームコンソール用OSとしてのLinux」の第一歩が踏み出されました。これまでに何度か紹介してきたLinux版Steamのベータテストが開始されています。

「いまのところ」Ubuntu 12.04 LTSのみ正式対応,というステータスです。スクリーンショットはSteamのコミュニティサイトで確認できます。対応ゲームは11月7日時点で26個で,Team Fortress 2(Free to playモデル)World of Gooのデモ版を無料で,その他のゲームについては有償で購入うして遊ぶことができるようになっています。

Steamのアカウントがあればベータテストへ応募できます。ベータアカウントなしに利用する方法も出回ってしまっているものの,まずは正式に応募するのが適切です。

なお,ゲーム用に十分なパフォーマンスを実現するには,ひとまずのところはNVIDIAのGPU(とプロプライエタリドライバ)が必要になりそうです注3)⁠各種ドライバを試すための対応表がありますので,場合によってはこれとセットで「うまく動くドライバを探す」というチャレンジが必要になるかもしれません。

注3
RadeonはLinux版ドライバ(fglrx)の安定性やパフォーマンスにまつわる問題があるだけでなく,ゲーム開発者がリファレンスとして用いるのがNVIDIAのGPUであることから,当面のあいだは相当に不利な状態になると見られます。もっとも,オープンソースドライバの完成度やベンダのコミット度合いで言えばRadeonの方が圧倒的に良好なため,⁠プロプライエタリドライバを使い,カーネル更新のたびにNVIDIAの対応を待つ」ことに耐えられれば,という条件は付きます。

UWN#290

Ubuntu Weekly Newsletter #290がリリースされています。

その他のニュース

今週のセキュリティアップデート

usn-1621-1:MySQLのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-November/001884.html
  • Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-3144, CVE-2012-3147, CVE-2012-3149, CVE-2012-3150, CVE-2012-3156, CVE-2012-3158, CVE-2012-3160, CVE-2012-3163, CVE-2012-3166, CVE-2012-3167, CVE-2012-3173, CVE-2012-3177, CVE-2012-3180, CVE-2012-3197を修正します。
  • MySQLのCPUOct2012に相当するリリースです。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
  • 備考:Upstreamのリリースにおいてセキュリティ修正とバグ修正が分離されておらず,かつ十分な情報が公開されていないこと,そしてパッチを追いかける方法が存在しないことから,この更新はUbuntu本来のリリースポリシーとは異なり,以前のバージョンとの十分な互換性が提供されていません。本番環境に適用する前にテストを行なってください。
usn-1622-1:Muninのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-November/001885.html
  • Ubuntu 12.10・12.04 LTS・11.10・10.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2103, CVE-2012-3512, CVE-2012-3513を修正します。
  • 不適切なテンポラリファイルの取り扱い・ステートファイルのパーミッション設定ミス・設定ファイルの不適切なロードによる任意のコード実行が可能な問題がありました。
  • 対処方法:通常の場合,アップデータを適用することで問題を解決できます。
usn-1623-1:Mesaのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-November/001886.html
  • Ubuntux 12.04 LTS用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-2864を修正します。
  • 配列の添字がオーバーフローすることにより,不適切なメモリアクセスを行う問題がありました。結果として任意のコードの実行が可能です。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。
usn-1624-1: Remote Login Serviceのセキュリティアップデート
  • https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-security-announce/2012-November/001887.html
  • Ubuntu 12.10用のアップデータがリリースされています。CVE-2012-0959を修正します。
  • ログインユーザー変更時の機密情報の破棄が不十分なため,アカウント固有の情報が露出する可能性があります。
  • 対処方法:アップデータを適用の上,システムを再起動してください。

著者プロフィール

吉田史(よしだふみひと)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社創夢所属。システム管理を中心にWindows/PC Unixを併用している。Ubuntu Japanese Teamではパッケージサーバの管理や翻訳などの作業を担当。

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