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どうなる? 2011年の仮想化技術

2011年の仮想化を予想してみると、オンプレミスにプライベートクラウドを構築する方式と、パブリッククラウドを利用する方式とが混在する、多惑な年になるのではないでしょうか。

2010年を振り返ってみると、各種仮想化ソフトウェアが出揃い、サーバやストレージ、ネットワークなどもこぞって「仮想化対応」をうたっていました。また、さまざまなソフトウェアも「クラウド対応」と銘打ち、仮想化およびクラウドへ大きく舵を切ったように思います。まずは2010年の予想の答え合わせからいきたいと思います。

仮想化は当たり前になった?

2010年の予想のまとめとして、仮想化がコモディティ化して当たり前になる、と予想しましたがどうでしょうか。これはなかなか判断に困りますが、あまり仮想化仮想化していない案件でも、使用するプラットフォームがすでに仮想化された環境に仮想マシンを作って作業をする、という話が一般ユーザさんからも出てきたので、仮想化に対する懸念自体はかなり薄まってきたように思います。少なくとも仮想化=不安定というような考え方は少なくなり、むしろコスト意識の高まりの中で仮想化する、サーバ集約することは当たり前になったように思います。

クラウドは一般化した?

では、クラウド、特にパブリックなクラウドサービスはどうでしょうか。2010年には、さまざまなベンダがクラウドサービスをアナウンスしました。IaaS/HaaS的に仮想マシンを借りられるものから、大がかりに業務系システムをホスティングするための移行プロジェクトも走り始めました。

ただし現在の所では、パブリッククラウドの最大顧客は携帯ゲームなどを提供するソーシャルアプリベンダであって、一般ユーザの業務システムをクラウドサービスに載せるケースはほとんど無いようです。また、ネットサービスを提供する企業も一時期パブリッククラウドへの移行を検討していたようですが、クラウド移行=コスト削減につながらないことが理解されるようになってきたのか、現行システムの利用率を高める方向に揺り戻したようです。

そんな感じで、2010年のクラウド市場は、どちらかといえば売り手側は笛を吹いたが踊ったのは一部の人だけ、という感じなのかもしれません。

2011年の仮想化

さて、2010年の状況をふまえて、2011年の仮想化を予想してみましょう。

サーバ仮想化戦線異状なし

まず、仮想化ソフトウェアやハードウェアの分野ですが、あまり大きな動きは見えないだろう、というのが現状の見通しです。強いていえば、Red Hat Enterprise Linux 6がリリースされてLinux KVMが本格的に利用可能になってきたため、特にLinuxでホスティングをしているベンダや、サービス提供しているシステムが少しずつ仮想化の方向に進むのではないかと思われます。

ただし、メジャーバージョンアップにすぐに飛びつく必要があるわけでもないですから、実際に入り始めるのはマイナーバージョンアップを2回ぐらいしてからとなると、数が目に見えて増えてくるのは2011年の後半ぐらいかもしれません。とはいえ、変化がない分、まだまだ仮想化を導入していなかったユーザでの仮想化導入が進むことが考えられます。

2011年はクラウド管理に注目

ハイパーバイザーに大きな変化がない分、2011年はクラウドの管理に注目したいと思います。クラウドを活用したい理由は増えすぎたシステムを効率的に運用することですから、単純にインフラをクラウドに移行しただけではその目的は達せられません。死活監視やリソース監視、システムのライフサイクルマネジメントなどの運用管理業務を、より効率化する必要があることをユーザは感じ始めています。実際、現在ある製品では運用管理業務で必要なタスクをすべてをカバーしきれていないですし、結局いくつかのソリューションをまとめなくてはならないところに、現状の仮想化のジレンマがあるように思います。つまり、仮想化はOSよりも下の層を統合化したが、OSよりも上の層の問題はそれほど解決はできていないということです。

このあたりが、小規模では仮想化を導入したけれども、全面的な仮想化への移行を阻む要因であるといえるでしょう。

今のところ、クラウド管理の問題に対する解決方法は見えにくい状態にあるといえます。従来の運用管理のスキームは、ユーザが求めているコスト感と随分と隔たりがあるのが実状です。残念ながらユーザが求めているのは無料か、限りなくそれに近い低コストなソリューションであるのに対して、従来の運用管理ソリューションはエンタープライズクオリティ、エンタープライズコストです。多彩な機能を提供してはいるが、コストが合わないジレンマをかかえています。このようなミスマッチをどのように解消していくのかが、2011年の仮想化の課題といえるでしょう。

2011年はストレージにも注目

2010年の動向として注目すべきは、ストレージベンダーの買収の話が多かったことも挙げられるでしょう。HPとDellによるストレージベンダー3PARの買収合戦がその代表例といえます。

IAサーバが低コスト化してベンダー間での差違を生まなくなった今、差別化できるのはネットワークやストレージとの親和性や統合です。特にスケーラブルに容量、性能を増加させていくことができる分散ストレージの技術や、肥大化するデータ量を抑えるための重複排除などの技術が必要となってきます。

これらの買収戦略が具体的に市場に影響を及ぼしてくるにはしばらく時間がかかりますが、2011年にはストレージとネットワークを統合する技術としての10GイーサーネットやFCoE(FibreChannel over Ethernet)などが普及し始めると考えられるので、いろいろと動きが出てきそうです。

SSD、大爆発?

2010年はSSDがかなり使われるようになりました。特にノートPCなどではSSD搭載モデルが用意されるのが当たり前になり、サーバ分野でも徐々にSSDを採用するケースが増えてきました。一部の高性能なストレージI/Oが要求されるシステムでは、Fusion-ioのような高速なSSDを利用したシステムも出てきています。今後、エンタープライズなSSDソリューションはますます増えていくでしょう。

このように、SSDを活用する下地は整いつつあり、あとはコストでしょうか。大容量化は進んでいるため、コスト自体はしばらくすると落ち着いてくるのではないでしょうか。あとはストレージを仮想化し、よく使用するデータはSSD、あまり使わないデータはHDDと、内部的に階層化するようなソリューションが、現在では一番ハイエンドのストレージ製品でしか使用できないことが、ややもったいない気がします。

そこで注目しているのが、Facebookなどで開発、採用が進められているflashcacheというテクノロジーです。flashcacheはいってみれば、SSDをHDDに対するキャッシュとして利用する技術です。LinuxのLVMに組み込んで使用するアーキテクチャを取っているので、XenやKVMなどと組み合わせて使えば、仮想化するとストレージが遅くてという不満も解消できそうです。

flashcache
URL:http://www.facebook.com/note.php?note_id=388112370932

いずれにしろ、2011年のストレージは「高速化」がキーワードになるのではないでしょうか。

デスクトップ仮想化+タブレット=?

デスクトップ仮想化ですが、2010年はかなり色々なところで導入検討が進んだようです。ただ、まだまだ規模としては試験導入的な色合いも濃いように思いますが、その中で注目されるのがタブレット端末の利用です。iPadやAndroidなどのタブレット端末が広まる中、PC用のアプリケーションをそのまま仮想デスクトップで利用できるので、タブレット専用のクライアントを開発する必要が無い点が興味を惹くようです。

業務システム向け専用端末が普及の鍵

一方で、タブレット端末は導入コストがまだまだ高いことや大量導入のための仕組みが無いこと、セキュリティの問題が起きやすいことなどから、業務用端末としての利用可能性を現状では疑問視する向きもあります。たしかに、タブレット端末の今のところのターゲットはコンシューマ向けで、ビジネス用途はかなり限定的です。この事情はスマートフォンでも変わらないことは、皆さんもよくご存じかと思います。しかし、回線キャリアの意向が働きやすいスマートフォンに比べると、タブレット端末は業務向けにビジネスが成り立つことが明確であれば、ハードウェアから作り込みをすることも不可能ではないので、2011年はデスクトップ仮想化+タブレット端末の可能性が見えてくる年になるかもしれません。

仮想化もテクノロジーからソリューションに

このように眺めてくると、仮想化も個別個別の技術についてはかなり煮詰まってきており、広く使ってもらえるソリューションに軸足が移りつつあるのがわかります。そういう意味では、まだ仮想化技術をスキルとして身につけていない人でも間に合いますが、早く身につけないと出遅れになってしまうよ、というタイミングになりつつあります。たぶん、1年後に仮想化技術のスキルを未修得となると「そんなスキルで大丈夫か?」ということになりかねないので、まだこれからの人は、ぜひ2011年は仮想化技術にトライしてみてください。

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