ストレージ進化論

第4回 ストレージの仮想化技術

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現在,仮想化といえばサーバの仮想化をまず思い浮かべる状況ですが,実は仮想化が実用化されたのはストレージの方が先で,すでに豊富な実績を誇る実用技術となっています。HDD単体の容量の壁はRAIDで乗り越えることができますが,異なるRAIDコントローラ間での容量の結合は,仮想化によって実現されるものです。

ストレージ仮想化の基本概念

1台の物理サーバ上で複数のOS環境を稼働させる,サーバの仮想化が注目を集めていますが,ストレージの仮想化はサーバの仮想化に先行し,すでに実用環境で当たり前に活用される技術となっています。とはいえ,ストレージの場合,大容量のストレージを複数に分割するのはパーティショニングなど従来からの技術で問題なく対応できるため,仮想化の使われ方としては複数台のストレージデバイスを統合して1つの巨大な「ストレージプール」としてまとめる,という形をとります。

企業のITシステムにストレージが1台しかないということはまず考えられないでしょう。データ量の増加に応じて買い増したりするため,何台かのストレージ・システムを組み合わせて使用している例が大半だと思われます。ストレージはそれぞれ管理手法も異なる上,容量を足し合わせて使うことができるわけではないので,結局は小さな単位に細分化された使いにくい空き容量が残っていくことになりかねません。こうした問題を解消するのがストレージの仮想化技術です。

ストレージの仮想化では,複数のストレージ・デバイスの容量を合計した巨大な仮想ストレージ・プールを作り出します。その上で,この巨大なストレージ・プールをパーティション分割するなどして必要な容量を切り出し,利用することになります。

ストレージ仮想化管理と従来型ストレージ管理

ストレージ仮想化管理と従来型ストレージ管理

仮想化を利用していない状態では,運用管理担当者はストレージ・デバイスごとに個々の空き容量を把握し,必要な容量分だけの空きがあるストレージ・デバイスを選んでサーバに割り当てる,という作業を行う必要があるのですが,仮想化されていればストレージ・デバイス個々の単位での管理は不要になり,空き容量の総計だけを把握していれば良くなります。運用管理が大幅に省力化されることは明らかでしょう。

さらに,ストレージ・デバイスでの容量確保の作業が,仮想化ソフトウェアのレベルで抽象化されるというメリットもあります。つまり,ストレージ・デバイスの設定管理ツールの使い方をデバイスごとに覚えなくても,仮想化ソフトウェアに対する指示だけでよくなり,必要な容量確保の実作業は仮想化ソフトウェアが背後で実行してくれるようになるわけです。

空き容量の統合は,DASをネットワーク・ストレージに移行した場合に得られるメリットと同様ですが,ストレージ・デバイスの境界を越えられる点で,さらに高度な抽象化が行なわれます。また,運用管理の負担を減らし,個々の設定管理ツールに習熟しなくても運用管理が可能になるため,さまざまなベンダのさまざまな機種が混在する環境での運用管理負担が軽減されます。

仮想化の実現手法

仮想化の基本的な考え方や得られるメリットについてはおおむね共通しますが,その実装手法にはさまざまな種類があり,ベンダや機種によって使い分けられています。

ストレージ自体が仮想化機能を実装している場合,他のストレージ・デバイスをいわば追加ディスクスペースとして接続し,管理するという形に見えます。この場合,仮想化機能を備えたデバイスを主とし,このデバイスを通じて他のデバイスを制御/管理していくという手法になります。現時点では比較的高額なハイエンド・デバイスで実装されている方式です。

ストレージ仮想化時のボリューム管理体系

ストレージ仮想化時のボリューム管理体系

また,SANに限定されますが,SANスイッチが仮想化機能を実装している例も増えてきました。SANストレージは基本的にSANスイッチに接続され,利用されるので,合理的な手法だとも言えます。この変形ともいえるのが,仮想化専用のアプライアンスを利用する方式です。いずれも,ストレージ・デバイスと仮想化ソフトウェアが分離されているため,構成の柔軟性が高く,ストレージ・デバイスを交換しても環境自体の一貫性が保たれる点がメリットとなります。

このほか,完全なソフトウェアベースの実装で,サーバ上にストレージ仮想化ソフトウェアをインストール/実行するやり方もあります。この方法では,ストレージ管理のためのサーバを用意することになりますが,ソフトウェアベースのためにコスト面では有利になることが一般的です。

ストレージの仮想化は,サーバの仮想化に比べて早い時期から実用段階に入っていますが,こうした各種の実装方法が並立している状態であり,標準が確立されるまでには至っていません。このため導入に際しては,すでに保有するストレージ・デバイスとの組み合わせなどにも留意しながら,適切な方式を選択する必要があります。

なお,ストレージに関しては,従来のHDD中心の構成から,SSD(Solid State Disk,フラッシュメモリ等を利用した半導体ディスク)の活用が始まった段階にあります。現時点ではコストや耐久性の面でまだHDDの方が優位にあると言われていますが,物理的な可動部分がないことによる消費電力の低さや衝撃等に強いといったメリットもあります。今後利用が拡大するにつれて価格が低下していき,導入しやすくなると期待されているので,今後ストレージ・システムを構築する際には,HDDかSSDか,という選択も新たに検討項目に加わってくることになりそうです。

著者プロフィール

渡邉利和(わたなべ としかず)

元はPC系雑誌の編集者。退職後フリーランス・ライターとして活動中。元々の関心対象はUNIXとTCP/IPネットワークだったが,UNIXがエンタープライズ用途にシフトして行くのに引きずられるように,現在はエンタープライズITの話題を追いかけることが増えている。

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