FreeBSD 7.1へようこそ

第5回 いつもおそばにFreeBSD~携帯デバイスにインストールしよう~

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新学期である。入学,進学,就職など,新しい道に進む人も,それほど生活がかわらない人も,また(筆者のように)旧年度の宿題がいまだに終わらない人も,新しい場所で新しい人との出会いが生まれるのがこの季節である。

本特集の最終回を飾る今回,新学期を祝して「世界最小の(?)携帯FreeBSD環境」をとりあげよう。USBフラッシュメモリやハードディスクにFreeBSDをインストールして使ってみるという話題である。このテクニックを使えば,フラッシュメモリひとつ持ち歩くだけで,いつでもどこでもFreeBSDが使えるだけでなく,FreeBSDの用意する魅力的な環境を,簡単に友人と分かち合えるという,実用性たっぷりの便利なテクニックである。

USBデバイスでFreeBSDを使う

フラッシュメモリやハードディスクなど,ストレージデバイスの大容量化と価格低下はとどまることを知らない。これは筆者が専門とする「半導体デバイス」「ムーアの法則※1に従って驚異的なスピードで微細化=大容量化を果たしてきたからである。お蔭で一昔前では高嶺の花であった容量のデバイスが簡単に入手できるようになった。ハードディスク容量の伸びは半導体のそれをさらに上回り,3.5インチのバルクものであれば,1Tバイトでも1万円を切り,2.5インチハードディスクでも500Gバイトで1万円を切るなど,最早「なんでもあり」の世界である。

※1)
インテルのゴードン・ムーア氏が40年も前に行った予言で,「集積度は3年で4倍になる」というもの。数値はともかく,何度も「壁」が囁かれながら「x年でn倍」の右肩上がり成長が40年も持続したことは手放しに素晴しい。

ここで,われらがFreeBSDのインストールに必要なディスク容量を調べてみよう。筆者の調べによると,

  • 「Minimal」でインストールした直後は257Mバイト
  • 「X-user」でインストールした直後は596Mバイト
  • 筆者の最低限のLaTeX環境(OpenOffice含まず)1.8Gバイト
  • 筆者のFreeBSD常用環境で6.8Gバイト

などと,今となっては驚くに値しないディスク容量しか消費しない。そうとわかれば,4Gバイトのフラッシュメモリを秋葉原の投げ売り価格で750円といった価格で入手できる今,USBストレージにFreeBSDをインストールして使うのが今時のファッショナブルであろう。内蔵ハードディスクを必要としないFreeBSD といえば,嚆矢といえる「floppy-1」をはじめ,1CDで動くFreeBSDとしてイタリアのFreeBSDユーザーズグループ(GUFI)が中心となって開発されている「FreeSBIE」とか,Linux方面では「Knoppix」が有名である※2

これらと比較して,USBストレージデバイスでFreeBSDを使う優位点は言うまでもなく,

  • ソフトウェアの追加が可能

といった「拡張性」,さらに

  • まったく普通の使い方でデータの書き込みができる※3
  • 自分が常用している「俺的環境」を他人に丸ごとコピーしてあげられる

といった「利便性」である。御利益をやかましく言わずとも,MicroSDのような豆粒ほどのデバイスにも完全なFreeBSDがインストールできてしまうのを知ると損得抜きで感動し,「世界最小(当社比)のUNIXシステムって,cool!」 と言いたくなるものである。早速手品の種明かしをしよう。

※2)
そういえばFreeBSDのLive File Systemもハードディスクを必要としない。
※3)
FreeSBIEでもUSBデバイスを挿しておけば保存がきくのだが,意識しないでよいという点で。

USBメモリでFreeBSD[インストール編]

警告!

本記事で紹介するやり方は,デバイス名やデバイス番号を間違うと,お使いのPCのデータを壊してしまうおそれがあるので,「自分の手で打っているコマンドが何をしようとしているのか(自分が何をしたいか,ではないことに注意)」を1つ1つ指差し点検しながら行うことに注意されたい。環境によって,一字一句コピーしてはならない(臨機応変に読み替えが必要)こともあるので用心が必要だ。

「あとで泣くのはあなたですから」であって,打ち間違えによるデータの紛失には筆者ならびに技術評論社は責任を負いかねるのであらかじめお断りしておく。

今回試したUSBストレージデバイスは,どれも秋葉原で安売りをしていたもので,

  • Transcend 4Gバイト USBフラッシュメモリ
  • Kingmax 4Gバイト USBフラッシュメモリ
  • Kingston 4Gバイト MicroSDカード + MicroSD USB2.0アダプタ

と,

  • Seagate 500Gバイト 2.5" SATA HDD + センチュリーマイクロ USB 2.0 アダプタ

である。

図1 USBストレージデバイス。容量は全部合わせて512Gバイト!

図1 USBストレージデバイス。容量は全部合わせて512Gバイト!

テストの母艦は筆者手持ちの2台のノートパソコン,2007年秋モデルのLet's Note CF-W7と,2002年限定バージョンのThinkPad X30である。これらのマシンでは,USBストレージを起動デバイスに指定することができる。図2の写真は,Let's Note CF-W7にUSBメモリをさしこんで起動し,起動画面でF2を押してBIOS設定画面を表示したところである。起動順位2番目に,USB HDDとして差し込んだTranscend社の4Gバイトメモリが認識されていることが見てとれる。

図2 BIOSではUSB HDDとして認識した

図2 BIOSではUSB HDDとして認識した

このように,USB HDD(など)としてメモリを認識するPCでは,FreeBSD をUSBストレージデバイスから起動できる可能性が高い※4

※4)
「できる」と断言したいところなのだが,USB HDDとして認識していても起動が完了しないPCも存在するようだ。読者諸賢の「動作レポート」に期待である。

インストールは「まったく通常の」手順で行えばよい。図2のように,USB HDDよりもCD(DVD)の方が優先して起動できるようにBIOSを設定しておいて,FreeBSD 7.1-RELEASEのインストールCD-ROMとUSBメモリとを挿入してマシンを起動する。そうすると,USBメモリがおなじみの「da(SCSI Direct Access device driver)」デバイスとして認識され,インストール可能になる。

著者プロフィール

三田吉郎(みたよしお)

東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻准教授。講義「電気磁気学」「わかる電子回路」やマイクロマシン研究の傍ら,FreeBSDの普及,開発に尽力する。FreeBSD ports committer。国際派を自任し,2007~8年9月までフランス国立情報学研究所(INRIA)招聘教授。共著書に「FreeBSD徹底入門」(翔泳社),「FreeBSD Expert」など。

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