「Windows Azureをたしなむ」、というコト。

第6回Windows Azureで変わるヒト、カネ、シゴト(後編)

前回に引き続き、日本マイクロソフト株式会社 畠山大有氏へのインタビューの様子をお届けします。

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<ゲスト>

日本マイクロソフト株式会社
パートナーアプリケーション推進部
デベロッパー&プラットフォーム統括本部
Q:技術の進化を阻むのは人間。技術はもうできているのに、使う側の人間のせいで進化をしていかない。その勘違いをどう払拭するのかというのが、実は我々の仕事だったりします。

畠山「昔のものにしがみつくことでビジネス的にスケールしないのはもったいないですよね。ただ、お客様サイドで世に出したい動画の元があったとしても、⁠配信するならWindows Azure Media Services(WAMS)じゃなきゃ絶対ダメです」と押し付けるのも間違っていて。きちんとお話を伺って、1つずつ解きほぐしていく作業が大切だと思います。テクノロジー的につながったり、ビジネス的に流れるようにステークホルダー同士の位置関係をとったり、その合間をとってきちんと価格破壊ができたりといった組み立てができたらベストだと思いますし、日々それを心がけています」

Q:しっかりとサービスの内容を把握して、納得の上で導入いただくというのが理想的な流れでしょうね。

畠山「最近はWAMSのご案内を通じて、さまざまな業界の方にお会いする機会が増えましたが、単なるテクノロジーの説明に終始するのではなく、その前段にはしっかりとした価値訴求が必要だと感じています。つい先日も、お客様からDRMの仕組みを知りたいというリクエストをいただきましたが、DRMを語るときってビジネス論点で語らないと意味がないんですね。高度なテクノロジーだけに、それなりのコストがかかるものなので、価値の認識合わせをする必要があります。根本的なところからご説明差し上げることで、⁠MSがやりたかったのはそういうことだったんですか!」と、結果的にはWAMSに対してポジティブな印象を持っていただけることも多いんです」

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Q:コスト意識や旧来のシステムを維持することのリスクという面で、日本はどこかのんびりしているように感じるのは気のせいでしょうか。

畠山「日本と海外とでは、マーケットやビジネス環境、企業ユーザの心持ちなどでギャップがあります。海外のスタッフに「日本にはHTTPではないストリーミング技術が結構残っている」という話をすると、⁠今、何年だかわかっているか?」と驚かれることも。彼らにとっては旧来型を残しておくことって、歴史的経緯もあって致し方ないのですが、リスクもはらんでいますよね。これまで、いくらでも先に進むことで得られるものがあったと思うのですが、問題先送りにするリスクを考えずに、時間だけが経ってしまっているように映るんだと思います。メインフレームからダウンサイジングとなった時も同じ現象がありました。そうして無用のレガシーが増えてしまうのは残念です。これはネットにも言えることで、 ⁠何かにしがみつかないと成り立たないビジネス⁠が、日本にはまだまだ多いということでしょうね」

Q:欧米や躍進著しいアジアは、変化に対してもっとスピード感があると?

畠山「アジアは新しいビジネスが次々に生まれる状況下にあるので、変化への対応は早いですね。たとえば急に「動画配信をMPEG-DASHで」となっても、⁠はい、わかりました」とすぐに始められるし、⁠トランスコードとはこういうものですよ」という細かい説明をしなくても、⁠あぁ、ちょっとファイル変えればいいのね」で動けてしまう。新興国ならではのフットワークのよさがあります。 欧米も比較的対応は早くて、⁠テクノロジーは自分たちの道具だから、道具に使われているようではいけない」という危機感が常にあるようです。以前、アメリカの放送局とディスカッションをした際も、⁠MSはパートナーの1つだけど、AmazonやGoogleとも常に情報交換している」と。ベンダへの対応という点においてもフレキシブルです」

Q:日本はどちらかというとその逆ですね。ソリューションを決めることがある種のゴールになっているケースがほとんどだと思います。

畠山「⁠⁠うちは○○を使っているから他はあまり気にしていない』という意識が大半で、テクノロジの中身の部分は見ずに丸投げが増えているように思いますね。実際は、サービスの終了などで自分たちに降りかかってくることでもあるので、広く情報を拾っておくのは大切なんですけれど。WAMSをお勧めする理由もじつはそこで、新旧の仕組みを同居させることを可能にする設計が、日本のマーケットに合っているからなんです」

Q:WAMSの拡張性と柔軟性をアドバンテージとして活用すれば、EOSなどで路頭に迷うこともないと。

畠山「そういう意味では、制作サイドの皆さんにとくに何かを意識してください、というのはないんですけどね。ダメな場合は最後にエンコードしてしまえばいいので(笑⁠⁠。マイクロソフトがやりたいことは1つで、⁠みなに普遍的なサービスをご提供する」ことだけです。その一環として、AppleやAdobe、Googleの映像部門の人々とは常に意見交換をしていて、⁠ちゃんとユーザを意識しながら先のことを考えましょう」と話しています。映像を作る人と流す人、作る人と編集する人と流す人というように、頭の中は疎結合でいいじゃないかと。ユーザ企業の中にはそれを1人でとか、100人単位でというところもあるかと思いますので」

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Q:技術的な心配なく、昔のコンテンツも新しいコンテンツも「入り口はなんでもいいですよ」という状況でいられるのは大きなメリットですね。逆に言うと、技術よりも「人の意識」のほうが抜本的な改革を迫られているような。そんな気がします。

畠山「むしろそこの部分で食べている人たち……「僕はこのインフラ作れます」という人にとって、WAMSを始めとするクラウド技術は、今後のキャリアを左右する存在とも言えます。

たとえば、Windows Azure SQLデータベースの破壊的なところは、⁠フェイルオーバークラスタ組まなきゃ」という作業が不要というか、組む意味がほとんどないんです。スケールする、パフォーマンスはある程度以上は出る、可用性も高い、という状態なので。今後は「DBの役割って何?」とか「ストリーミングインフラ技術者の役割って何?」というところが変わってくると思います。ITインフラを専門に手がけている技術者の人たちには、今現在、もしくは今後自分が本来的に取り組むことについても、考えてみていただきたいと思います」

Q:具体的にはどのような活路を見いだせばいいとお考えですか?

畠山「クラウドのテクノロジを応用する形で、⁠ITをサービス化』することにぜひ取り組んでいただきたいですね。また企業の資産を守るためにも、セキュリティの手を緩めることなく、むしろ強化するべきだと。そしてアプリケーションのクオリティについても考えなくてはなりません。となると、開発にももっとクビを突っ込むというか、前のめりな姿勢が必要になると思います。また、BIやビッグデータという観点から、システムのアウトプットの部分をきちんと見られているかどうか。システムから出てきたレポートをExcelなりに出力するにあたって、それらをきちんとケアできるのも、やはりエンジニアの方だと思うので。これまでとちょっと視点を変えて、新しい立ち位置での貢献ポイントについて考えてみるのもいいのではないかと思います」

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Q:どんなにテクノロジが発展しても、絶対的に「人」は重要であると。ただ、その関わり方に変化が生じるのは避けられない。

畠山「あらためて今、エンジニアのたたずまいが問われる時代なのかもしれません。テクノロジの進化によって、ネットで運用することの意義やミッション、従事するタスクはちょっとずつ変わって行くことと思いますが、絶対になくならないものに『オペミス』があります。私自身も何度か経験していますが、⁠どんなベテランでも、単純な間違いをする』ことはこれからも避けられませんし、それはどこのサービスにも言えること。もしオペミスが見つからなかったら、それは使われていないだけかもしれません。オペミスがなくなることはありませんが、人の努力や工夫によって減らすことはできます。そのためにどうするのかについてもぜひ考えてみていただきたいです」

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