at+linkの魅力を探る

第2回ついに登場した「at+link アプリプラットフォーム」魅力を探る

第2回目は、11月17日に発表された新たなサービスである「at+link アプリプラットフォーム」について伺いました。

ソーシャルアプリに最適化された専用サーバパッケージ

SNSのプラットフォーム上でゲームを提供する「ソーシャルアプリ」⁠ソーシャルゲーム」が爆発的に広まり、現在では多くのベンダがこの市場に参入しています。しかし、実際にサービスを提供する上で課題となるのが、サービスを提供するサーバ環境です。

通常ソーシャルアプリの運用では、インターネット上のサーバを使ってHTTP経由でゲームを配信し、さらにプレイヤーの情報もサーバ側のデータベースに保存します。つまり、ユーザ数などの規模に応じたサーバ環境を用意しなければなりません。

このソーシャルアプリに最適化されたサーバプラットフォームとしてat+linkが提供を開始したのが、専用サーバのパッケージである「at+link アプリプラットフォーム」です。ソーシャルアプリで利用されるケースが多いIaaS型のパブリッククラウドサービスとどういった違いがあるのでしょうか。at+link アプリプラットフォームのサービス開発を担当した、株式会社リンクのディベロッパーサポート マネージャーの文屋宏氏と同シニアエキスパートの前佛雅人氏にインタビューし、新サービスの特徴を伺いました。

お話を伺った⁠株⁠リンク ディベロッパーサポート マネージャー 文屋 宏氏(左)と、同シニアエキスパート 前佛雅人氏(右)
お話を伺った(株)リンク ディベロッパーサポート マネージャー 文屋 宏氏(左)と、同シニアエキスパート 前佛雅人氏(右)

IaaSのメリットとデメリット

at+link アプリプラットフォームのコンセプトとして、文屋氏は「クラウドと専用サーバサービスのいいところ取り」であると説明します。

現在、ソーシャルアプリを提供するプラットフォームとして、IaaS型のパブリッククラウドサービスが多く使われている理由には、仮想化技術を利用していることによる柔軟性の高さが挙げられます。ソーシャルアプリを提供する際、事前にユーザ数を予測し、それに応じたサーバを用意するのは困難です。したがって柔軟にサーバを追加してスケールアウトしたり、あるいは余剰リソースが生じた場合には簡単に規模を縮小することができるIaaSは、ソーシャルアプリに向いているというわけです。

また、多くのIaaSにおいて初期費用を無償にしている点もソーシャルアプリベンダにとっては魅力でしょう。提供するアプリが成功するかどうかについての判断が難しい以上、初期投資を可能な限り抑えたいのは当然だと言えます。

一方でIaaSの特徴であるリソースやトラフィックの利用量に応じて料金を支払う従量課金制は、利用量が少ない場合に支払う料金を抑えることができますが、ユーザ数が増えてアクセス規模が大きくなるとそれに伴って料金も跳ね上がってしまうという問題があります。特にユーザ数が右肩上がりで伸びているサービスにとって、毎月上昇する料金は大きな負担となりかねません。

さらにパフォーマンスの問題もあると文屋氏は指摘します。

  • 「実際にIaaSを利用されているいくつかの企業に話を伺いました。その中で、IaaSと専用サーバとでは同じCPUスペックでも、IaaSの方がパフォーマンスが悪かったという意見が多く見受けられました。パフォーマンスを確保するために仮想マシンを追加すれば、当然料金もかさんでしまいます(文屋氏⁠⁠」

IaaSにおけるこうした問題は、専用サーバの利用で解決します。専用サーバは定額で、アクセス規模によって料金が変わることがないうえ、1台のハードウェアリソースを占有して利用するため、スペック値どおりのパフォーマンスを得ることができます。

ただ、初期費用やサーバ追加までにかかる時間などの観点から、従来の専用サーバサービスではソーシャルアプリベンダのニーズに十分応えられないと感じたと文屋氏は言います。そこで専用サーバとIaaSの双方のメリットを持つサービスとして開発されたのが、at+link アプリプラットフォームというわけです。

クラウドの魅力を取り込んだ専用サーバサービス

「まずスケールアウトに関しては、90分でのサーバ追加という迅速さを実現しています。これは365日24時間変わりません」と文屋氏は説明します。多くのIaaSで実現されている分単位でのサーバ追加と比べると遅いように感じますが、ユーザへのヒアリングによれば必ずしも数分でのスケールが求められているわけではなく、90分でサーバが追加されれば十分だという声が多いようです。

at+link アプリプラットフォームでは、1台単位でサーバを追加することが可能で、追加したサーバの課金は日割りで行われます。このため、突発的にアクセスが増加した際にサーバを追加し、落ち着いたタイミングで解除すれば、アクセスが多かった期間だけの課金で済むというわけです。一般的に月単位での課金が多い専用サーバと比べ無駄なコストがかからないことを考えると、このメリットは大きいでしょう。また、申し込みからわずか5営業日で運用を開始することが可能です。

高性能サーバをパッケージで提供

at+link アプリプラットフォームでは5台のWebサーバと1台のデータベースサーバが基本構成として提供されます。サーバとは別にロードバランサーやファイアウォールが標準で提供されるほか、冗長化された2Gbpsのバックボーンでインターネットと接続されているため、ネットワーク面でも不安はありません。

文屋氏は「10万人~100万人程度のユーザがいるソーシャルアプリを前提に設計した」と話します。

サーバは、Web用が4コアのXeon L3426(1.86GHz⁠⁠・4GBのメモリ・500GBのSATA HDD、データベース用が6コアのXeon X5650(2.66GHz⁠⁠・24GBのメモリ・146GBのSAS HDDのRAIDと、高いパフォーマンスを実現できるスペックでまとめられています。特に注目すべきは、データベースサーバに超高速SSD⁠ioDrive⁠を搭載している点です。

700MB/秒を超える性能を持つストレージを搭載

ioDriveはFusion-ioが開発したフラッシュメモリ搭載ストレージであり、インターフェイスにPCI Expressを利用することなどで、700MB/秒を超えるシーケンシャルリード/ライトを実現しています。通常のSAS接続のHDDが50~60MB/秒程度であることを考えると、いかに高速かが分かるでしょう。160GBの容量を持つioDriveにより、データベースサーバにおいて圧倒的なパフォーマンスを実現していると前佛氏は語ります。

  • 「ソーシャルアプリではデータベースサーバのディスクI/Oがボトルネックとなることが多いのですが、高速なioDriveを搭載したデータベースサーバは、3台から10台分くらいのパフォーマンスを1台で実現しているところがポイントです。コストパフォーマンスの点でも、管理の手間を省ける点でも大きなアドバンテージになると考えています(前佛氏⁠⁠」

圧倒的なパフォーマンスを持つioDrive。その詳細については、本連載の第3回で詳しく解説する予定です。

Fusion-ioの「ioDrive」
Fusion-ioの「ioDrive」

このようにat+link アプリプラットフォームは、高性能なサーバを複数台提供することにより、ユーザ数の多いソーシャルアプリの運用にも十分対応できる性能を誇っていますが、これに加えてソーシャルアプリのプラットフォームとして利用することを念頭に置いたさまざまな特徴が付加されています。

at+link アプリプラットフォームのサービス概要
at+link アプリプラットフォームのサービス概要

コストを抑えてソーシャルアプリを提供可能

at+linkアプリプラットフォームは、専用サーバながら初期費用が無料であり、月間利用料は固定、データ転送量による従量課金がないことに加えて、さらに注目したいのが、運用スタート月は無償ということと、利用拘束期間が1ヵ月であるという点です。特に利用拘束期間がわずか1ヵ月というのは、大きな魅力でしょう。たとえば6ヵ月は最低利用しなければならないといった場合、月額必要×6ヵ月分のコストが確実に発生することになります。しかし利用拘束期間が1ヵ月であれば、何らかのトラブルが生じた、あるいはもっと規模の小さいサーバで十分だったと判断した場合、最小限のコストで切り換えられます。

ソーシャルアプリに特化した手厚いサポート

ソーシャルアプリ向けに細やかなサービスも用意されています。その中でも注目したいのは、ソーシャルアプリのサービス開始から5日間、契約している台数に加えて最大で5台のWebサーバが無償で提供されるというものです。つまり基本構成の場合であれば、通常の5台にさらに5台まで追加でき、最初の5日間は計10台で運用できることになります。

これについて文屋氏は「ソーシャルアプリはどれくらいアクセスがあるのかを予測するのが大変。at+link アプリプラットフォームであれば、アクセスが落ち着くまでの5日間で必要な台数を判断できるため、ユーザの方にとっては安心ではないでしょうか」と自信を見せます。また、リリース当日は通常のメールでの対応に加え、電話でのサポートも行うとのこと。この辺りの細やかな配慮も嬉しい部分でしょう。

サービス監視についても、ソーシャルアプリ向けの工夫が盛り込まれています。ソーシャルアプリが運営されているサーバへのリクエストに対して一定時間内にレスポンスがない場合、SNS提供事業者側によりアプリメニューの一覧から削除されてしまうと言われています。こうした機会損失をできるだけ防ぐために、監視対象となるURLをユーザが設定できるほか、同時セッション数や監視間隔も指定することが可能です。これによりレスポンスの低下を事前に察知することが可能になるというわけです。

ハードウェアトラブルなどが生じた場合にも、迅速に対応する体制が整えられています。

  • 「従来のサービスであれば、たとえば再起動が繰り返されるといったときにOSにログインして調査を行い、それで原因が掴めなければハードウェアを調べるといったことを行います。しかし、このサービスはソーシャルアプリ向けということで、特に迅速に対応することが重要だと考えています。そこでトラブルが発生した場合、原因を追及する前にまず予備機を使って復旧していただき、その後でじっくり原因を調べるといった形に変えています(前佛氏⁠⁠」

運用しているサーバの1台にトラブルが生じ、それによってパフォーマンスが低下、復旧に時間がかかったことでSNS提供事業者からペナルティを受けるというのは、ソーシャルアプリベンダにとってもっとも考えたくないシナリオでしょう。しかしat+link アプリプラットフォームであれば、迅速な復旧を実現することで影響を最小限に抑えられます。

キーバリューストア型のデータベースも提供予定

最後にサービス提供に向けての意気込みを伺いました。

  • 「at+linkの特徴はユーザとの距離が近いところです。今回サービス開始にあたって多くの方々の意見を参考にさせていただきました。今後はキーバリューストア型のデータベースの提供も計画しておりますが、同様に、ユーザの声を可能な限りサービスに反映していきたいと考えています(文屋氏⁠⁠」

  • 「一般的なサービスの場合、運用マニュアルに沿った対応しか行わないというケースが多いと思います。しかし、at+linkではマニュアルにないことでも『これが問題じゃないか』ということがあれば突っ込んで対応してきました。at+link アプリプラットフォームでも、箱だけを提供して終わりというのではなく、ユーザの成功を支援できるようなサポートを提供できればと考えています(前佛氏⁠⁠」

2人の話に共通して感じたのは、ユーザサイドに立ってサービスを提供するという強い思いです。単に高性能なサーバを利用できるというだけでなく、使い勝手を高める改善が行われたり、一歩進んだサポートが受けられたりするのは、at+linkのサービスを使う大きな魅力でしょう。

おすすめ記事

記事・ニュース一覧