BSD界隈四方山話

第63回FreeBSD 11.0-RELEASEに関する2016Q2報告

2016年第2四半期におけるFreeBSDステータスレポートが公開されました。今回は公開されたレポートの中から、とくにFreeBSD 11.0-RELEASEまたはこれ以降のリリースに関係する開発や機能などを取り上げて紹介します。

pkg(8)ベースシステムは11.1-RELEASEを目指す

FreeBSD 11.0-RELEASEでの導入を目指して、ベースシステムに対してもpkg(8)を適用する取り組みが進められてきました。FreeBSD 11.0-RELEASEのリリースエンジニアリングの開始が1ヵ月ほど遅れたのもこの開発の進捗を待っていたためですが、いろいろ取り組んだ結果、まだ解決すべき課題があるとして、11.0-RELEASEでの採用は見送られました。

現在のところpkg(8)ベースのベースシステムはFreeBSD 11.1-RELEASEでの導入が予定されています。このバージョン以降は、サードパーティ製のソフトウェアのみならず、ユーザランドに対してもpkg(8)でシステムアップデートの管理ができるようになる見とおしです。現在はベースシステムのアップデートにFreeBSD Updateを使っていますが、FreeBSD 11.1-RELEASEからはpkg(8)を使って似たような操作ができるようになる可能性があります。

Jailネットワーク仮想化VIMAGE

今からもう8年前にJailに追加されたネットワークの仮想化機能VIMAGEですが、長らくデフォルトの機能としては有効化されてきませんでした。しかし、VIMAGEはネットワークスタックを仮想化できるためネットワークアプライアンスやプロダクションユースで使われており、よりロバストでデフォルトで有効化できることが求められてきました。

今回、VIMAGEの実装を全体に渡って改良し、よりロバストで、さまざまな操作に対しメモリリークやパニックなどが発生しないようにクリーンナップが実施されました。さらに、pfやipfilterなどもVIMAGEに対応させるなど、デフォルトの機能として充分に利用できるところまで仕上がってきたようです。11.0-RELEASEからこうした新しい実装が利用できるようになるものとみられます。

ロバストMutexを実装したPOSIX互換のスレッドライブラリ

FreeBSDではPOSIXスレッドの実装としてlibthrを使っています。この実装はほとんどがPOSIX互換になっていますが、ロバストMutexの実装がPOSIXに準拠していませんでした。この機能はそれほど広く使われていませんでした。唯一有名どころではSambaがこの機能に依存していました。

今回、この部分が実装され、FreeBSD 11のスレッド実装は主要なところの機能はほとんどPOSIX互換になったとみられています。今後の開発としてはロックの構造を見直して削除にかかるオーバーベッドを軽減するとともに、パフォーマンスを向上させることが予定されています。

Intelネットワーキングツール

Intelイーサネットネットワーキングプロダクトに関する次のツールがPorts Collectionおよびパッケージとして追加されています。

  • sysutils/intel-nvmupdate XL710およびX710ベースのネットワークデバイスの不揮発性メモリのアップデートに利用するアプリケーション
  • sysutils/intel-qcu XL710ベースネットワークデバイスのQSFP+ポートを1x40Gbpsと4x10Gbpsモードのどちらにするか切り替えるために使われるアプリケーション
  • net/intel-ixl-kmod FreeBSD 10.x系でツールを利用できるようにするためのドライバ

これらアプリケーションはIntelの支援の元でFreeBSDへの移植が実施されており、FreeBSD 11サポートも進められています。11.0-RELEASEにもこれらツールが含まれるものと考えられます。

勉強会

第55回 8月24日(水)19:00~ ZFSアドバンス クォータ、リザーブ、圧縮、重複、スナップショット、クローンほか

今回のFreeBSD勉強会ではデータセットにおけるクォータやディスク容量の管理、リザーブや圧縮、重複排除、スナップショット、クローンなどの機能を解説します。ZFSの提供する機能は多岐に渡り、これまでのファイルシステムでは実現が難しかった機能が簡単なプロパティの設定などで実現することができます。こうした機能を知ることで、今よりももっとZFSを使いこなせるようになるはずです。

第53回目の勉強会ではZFSの基礎(データセット、プール)を、第54回目ではデータセットのプロパティの設定や、プールの追加、削除、リシルバリングなどについて解説しました。第55回目となる今回はZFSが提供している個々の機能に焦点をあて、使い方やその効果などを紹介します。

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第56回 9月27日(火)19:00~ ZFSとJailによるコンテナ技術活用、ユーザへのファイルシステム特権の委譲ほか

ZFSは管理者のやることを大きく変えました。多くの便利な機能は管理者にもう戻ることのできない利便性を与えてくれました。しかし、より突っ込んでチューニングを行ったり、さらに深い機能を使いこなそうとしたとき、ほとんどの管理者はZFSの深遠へ引きずり込まれ、果たしてやっている設定が適切なのは不適切なのかの判断も難しい状況に陥っているのではないでしょうか。

第56回目からは、ZFSの活用に焦点をあてながらZFSの使い方やチューニングの方法を紹介します。今回は特にJailにおけるコンテナ技術のひとつとしてZFSを活用する方法や、ユーザにファイルシステム特権を委譲する方法などを採り上げます。余裕があればマシン間における効率的なレプリケーションの方法なども紹介します。

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