徹底取材!注目企業たちのクラウドコンピューティングへの取り組み

IIJ編

インタビュイー

小川晋平氏

株式会社インターネットイニシアティブ マーケティング本部 GIOマーケティング部副部長

2009年12月、IIJは新たなクラウドサービス「IIJ GIO(ジオ⁠⁠」を開始しました。IIJ GIOは日本国内に数千台規模のサーバを展開する本格的なクラウドサービスとして注目を集めています。このIIJ GIOの誕生、そしてこれからの戦略についてお話を伺いました。

Q:IIJ GIOを中心としたクラウドに向けた取り組みについて教えてください。

A:IIJ GIOはIaaS、PaaSといったインフラ周りを中心に、柔軟性に富むラインナップで幅広いユーザに対応するサービスを展開していますが、そのクラウド基盤は2009年に一気に構築されたわけではありません。そこにはIIJの沿革から始まった大きな流れがあります。

IIJは約20年前に商用インターネットサービスプロバイダの草分けとして誕生しました。当社のサービスは品質第一、⁠絶対に止まらない」という目標のもと、当時としては太すぎるほどのバックボーンと十分過ぎる冗長性を備えたネットワーク設備を揃えました。それだけの設備を持つと、今度は使ってもらわなければもったいない。そこで、インターネットの使い方の提案として、IIJのNOCを拡張してホスティングやデータセンターの事業を立ち上げました。これがIIJテクノロジーという会社です。

2000年ごろから、ちょうどサーバサイドでJavaやASP.NETなどを使ったECサイトが増え始めたところだったのですが、このセッティングが同じような作業の繰り返しなんです。そこで、作業の効率化を目的に、大きな設備から必要なだけコンピュータリソースを切り出して貸し出すことを始めました。ハードウェアは統一されていて、ドライバや監視項目も同じで、お客様ごとに違うのは独自のアプリケーション部分だけです。

このやり方で、これまでより短納期で、トラフィックに応じて柔軟に対応できるようなインフラサービスを作りました。IBPS(Integration & Business Platform Service)と名付けたサービスですが、おわかりの通り今で言うIaaSそのものです。最初は設定シートを見てIIJのエンジニアが設定していたものもどんどん自動化していき、同時に運用や監視ツールの内製化も進めました。

2006年ごろクラウドという言葉が流行りだしたのですが、当社は「クラウド」という言葉を使うことに抵抗がありました。われわれが先にやっていたことにあとからついたような言葉ですから。しかし、その後のクラウドという言葉の広がりを見て折れました(笑⁠⁠。2009年に今まで行っていたサービスをIIJ GIOにブランド変更し、クラウドサービスとして売り出したのです。2010年にIIJテクノロジーがIIJと合併し、新生IIJとしてスタートすることもにらんでのブランド化でした。実際クラウドという言葉を前面に出したとたん、引き合いが10倍になりました。

Q:想定するターゲットと利用シーンについて教えてください。

A:先の話の続きですが、ITバブルがはじけた後、ECサイトの需要が一息つき、次の大きなターゲットとして企業システムを意識するようになりました。インターネットゲートウェイ、メール、Proxy、ファイルサーバ、ASPなどですね。また、コーポレートサイトなどでキャンペーンなどを行う場合、急激なアクセス増によりシステム負荷が急増する場合があります。これに対応できるのがクラウド全般の強みですが、ある程度予測できる負荷のバーストだけでなく、突然の負荷増にも簡単、迅速にコンピュータリソースの配分ができるのもIIJ GIOの特徴です。これによって顧客企業からもネットへの投資の意志決定が迅速にできるようになったとの評価をいただいています。

さらに、当社はインターネットインフラを持っていますから、これを活用して柔軟なネットワークを組むことも可能です。たとえば、クラウド内にVPNを組んで企業内のプライベートアドレスを割り当て、あたかも企業内システムのように利用できます。文字どおりの「プライベートクラウド」というわけです。こうした利用も最近は増えています。

Q:IIJ GIOのメリットと特徴について教えてください。

A:IIJ GIOでは、クラウドインフラに集約されたITリソースをそのまま貸し出す「IIJ GIOコンポーネントサービス⁠⁠、クラウドインフラをある程度決められた組み合わせでインスタントに利用開始できる「IIJ GIOプラットフォームサービス」⁠IIJ GIOアプリケーションサービス」の3つの大きなカテゴリでサービスを展開しています。

「IIJ GIOコンポーネントサービス」では、利用するITリソースを非常に細かく指定することができ、お望みのハードウェアを丸ごと専有するような使い方もできます。急いでサービスを立ち上げたい場合は、⁠IIJ GIOプラットフォームサービス」⁠IIJ GIOアプリケーションサービス」のようなパッケージを利用して、インフラ構築にかかる手間を削減することが可能です。

また、価格競争力においてもGoogleやAmazonなどに負けてはいません。これから業界は値下げ合戦に突入する気配もありますが、当社も独自にコンテナ型のデータセンターの開発などを行い、低コスト化をより進めています。これには10年かけて蓄積した運用管理や原価償却のノウハウも非常に役立っており、昨日今日参入したようなベンダでは絶対に真似のできないところだと思います。

IIJ GIO
URL:http://www.iij.ad.jp/GIO/

Q:最後に、日本のクラウドシーンに向けて一言お願いいたします。

A:「クラウドは儲かりません」と言いたいですね(笑⁠⁠。当社も2000年から投資を始め、数年かかってやっと黒字化しました。先にも言いましたがその過程で築いた管理ノウハウが、いまのコストダウンに大きく役立っています。また、当社のデータセンターは日本国内にありますから、日本でサービスを行う場合、同じ価格でもGoogleやAmazonよりレスポンスの良いシステムを構築することが可能です。

逆に海外では、その場所に近いデータセンターを使った方が有利ですが、これについても新たな投資や海外ベンダとの協調などを進めており、今後はただ競合するだけではなく、ユーザの利便性を見込んで協力し合うことが必要になってくると思います。これは国内においても同様で、インフラの一番下の部分は当社で提供しますので、それを使った新たなクラウドサービスを一緒に展開してくれるパートナーを捜しています。⁠これからクラウドを一から作っても儲かりません。だから一緒にやりましょう」と呼びかけたいです。

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