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第8回 世界のWebトラフィック3割を配信するAkamaiの創設者Tom Leighton博士インタビュー

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2月17日に赤坂で,Akamai Technologies社の創設者でありMIT教授でもあるTom Leighton博士によるプレス発表会が開催されました。そこで発表された内容のうち,個人的に興味を持ったのは以下の項目です。

  • IPv6サービスに関して
  • Ericsson 社との提携によるモバイル網への進出について
  • DDoS 等による攻撃トラフィックに対処するためのコンサルティングと,それらの不正トラフィックによって発生したトラフィックに対して課金を行わない保険サービスの紹介

17日のプレス発表資料より

17日のプレス発表資料より

Leighton博士へのインタビュー

さらに翌18日,Leighton博士への単独インタビューに伺いました。主に前日の発表内容に関連した質問を行いましたが,それ以外にもいくつか興味があったことを聞いてみました。

以下,インタビューの内容です。基本的にテープ起こしに近い状態ですが,Tom Leighton教授が英語で話しているのを私が日本語訳して以下の文章としているため,一部は実際の発言を意訳している部分もあります。また,翻訳を行うために主語を明確にしている部分もあるのでご注意ください。

Tom Leighton博士

Tom Leighton博士

Q: Akamai社とEricsson社の提携の話がありました。携帯電話の環境では,ローミングなどの仕組みによって,IPアドレスがネットワーク的な位置を示しているとは限らず,DNSへのQueryを送信しているユーザーのIPアドレスから,最寄りのAkamaiサーバの位置を推測するという,これまでのAkamaiの手法が使いにくいと思いますが,どのような仕組みで携帯電話網へのサービスが提供されますか?

A: Ericsson社との提携では,初期段階では携帯電話網までの入り口までをAkamaiが担当し,モバイル網に入ってからの部分はEricsson社が担当します。具体的には,GGSNから Cell TowerまでをEricsson社が担当します。Akamaiソフトウェアは,初期段階ではそこには入りません。

現時点では,Akamaiソフトウェアはインターネットに設置してあり,GGSNでEricsson社のテクノロジーと相互接続しています。Ericsson社の技術は,適切に帯域を割り当て,携帯電話網での最適化を行います。Akamaiが携帯網にも対応したサービスの販売窓口になりますが,携帯電話網内での実際の技術を提供するのはEricsson社になります。

17日のプレス発表資料より

17日のプレス発表資料より

そもそも,その中はIPベースですらない可能性がある訳ですが,Akamaiが行っている全てのサービスはIPベースです。長期的な視点で見た時,今後,IPが携帯電話網の中で本格的に使われる可能性もあります。すでにそういった設計が行われているものもあります。

そうなった時には,Akamaiサーバが携帯電話網の奥深くに設置されることで,通信の最適化が実現されるようになります。これは,Akamaiサーバを置くことで,輻輳が発生しているリンク上を流れるコンテンツをオフロードすることができるようになるためです。しかし,それは第二フェーズで予定されていることであり,初期段階での実行とはならないでしょう。

Q: 第一フェーズはいつ頃開始されるのでしょうか?

A: 恐らく,今年後半にトライアルで幾つかのお客様に試していただける状況が作れると思います。すでに幾つかの組織にトライアルに関してご相談をさせて頂いています。さらに,Ericsson社の手助けを得ながら,どのワイヤレス事業者が興味を示して頂けるかを探っている状態です。

Q: では,どの国から開始されるということも決まっていないということですか?

A: まだ確定はしていません。Ericsson社はその辺りに関して,すでに何らかの案があるのかも知れません。ワイヤレス業界に関してはEricsson社の土俵で,コンテンツ側がAkamaiの土俵です。今回の戦略的な提携は,その二つが融合するという意味を持っています。

Q: 提携相手が明確に決まるまでは,これによってAkamaiサーバがどれだけ増えるかはわからないということですか?

A: Akamaiサーバはすでに設置してあります。もちろん,もしかしたら,新たにGGSNへサーバを新規に設置する必要が発生する可能性もあります。

しかし,すでに多くのGGSNにAkamaiサーバは設置済みです。そのため,この提携によって,劇的にAkamaiサーバ数が変化するとは思いませんし,例え1,000台増えたとしても,全体から見れば大きな変化とは言えません。Ericsson社には,ワイヤレス網内で効率的に通信を行う技術がすでにあります。加えて,ワイヤレス網の運用経験も豊富です。今後数ヵ月を使って,どのワイヤレス網が参加していただけるかを探っていくものと思われます

Q: ということは,今回の Ericsson社との提携で,Akamai社が行うことの大きな部分は,⁠コンテンツを配信することを許可する」ということになりますか?

A: このパートナーシップで行うことですが,Akamaiはコンテンツを持つお客様に対して,既存サービスラインナップの付加的メニューもしくは新しいメニューを追加します。技術的には,AkamaiとEricsson社の間のインターフェースであり,お客様からのコンテンツがインターネットを通じて配信される部分をAkamaiが効率化し,GGSNでEricsson社に渡すことによって,ワイヤレス網においてもそのコンテンツが高いレベルの配信が行えることを保証するものです。

これによる収益は,Akamaiのエコシステムを通じて配分されます。

Q: ここ1~2年,Akamaiサーバの数が急激に増えていますが,今後も同様に急激に増えるのでしょうか?

A: 今後どれぐらい増えるかに関して,実際の数はわかりません。しかし,いくつか要素はあります。

まず,サーバの数は,存在感を示したい場所の数に依存します。私たちはいつでもエンドユーザに近いところにいたいと考えています。さらに,私たちがサポートしたいと思うコンテンツへのトラフィックレベルも大きな要素です。そして,CPUに負荷がかかるなど,トラフィックレベルは配信しているメディアの種類にも依存しています。

一方,サーバは,時間の経過と共に古くなってしまい,置き換えなければなりません。一般的には,5年が経過すると置き換えています。これは,古くなってしまったサーバが提供できる能力が,運用コストに見合わなくなるためです。新しいサーバは高性能なので,サーバラック全体を数台のサーバで置き換えられるような場合もあります。そういった各種要素が絡み合い,いつどのようにサーバを設置するかが決まります。

Q: 最近,P2Pに対する取り組みを強化されていますが,その取り組みがサーバ数の増減に与える影響を教えてください。P2Pの割合を増やしてもサーバは増え続けそうですか?

A: まだはっきりとはわかりません。サーバの数が増え続けているように見えるのは,P2Pクライアントが大量に存在していたとしても,それらを管理するサーバが必要です。

P2Pは,インターネットビデオが急激に増える時に特に有用です。たとえば,非常に短い期間に10倍,20倍などになったような場合です。一方,サーバをP2Pと同様に短期間で10倍,20倍に増やすのは困難です。技術的に無理ではありませんが,非常に高いコストが発生してしまいます。そのため,急激なトラフィックに対する需要の爆発が発生した時に,P2Pクライアントが必要になると思っています。

今のところ見えているAkamaiサーバの増加も,インターネットビデオ市場が本格的に立ち上がれば,さらに急激に伸びるだろうと予想されます。

Q: 昨年Apple社が開始したビデオ配信サービスの影響で,当時ビデオトラフィックが急激に増えたと思うのですが,何か影響はありましたか?

A: はい。ビデオトラフィックそのものが,引き続き急激に拡大しています。恐らく3倍以下,2~3倍程度であると思うのですが,潜在的にはもっと急激に成長する余地があります(取材者注:Leighton博士が「2~3倍」と発言しているのは,Akamaiが扱うビデオトラフィックの話であって,インターネット全体のビデオトラフィックの話ではないと思われます。インターネット全体のビデオトラフィック増加も急激に増加していますが,さまざまな予測では3倍とまではいかない数値が提示されています)⁠

P2Pの背景にあるアイディアは,莫大なコストを負担せずにそれを問題なく実現することにあります。

著者プロフィール

あきみち

「Geekなぺーじ」を運営するブロガー。

慶應義塾大学SFC研究所上席所員。全日本剣道連盟 情報小委員会委員。通信技術,プログラミング,ネットコミュニティ,熱帯魚などに興味を持っている。

近著「インターネットのカタチ - もろさが織り成す粘り強い世界」

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