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第8回 世界のWebトラフィック3割を配信するAkamaiの創設者Tom Leighton博士インタビュー

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Q: プライベート(Private)CDNに関してですが,プライベートCDNは,どれぐらい稼働しているのでしょうか?

A: プライベートCDNには複数の意味があり,勘違いされているのは我々のせいであるとも思うのですが,我々には,マネージド(Managed)CDNとプライベートCDN,そしてライセンスド(Licensed)CDNがあります。

これは,誰が使っていて,何のために使っていて,誰が所有しているかによって異なります。今日,幾つかの事例がありますが,普通は特定のお客様専用の環境になります。特定の顧客専用にインターネット上に設置しているCDNが,プライベートCDNです。たとえば政府内ネットワークなど,特定の場所に設置されて運用されるCDNが,マネージドCDNです。国際的なキャリア内に設置するために,我々が作った上で設置を行い,その運用をキャリアに任せるという,ライセンスドCDNも現在考えています。ただし,これはまだ開始されていません。

Q: 84,000台のAkamaiサーバという数値には,プライベート,マネージド,ライセンスドの各CDN は含まれていますか?

A: プライベートは含まれていますが,マネージドは含まれていません。ライセンスドはまだ開始されていません。恐らくマネージドCDNは,インターネットではない別ネットワーク上で運用されているので,含まれていないはずです。

Q: それらのサーバはどれぐらいの数があるのでしょうか?

A: さほど多くないと思います。プライベートやマネージドCDNは,その原理上,特定のお客様のコンテンツだけを配信するので,数が必要ないからです。実際の数は知りませんが,あったとしても数千程度でしょう。

Q: では,これらのCDNサーバが現時点では全体の中で占める割合は,低いということですね

A: そうです。しかし,長期的な視点で見た時,ライセンスドCDNは,大きな割合を占める可能性はあります。国際的なキャリアがライセンスドCDNを世界的に使えば,その数は膨大になります。その機材が彼らの機材になれば,必要に応じてもっとネットワークの奥深くに設置できるようになります。

Q: 関連してですが,Google Global Cacheというのが世界的に行われていますが,同様な方式で世界中にサーバを設置し,今のAkamaiと競合するような事業者が登場すると思いますか?

A: Google社は,自前のプライベートなCDNを構築しています。基本的にYouTube用ではありますが,Akamai程のスケールは現時点ではありません。しかし,トラフィックは非常に大きいです。Akamaiに続いて世界第二位のトラフィックを生成していると,ネットワーク パートナーからは知らされています。

今の所は,Google社が他社のコンテンツを配信するという動きはありません。もちろん,多くのコンテンツを自分達のプラットフォームで配信できるようにして広告をつけられるようにしたいと努力はしていますが,大手メディアは,Google社を非常に警戒しています。大手メディアは広告から収益を得ている訳ですが,Google社は広告をコントロールしようとしているからです。それは大手メディアにとっては,脅威を感じることでしょう。

そのような背景もあり,大手メディアが全てのコンテンツを YouTube に掲載したいかどうかはよくわかりません。大手メディアはスケールしつつ,自分たちのブランドで配信出来る方法を模索していますが,そのような相談を受けます。

そして,我々は,協力しつつ配信が行えるプラットフォーム構築のお手伝いをしています。そのため,私たちは,Google社を競合相手とは見ていません。

Google社が私たちの顧客であることもあります。もちろん,それがもっと多く発生することは歓迎しています。しかし,Google社は自分たちでYouTubeを配信する能力を備えており,それが今後も洗練されていくものと思われます。

Q: Akamai社が大手メディアから嫌われないのは広告を主な収益としていないからですか?

A: はい。私たちは大手メディアと競合しません。ユーザブランドという意味でも,私たちは裏方です。一般ユーザは私たちのことは知りません。そのため,私たちは大手メディアにとっては脅威ではなく友人(Friend)です。

Q:Akamai社を脅威と見るような企業はどのような企業なのでしょうか?

A: ⁠笑⁠⁠。わかりません。Akamai に対して脅威を感じている会社があるかどうかはわかりません。メディアは私たちを利用しますし,コンテンツ事業者はお客様です。そして,ネットワークは,パートナーです。

私たちは,ネットワーク事業者のコストを抑えることを行い,エンドユーザーのパフォーマンスを向上させます。私たちのエコシステムで,大きなプレイヤーはその二者ですが,どちらに対しても脅威を感じさせていないと思われます。

そのため,私たちを脅威と感じる組織があるとは思えません。

Q: では,誰が怖いですか?

A: 自分たちです。次のステージに自分たちの会社を育てられるかというのが大きな課題です。この10年で50億ドル企業へと成長することを目標として掲げています。

それは会社が成長しなくてはならないということですし,企業組織も変化しなければならないでしょう。イノベーションを起こせる体制を保ちながら,それができるようにする必要があります。そのため,マーケットに対応して機敏に行動を続けられるようにしなければなりません。そして,非常に高いレベルの従業員を保つことも重要です。

今,正に私たちは中間にいます。起業している会社を見て,⁠動きが凄く早い!」と思いながら,大きな会社を見て「動きが凄く遅い!」と思います。その両方の世界から,良い部分だけを残そうと日々もがいています。

非常に大きなパートナーとの協業も開始し,成功も収めて収めています。たとえば,Apple社とは非常に良い関係を保てています。IBM社は私たちにとって最大のリセラーです。

いろいろなことが徐々に良くなっていますが,これらは私たちの成長には非常に大事です。このように,誰かが私たちの事業を潰しに来るというよりは,自分達が正しいことを続けられるかどうかという視点が強くあります。

最後に(取材者から)

今回,Akamai Technologies社の創設者の一人であるTom Leighton教授の来日に合わせて,単独でインタビューの時間をいただくことができ,これまでいろいろと疑問に思っていたことを含めて,お話を伺うことができました。貴重なお時間を頂きありがとうございました。この場を借りて,お礼を申し上げたいと思います。

p.s. 英語を中心とした取材が初めての経験だったことなどから,結構緊張しました。こういうのも場数とか経験なんでしょうね…。

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著者プロフィール

あきみち

「Geekなぺーじ」を運営するブロガー。

慶應義塾大学SFC研究所上席所員。全日本剣道連盟 情報小委員会委員。通信技術,プログラミング,ネットコミュニティ,熱帯魚などに興味を持っている。

近著「インターネットのカタチ - もろさが織り成す粘り強い世界」

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