そろそろLDAPにしてみないか?
第4回 UNIXアカウント以外でLDAP
FTPアカウントにLDAP
LDAPに対応しているアプリケーションは数多く存在するため,何から紹介すればよいのか迷ってしまうのですが,わかりやすさ,容易に構築できるという点で今回はFTPサーバ+LDAPサーバの組み合わせを紹介してみたいと思います。「えー? 今さらFTPサーバ?」なんて言わないで最後まで読んでみてください(笑)
通常であれば,あるユーザがFTPサービスを利用する場合,そのアカウント情報は/etc/passwdや/etc/shadowに登録されている必要があります。
しかし,ユーザにFTPのみを使用させたい場合,/etc/passwdなどにアカウントが存在してしまうと都合が悪いことがあります。なぜなら/etc/passwdに登録されているユーザ情報はgetpwent(3)などにより,さまざまなアプリケーションから参照されるためです。ldapuserというユーザにはFTPサービスのみ提供したいのに,ldapuser@example.comというメールアドレス宛にメールを送ると/var/mail/ldapuserというメールボックスが作成されては,都合が悪い・・・ですよね。
さて,LDAPサーバ内にFTPアカウントを作成するためには,いくつかの方法が考えられます。1つめの方法はPAMを利用することです。多くの一般的なFTPサーバ,たとえばvsftpdはPAMによる認証に対応しているため,この方法を用いると,特別な設定をすることなくFTPアカウントを使用することができます。
開発者にとってのメリットとしては,ソフトウェアをPAMにさえ対応させれば自動的にLDAP認証(pam_ldap)にも対応できることが挙げられます。一方,認証関連の設定は/etc/ldap.confを用いて行うことになるため,設定の影響範囲が大きいことがデメリットとも言えるでしょう。例えばvsftpdの設定を変更するつもりで/etc/ldap.confを編集しても,その設定がpam_ldapを使用するすべてのソフトウェアに反映されてしまいます。
もう1つの方法は,PAMとは独立してLDAP内にFTP専用のアカウントを作成することです。このようなアカウントを作成しておけば,仮にFTP専用ユーザのユーザ名とパスワードが漏洩してしまっても,その被害の影響範囲はFTPサービスのみに限定されます。アカウント情報を勝手に使われてしまっても用途はFTPに限定されているため,その情報を元にSSHログインできるわけではありません。もちろん開発者は各種LDAP関数を活用してソフトウェアを構成しておく必要があります。Proftpdはこの方式に対応していますが,先ほど例として挙げたvsftpdには,残念ながらこの実装が含まれていません。
それではFTP専用アカウント,ということを前提として,FTP認証用の属性などを設計してみましょう。最低限の情報としては表1のようなものになると思います。
表1 必要な属性
| 必要な項目 | 必要な理由 | 例 |
|---|---|---|
| ユーザ | 認証に使用するため | ftpuser |
| パスワード | 認証に使用するため | ftppass |
| ホームディレクトリ | ログイン時のホームディレクトリ | /home/ftproot/ftpuser |
| UID番号 | ファイル作成時などに使用される | 10000 |
| GID番号 | ファイル作成時などに使用される | 10000 |
| グループ名(必要に応じて) | ls-laなどでGID番号だけでなくグループ名が表示されるように | sales |
標準スキーマで用意されている属性を使えば,ftpuserのエントリはリスト1のようになるはずです。
リスト1 LDIFで表現
# FTPグループ
dn: cn=sales,ou=FTPGroup,dc=example,dc=com
cn: sales
gidNumber: 10000
# FTPユーザ
dn: uid=ftpuser, ou=ftpuser, dc=example, dc=com
uid: ftpuser
userPassword: ftppass
homeDirectory: /home/ftproot/ftpuser
uidNumber: 10000
gidNumber: 10000
とりあえずは必要な属性のみを列挙してみましたが,すでに皆さんご存じのように,ある属性を使用するにはそれが属するobjectClassを定義する必要があります。上記のFTPグループではcnとgidNumber属性を使用しています。ということで,gidNumberというキーワードを/etc/openldap/schema以下からgrepしてみれば,目的のobjectClassがわかります。
gidNumberが含まれるobjectClassは次のように定義されています。
objectclass ( 1.3.6.1.1.1.2.2 NAME 'posixGroup' SUP top STRUCTURAL
DESC 'Abstraction of a group of accounts'
MUST ( cn $ gidNumber )
MAY ( userPassword $ memberUid $ description ) )
ということで,cnとgidNumberが含まれている今回のエントリにobjectClass: posixGroupを追加しておくだけで良さそうです。グループではなくユーザ部分はどうなるでしょうか? 今度はuidNumberをキーワードにschemaディレクトリを検索してみます。次のようなエントリが見つかりました。
objectclass ( 1.3.6.1.1.1.2.0 NAME 'posixAccount' SUP top AUXILIARY
DESC 'Abstraction of an account with POSIX attributes'
MUST ( cn $ uid $ uidNumber $ gidNumber $ homeDirectory )
MAY ( userPassword $ loginShell $ gecos $ description ) )
このposixAccountというobjectClassを使用するためには,先ほど列挙した内容以外にuid属性が必要となります(uid属性がMUSTと定義されているため)。さらに,このobjectClassはtopから派生し,補助オブジェクト(AUXILIARY)であることもわかります。補助オブジェクトとなっているobjectClassは単体で宣言することができません。補助オブジェクトはSTRUCTURALであるaccountなどのobjectClassと一緒に使用する必要があります。


