使える!サーバ運用の実践テクニック

第22回 “金融系”インフラエンジニアという業種[その2]

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話は少しさかのぼりますが,筆者は社会に出て20年近くが経ちます。

社会人になったころは「バブル期」といわれ,経済が右肩上がりに成長していた時代です。今では信じられないかもしれませんが,就職活動で企業へ訪問すれば,交通費,食事代,場合によってはその会社の定める出張費まで出ることがあり,アルバイトをすることに疑問さえ感じる時代でした。そんな中,筆者はある金融系の企業に入社し,その後システム部門へ転属,それから何度となく転職を重ねておりますが,基本IT関連のキャリアを歩んでいます。

最初に転職を決意したときはすでに就職氷河期でした。転職活動はそれなり大変でしたが,仕事をする上でどうしても「規模」「責任感」が両立するシステムに携わりたいと思っていました。当時はネットを使って情報収集というには早すぎる時代であり,なかなか多くの業種を見ることはできなかったのですが,結局のところ金融関連のIT部門に就職いたしました。当時は転職のエージェント等も一般化していなかった時代ですので,自分が好きな企業に片っ端から飛び込んでいろいろなお話を聞いて,志望企業をしぼることができたのは良かったのではないかと思います(もちろんたくさんのお断りもいただきました)⁠

まず,金融系でも(信託,企業向け含む)銀行系か,生損保系かという業種選択から入りました。転職をする際,何となく募集要項から待遇が良い方を…と考えがちですが,当時の筆者はシステムがどのように使われているのか非常に興味があり,たとえば,リアルな店舗とATM等の数は銀行系の方が莫大ですが,商品(流動性預金など)は生損保の方が複雑な気がしました。

また,実際のデータに関して,銀行系は口座番号,取引金額等数値が主ですが,生損保の場合は,氏名や住所等漢字データも多く,また,実際の証券発行もありますし,その証券に印字するデータは,日本で使われる文字(場合によっては2バイト以上)は全てサポートされていなければならないというストイックさに惚れ込み,実際,生保系企業にお世話になりました。

※:これは,あくまでも筆者の転職活動で感じたことですので,実際にはどの業種も甲乙つけることのできないと思います。

金融系システムの規模とは?

今でこそサーバの台数やトラフィック,ユーザ数等で規模を表す傾向もありますが,当時,このような業界でも,口座(契約数)⁠取扱高,場合によっては支店数等でインフラの規模を表していたかもしれません。この辺りは今も昔もといったところではありますが,筆者が感じる一番の違いは,金融等,経済,ライフラインに近い業種の大規模システムというのは,行政からの指導,ガイドラインの遵守等が求められたりします。⁠FISC準拠」のための案件等も多くありました。

また,最近ではソーシャル,ゲーム業界等でも「DR(ディザスタリカバリ)⁠などという言葉を聞きますが,実際には言葉にきちんとした定義があったり(その定義が実際の災害対策に有効かどうかは別議論ですが)そもそもプライマリセンタが自社所有センタでない時点で成り立たないという意見もありました。

数歩先を行っていたホストコンピュータ

さて,そのような中,おそらく今でも現役で稼働しているホストコンピュータですが,IA(PC)サーバの方が安いし速いのではないか? というお話も聞きます。でも本当にそうなのでしょうか?

このような書き方をすると異論があるかも知れませんが,実際,筆者がホストコンピュータに触れて感動をおぼえたシステムが今では当たり前だったり,実現にはもう少し時間がかかったりしそうというものがあります。そういった意味で,研究,発展のための先攻投資というわけではありませんが,ホストコンピュータの技術的な点についてあげてみたいと思います。

当たり前になったRAID技術

ディスク装置はHDD(ハードディスク)と言う方が一般的でしょうか? ホストコンピュータの世界ではDASD(ダスド:Direct Access Storage Deviceというほうが一般的でしょうか? 筆者はその辺りに壁を作ることはせず,まぁ,どちらもデータを格納するハードウェアという認識です。ホストコンピュータの技術とは異なりますが,筆者が大規模金融システムのインフラエンジニアであっても,DASDが故障した際,自分達で保守パーツから交換……,なんてことはできず,あくまでも故障内容を精査して,メーカCEへ連絡するのが主業務でした。ただし,ボリューム名を聞いて,その用途から適切な判断をする必要もあります。

たとえば深夜バッチ中,DASDの故障でオペレータから緊急コールがかかってきます。そのボリュームがRAID対応でなければ,そのボリュームと,場合によっては「裏」のボリュームが被害に遭うので,対象バッチは全て停止,オンラインに影響があればアプリケーション部門担当とメーカCEへの連絡をお願いし,空いているボリュームを割り当て,バックアップ(テープなど)からリストアするJOBを起動,リストア後,停止したJOBまでのデータ(差分)を埋めるべく臨時で手動バッチを形成し,データを再作成し,通常バッチをリランする必要があります。

逆にRAIDの場合は,メーカCEへの連絡のみで,ご存知の通り,リビルドが構成されれば再び冗長構成が取れます。RAID技術ができたことだけでも大変便利になったと思っていましたが,それが今ではPC等でも気軽に利用することができるようになり,本当に良い世の中になったと思います。

当たり前になった仮想化技術

同時期にIAサーバがあったかどうか,それで同様の技術があったかどうかはわからないのですが,筆者がIBMのホストコンピュータで技術者として感動した技術の一つがPR/SM(Processor Resource/System Manager)の技術でした。PR/SMで分割した区画をLPERなどと呼びます。実際,作業のひとつとしてホストコンピュータの管理マシンで,OS/2上で稼働するHMCからターゲットのホストコンピュータにアクセスし,その中のCPUやメモリの割合をGUIで操作したときの感動を今でも覚えています。

とりあえず新システム用にOS,ミドルウェアの定義をするために作る,現状システムにPTFを当てるテストを行うために,区画を作成し,ターゲットシステムと同様の構成を作成し,テストするなどといったことが気軽にできるようになりました(とはいってもテスト関連の場合はリソースが非常に小さく,5mipsとかOS起動すら非常に苦しい中でやりくりしていた思い出があります)⁠

そのような技術は他にもあったかも知れませんが,時を経て今では,IAサーバ等でも気軽にでき,クラウド等と行った言葉へつながっていっているのではないでしょうか?

著者プロフィール

高岡将(たかおかすすむ)

大手金融,独立系SIerにて気がつけば計18年以上のキャリアを重ねる。バランス感覚に長け,インフラ/アプリ,プレイヤ/マネージャなど関係なくこなし,「いそうだけどいないタイプ」と評価される。

仕事以外では,自転車,ジョギング,サックス等を趣味にし,密かに「エンジニアと健康」についてダイエット成功論の連載を企む。

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