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第277回 Debian 7.0「Wheezy」の紹介

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multiarchの利用

Squeezeでは64ビット(amd64/ia64)環境で32ビットアプリケーションを利用するためにia32-libsパッケージのランタイムライブラリを利用していました。Wheezyでは,このパッケージは移行用のダミーパッケージとなり,同機能はmultiarchで提供されることになりました。ここではamd64環境でのia32-libsのインストールを例にmultiarchの利用方法を解説します。

amd64環境でそのままia32-libsパッケージをインストールすると次のようなエラーとなります。

$ sudo apt-get install ia32-libs
パッケージリストを読み込んでいます... 完了
依存関係ツリーを作成しています
状態情報を読み取っています... 完了
インストールすることができないパッケージがありました。おそらく、あり得
ない状況を要求したか、(不安定版ディストリビューションを使用しているの
であれば) 必要なパッケージがまだ作成されていなかったり Incoming から移
動されていないことが考えられます。
以下の情報がこの問題を解決するために役立つかもしれません:

以下のパッケージには満たせない依存関係があります:
 ia32-libs : 依存: ia32-libs-i386 しかし、インストールすることができません
E: 問題を解決することができません。壊れた変更禁止パッケージがあります。

ia32-libsが依存しているia32-libs-i386パッケージはi386アーキテクチャ向けにしか提供されていないため,amd64環境ではインストールできません。そこでmultiarchの機能を使いアーキテクチャにi386を追加して,ia32-libsをインストールします。

# i386 アーキテクチャを追加
$ sudo dpkg --add-architecture i386

# 忘れずにインデックスを更新
$ sudo apt-get update

# ia32-libs をインストール
$ sudo apt-get install ia32-libs
パッケージリストを読み込んでいます... 完了
依存関係ツリーを作成しています
状態情報を読み取っています... 完了
以下の特別パッケージがインストールされます:
  esound-common freeglut3:i386 gcc-4.7-base:i386 ia32-libs-i386:i386
  lesstif2:i386 libacl1:i386 libaio1:i386 libasound2:i386 libasyncns0:i386
  [...]

アーキテクチャを指定してパッケージをインストールするには,パッケージ名の後に「:<アーキテクチャ名>」を追加します。削除する場合も同様の形式でアーキテクチャ名を指定します。

$ sudo apt-get install libc6:i386

追加したアーキテクチャの確認と削除はdpkgコマンドからできます。

$ dpkg --print-foreign-architectures
i386
$ sudo dpkg --remove-architecture i386

利用しているミラーサイトが対象のアーキテクチャをミラーしていない場合,アーキテクチャを追加した後のインデックス更新に失敗します。その場合は次のように/etc/apt/sources.listを編集して対象のアーキテクチャのパッケージだけミラー元など他のサイトから取得するようにします。

# amd64 アーキテクチャは JP のミラーから取得し,i386 と armhf のアーキテクチャは本家から取得
deb [arch=amd64] http://ftp.jp.debian.org/debian/ wheezy main contrib non-free
deb [arch=i386,armhf] http://ftp.debian.org/debian/ wheezy main contrib non-free

ドキュメントの入手

Debianを使う助けとなる情報がDebian Documentation Projectによってドキュメント化されています。

Wheezyで変更された情報はリリースノートにまとめられています。とくに「第5章 wheezyで知っておくべき問題点」は現時点で把握されている問題点がまとめられており,一読の価値があります。

インストール手順はインストールガイドにまとめられています。インストール時に,ワイヤレスのネットワークインターフェースカードなど,ファームウェアが必要となるデバイスを使う場合は「6.4. 見つからないファームウェアの読み込み」が参考になります。

インストールした後,パッケージの管理やシステムチューニングなどDebianのチュートリアルがDebianリファレンスにまとめられています。システム管理の多くの局面を扱っているドキュメントですので都度読み返すと大いに役立ちます。Debianリファレンスはパッケージが用意されておりインストールすれば手元でも読めます。

$ sudo apt-get install debian-reference

図4 アクセサリメニューに追加されたDebianリファレンス

図4 アクセサリメニューに追加されたDebianリファレンス

他のまとまったドキュメントとしては,日本語ではないのですが,the Debian Administrator's Handbookがあります。これは2人のDebian開発者によって書かれたSqueezeを対象としたDebian管理者向けの本です。Wheezyからはパッケージに収録されています。

$ sudo apt-get install debian-handbook

パッケージは容量の都合でHTML版しか用意されていませんが,ソースをダウンロードしてビルドをすればEPUB版とPDF版を作成できます。

# apt-get source するために dpkg-dev をインストール
$ sudo apt-get install dpkg-dev
$ apt-get source debian-handbook

# ビルドに必要なパッケージをインストール
$ sudo apt-get build-dep debian-handbook

$ cd debian-handbook-6.0+20121031

# EPUB 版をビルド
$ ./epub/build.sh
$ ls en-US/*.epub
  en-US/debian-handbook.epub

# PDF 版ビルドに追加で必要となるパッケージをインストール
$ sudo apt-get install texlive-xetex texlive-pstricks latex-xcolor fonts-linuxlibertine

# PDF 版をビルド
$ ./dblatex/build.sh
$ ls en-US/*.pdf
  en-US/debian-handbook.pdf

Wheezyリリース後

Wheezyがリリースされてから約1ヵ月が経過しています。この間にXクライアントライブラリに数多くのセキュリティアップデートが用意されました。他にも,Linuxカーネル,Iceweasel,Chromiumなどのセキュリティアップデートも用意されています。忘れずにソフトウェアを更新して最新の状態にしましょう。

$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get upgrade

これらセキュリティアップデートなどをまとめた1回目のポイントリリースDebian 7.1が2013年6月15日にリリースされる予定となっています注6⁠。

Wheezyのリリースと同時に,前回の安定版Debian 6.0「Squeeze」は旧安定版となっています。この後,Squeezeは2014年5月4日までのサポートとなりますので,Squeezeをお使いの方はあと1年の間にWheezyへの移行を計画しましょう。

また,同じくして次のDebian 8.0「Jessie」注7に向けた開発が始まっています。ツールチェーンにはじまり,さまざまなソフトウェアの新しいバージョンで頻繁にunstable版のパッケージが更新されています。Ubuntu 13.10(Saucy Salamander)のDebian Import Freezeは2013年6月20日予定ですので,Ubuntu 13.10にもこれらunstable版の変更点が多く取り入れられることでしょう。

注6)
Squeezeのポイントリリースは6.0.1,6.0.2でしたが,2つめの0が無駄ということでWheezyからポイントリリースは7.1,7.2となるようです。――Upcoming stable point release (7.1)
注7)
コードネームのJessieはWoodyの妹であるカウガールのキャラクターです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はDebian 7.0「Wheezy」について紹介しました。これを機にぜひDebianにも触れてみてください。

大統一Debian勉強会 2013ご案内

日程2013年6月29日(土)
時間10:00~18:00
会場日本大学 駿河台キャンパス 駿河台校舎1号館 131, 132, 133, 134教室
URLhttp://gum.debian.or.jp/2013/

著者プロフィール

かわだてつたろう

Debian JP Projectメンバー。普段は関西Debian勉強会で活動中。