Ubuntu Weekly Recipe

第369回Ubuntu GNOME 15.04の変更点

今回は、いつもよりちょっと早いですが4月23日にリリース予定のUbuntu GNOME 15.04の変更点を紹介します。Ubuntuユーザーにも役立つ情報もあります。

Ubuntu GNOME 15.04=GNOME 3.14

先日GNOME 3.16がリリースされましたが、Ubuntu GNOME 15.04のGNOMEは3.14です。第347回でUbuntu GNOME 14.10について紹介した際に「コンポーネントのバージョンを揃えることができない」と書きましたが、15.04ではどうでしょうか。今一度確認してみましょう。

表1 Ubuntu GNOME 15.04のコンポーネント(抜粋)
バージョン コンポーネント(パッケージ名)
3.8.x baobab、gnome-bluetooth、gnome-contacts、vino
3.10.x gedit
3.12.x evolution、gnome-icon-theme、gnome-sushi、yelp
3.14.x adwaita-icon-theme、aisleriot、cheeze、eog、evince、file-roller、gcr、gdm、gnome-color-manager、gnome-control-center、gnome-disk-utility、gnome-documents、gnome-font-viewer、gnome-mahjongg, gnome-maps、gnome-mines、gnome-online-accounts、gnome-orca、gnome-power-manager、gnome-screenshot、gnome-session、gnome-settings-daemon、gnome-shell、gnome-shell-extensions、gnome-sudoku、gnome-terminal、gnome-themes-standard、gnome-tweak-tool、gnome-user-guide、gnome-weather、gucharmap、mutter、nautilus、totem、zenity
3.15.x gnome-system-monitor、gnome-keyring、seahorse
3.16.x simple-scan

このように、これはもう⁠GNOME 3.14⁠と言ってしまって良いでしょう、と言うくらいには多くのパッケージが3.14になっています。なおgnome-icon-themeは3.12でリリースを停止し、adwaita-icon-themeとなりました。gnome-sushiは3.14のリリースはありませんでした。geditは第347回の表から抜けていましたが、3.10.xに分類されるので、今回は変わっていないことになります。

外観が大幅に変わったアプリケーション

現在GNOMEは既存のアプリケーションのUIを変更する作業を継続して行っています。また、GNOME端末(gnome-terminal)はUbuntuの都合で3.6.2から3.14.2に大幅にバージョンしたことにより、変更点が多いです。主なものをピックアップして紹介します。ここで紹介するものはUbuntuでもデフォルトでインストールされているものも多いので、Ubuntu GNOMEをお使いでない方にも役に立つのではないかと思います。

GNOME端末(gnome-terminal)

起動しただけであれば特に大きな変更はないのですが、タブを開こうとして[ファイル]をクリックしても[新しいタブを開く]がありません。⁠端末を開く]には[0][1]があり、このいずれをクリックしてもタブでは開きません[1]⁠。タブで開きたい場合は[編集][設定][全般][新しい端末を開く先][タブ]にします図1⁠。同時に[編集][設定][プロファイルの設定]があることがわかります。3.8ではこれらは同じところにありましたが、3.14では分かれました。設定できる項目自体は増減それぞれありますが、プロファイルの[互換性]タブには興味深い追加項目があります図2⁠。⁠曖昧幅の文字]⁠ambiguous-width characters⁠の訳語で、これだけでピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。GNOME端末を使用しているとフォントが重なって見づらいという経験があるかと思うのですが、その場合はここを[全角]にし、GNOME端末を再起動すると良いでしょう。

図1 新しい端末を開く先
図1 新しい端末を開く先
図2 曖昧幅の文字
図2 曖昧幅の文字

ビデオ(totem)

ビデオ(totem)をお使いの方はあまりいないのではないかとは思いますが、起動すれば即座にわかるレベルで大幅な変更がありました図3⁠。実際に再生もしてみました図4⁠。今回は試しませんでしたが、⁠チャンネル]はDLNAにも対応しているようです。

図3 ⁠ビデオ]を起動して全画面表示するとこうなります
図3 [ビデオ]を起動して全画面表示するとこうなります
図4 パブリックドメインの『ローマの休日』を再生しました
図4 パブリックドメインの『ローマの休日』を再生しました

ゲーム

いくつかのゲームもUIが変更されています。⁠GNOMEマインスイーパー(gnome-mines)][GNOME数独(gnome-sudoku)]が該当します。

地図(gnome-maps)

あまりユーザーは多くなさそうですが、機能はかなり強化されています。図5は14.10の地図(3.12.2⁠⁠、図6は15.04の地図(3.14.1.2)「橿原神宮」で検索してみましたが、格段にわかりやすくなっています。

図5 Ubuntu GNOME 14.10の地図
図5 Ubuntu GNOME 14.10の地図
図6 Ubuntu GNOME 15.04の地図
図6 Ubuntu GNOME 15.04の地図

天気(gnome-weather)

天気も順当なバージョンアップで、若干レイアウトが変更されています。以前はまず一覧を表示していましたが、15.04の天気ではいきなり最初に登録した場所の天気を表示するようになりました。また、直近の予定ではなく先の予定を表示するようになりました。図7は14.10の、図8は15.04の天気のスクリーンショットです。

図7 Ubuntu GNOME 14.10の天気
図7 Ubuntu GNOME 14.10の天気
図8 Ubuntu GNOME 15.04の天気
図8 Ubuntu GNOME 15.04の天気

Wayland

Waylandというディスプレイサーバーについては耳にしたことがあると思うのですが、ついにお手軽に試せるところまで来ました。15.04からは⁠gnome-session-wayland⁠と言うパッケージが追加されたので、これをインストールして一度ログアウトします。ログイン時に歯車アイコンをクリックして[GNOME on Wayland]を選択し図9⁠、ログインします。ただし動作環境には大幅な制限があり、AMDやNVIDIAの場合はプロプライエタリなドライバーを使用していると動作しません。また仮想環境でも動作しないでしょう[2]⁠。ちなみに筆者の検証環境はDN2820FYKHで、これで動作しなければどこで動作するのだろうという鉄板環境と言えます。もしWaylandが動作しない環境でログインした場合でも、ちゃんとログイン画面に戻ってくるので、ログインを躊躇する理由は特にありません。

あまりにも普通に動作するので、本当にWaylandで動作しているのか不安になったので[3]⁠、psコマンドで確認しました図10⁠。

図9 歯車アイコンをクリックするとセッションを選択できます
図9 歯車アイコンをクリックするとセッションを選択できます
図10 psコマンドの実行結果
図10 psコマンドの実行結果

日本語入力(インプットメソッド)関連

 特に変更がない見込みです。第347回を参照ください。

拡張機能

これも第347回の項目と大きな差はありません。

他に良さそうな拡張機能として、コンパクトにアプリケーションの起動ができるSlingshot別途アプリケーションをインストールしなくてもクリップボードを拡張できるClipboard Indicatorウィンドウを全画面表示しているとき以外はトップバーを透過させるDynamic Top Barも便利そうです。

より完全なGNOME 3.14とGNOME 3.16

より完全にGNOME 3.14にするパッケージはPPAで配布されていますが、冒頭にもあるとおりで、アップデートされるパッケージはあまり多くありません。

GNOME 3.16にするPPAも同様に公開されていますが、扱いは慎重にする必要があります。カレンダーのところに通知が表示されるなど大きな変更がありますが図11⁠、詳細はまた半年後にお知らせしようと思います。

図11 GNOME 3.16のGNOME Shell
図11 GNOME 3.16のGNOME Shell

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