インターネットって何だろう?

第46回日本におけるブロッキング[2]

数回連続して日本におけるブロッキングに関して紹介しています。前回は、日本でブロッキングが開始される議論の前段階として携帯電話でのフィルタリングに関して紹介しました。

今回は、携帯電話フィルタリングの話題の次にインターネットでのフィルタリング議論が開始した経緯を紹介します。

インターネットに関する議論(2008~2009)

2007年に18歳未満のユーザに対する携帯電話でのフィルタリングの原則化が行われましたが、その次に話題の中心になったのがインターネットです。

インターネットにおけるフィルタリングに関連する法律として、2008年6月に青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律が国会で成立しました。

この法律は、18歳未満の青少年に対する携帯電話フィルタリングの義務づけとともに、ISPが利用者の求めに応じてフィルタリングソフトやサービスを提供することを義務づけています(参考:INTERNET Watch: ⁠青少年ネット規制法⁠が成立、携帯事業者にフィルタリング義務付けなど⁠。

ブロッキングは「自主的取り組み」として

その後、2009年1月に総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめが公表されました。同報告書では、諸外国での事例を紹介していますが、そこではブロッキングまでをISPに法的に義務づけている国は少ないとしています。

別紙1-3PDFの97~98ページに以下のような文章があります。

以上のように、諸外国では、ISPに対する法的な義務は児童ポルノ情報を発見した場合の通知義務等にとどまることが多く、自主的なパトロールや、ブロッキング等の対策まで義務付けている国は少ない。

ブロッキング等の対策は民間の自主的取組として実施されている国が多い。

例えば、北欧諸国においては、民間の自主的取組として後述するDNSポイズニングという手法でブロッキングが行われており、イギリスでも、やはり後述するハイブリッドフィルタリングといわれる手法でブロッキングが行われている。

これらの手法の詳細は後述するが、海外のコンテンツにも対応可能であること、ISP側の設定のみで機能するのでユーザーの意向に左右されないことなどの利点を持つ。

このような背景から、日本においても「ISPの自主的な活動」としてブロッキングを行うことが、ISPに対して要請される方向性で議論が進んでいるのだろうと推測しています。⁠これはあくまでISPの自主的な取り組みですよ」という方向性であり、義務ではないというものです。

しかし、この「自主的な取り組み」というのはISPに重くのしかかっています。たとえば、⁠通信の秘密を侵している」という訴えを起こされるのは「各自の判断」でブロッキングを行っているISPということになります。

児童ポルノ防止を目的としたブロッキング手法の提案

2009年3月に警察庁の、平成20年度の報告書として総合セキュリティ対策会議がインターネット上での児童ポルノの流通に関する問題とその対策について(PDF)を公表しました。この報告書は、児童ポルノ流通防止協議会によるもので、ブロッキングによって児童ポルノ流通を防止するための具体的な仕組みの提案も行っています。

次回に続く

今回は、日本においてインターネットフィルタリングの原則化と、その後、さらにフィルタリングから一歩進んでブロッキングへと議論が行われた経緯を紹介しました。次回は、日本におけるインターネットブロッキングに関して大きく状況が動いた2010年以降の議論を紹介します。

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