知りたい!サイエンス
小笠原諸島に学ぶ進化論
―閉ざされた世界の特異な生き物たち―
- 清水善和 著
- 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2010.6.4[在庫なし]
- 判型
- 四六
- 頁数
- 216ページ
- ISBN
- 978-4-7741-4268-5
サポート情報
概要
小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれ、独自の自然環境や生物進化の見られる島である。チャールズ・ダーウィンが進化論を発想するにあたって重要なきっかけを作ったとされるガラパゴス諸島と、太平洋を挟んで対極に位置する日本(しかも東京都!)の小笠原では、本家ガラパゴスに勝るとも劣らないすばらしい自然が見られる。
では、小笠原の自然へようこそ。
目次
第1章 海洋島の生物相と進化の法則
- 1-1 大陸島と海洋島
- 1-2 ホットスポットと島弧活動
- 1-3 海洋島の一生
- 1-4 島への移動(3つのW)
- 1-5 定着の困難さ
- 1-6 そもそも進化とは
- 1-7 島の生物進化を促進する要因
- 1-8 種数―面積関係
- 1-9 切れ味鋭い動的平衡説
- 1-10 有用なニッチ理論
- 1-11 遺伝子から進化をみる分子時計
- 1-12 海洋島に共通する島症候群
第2章 小笠原諸島の歴史と生物の由来
- 2-1 小笠原の位置:北南西からの視点
- 2-2 小笠原の範囲:広大な海域に点在する島々
- 2-3 常夏でない気候
- 2-4 植物からみた季節性:フェノロジー
- 2-5 島弧の形成(島の土台作り)
- 2-6 北上する小笠原
- 2-7 氷期の海面低下
- 2-8 3方向からの生物由来
- 2-9 歴史の浅い火山列島の生物相
- 2-10 人と自然の関わりの歴史
第3章 小笠原諸島のユニークな生物たち
- 3-1 非調和な小笠原の生物相
- 3-2 唯一の哺乳類:オガサワラオオコウモリ
- 3-3 絶滅に瀕する大型の陸鳥:オガサワラノスリとアカガシラカラスバト
- 3-4 物怖じしない小鳥たち:メグロウグイスメジロ
- 3-5 豪快な海鳥:アホウドリとカツオドリ
- 3-6 ヘビのいない爬虫類:オガサワラトカゲ
- 3-7 昆虫類の多様な進化と生存の危機
- 3-8 花と昆虫のパートナーシップ(共進化)
- 3-9 進化のショーウィンドウ:陸産貝類
- 3-10 巨木の多い湿性高木林の植物
- 3-11 固有性の高い乾性低木林の植物
- 3-12 植物の適応放散的種分化
- 3-13 巨大小笠原島仮説
- 3-14 目立たない花と性の分化
- 3-15 海水に溺れる種子:固有ハイビスカス
- 3-16 草が木に進化する(草本の木本化現象)
- 3-17 絶滅危惧種の代表:ムニンノボタンとムニンツツジ
- 3-18 海の観光の目玉:クジラとイルカ
- 3-19 アオウミガメの保護増殖
- 3-20 海の中も海洋島
- 3-21 海域から淡水域への進化
- 3-22「東洋のガラパゴス」の意味
第4章 脆弱な島への生物の侵入と保護
- 4-1 恐れ知らずの動物たち
- 4-2 防御機構をもたぬ植物(武装しない植物)
- 4-3 生態系を破壊するノヤギ
- 4-4 昆虫を食べ尽すグリーンアノール
- 4-5 陸産貝類を捕食するプラナリア
- 4-6 空ニッチに収まったリュウキュウマツ
- 4-7 裸地を覆い尽くすギンネム
- 4-8 在来種を駆逐するアカギ
- 4-9 “絞殺し植物”ガジュマルの脅威
- 4-10 先駆的なクマネズミ駆除
- 4-11 危機的な固有種の現状
- 4-12 絶滅危惧種を守る制度
- 4-13 生物多様性の観点から
- 4-14 植栽と遺伝子撹乱
- 4-15 ヤギネコフェンス(万里の長城)の設置
第5章 世界遺産申請とこれからの小笠原
- 5-1 世界遺産に向けて
- 5-2 3つのクライテリア
- 5-3 エコツーリズムの導入
- 5-4 森林生態系保護地域の設定と新ルール
- 地図
- 父島の主な山、地名、遊歩道
- 母島の主な山、地名、遊歩道
プロフィール
清水善和
駒澤大学総合教育研究部教授。理学博士。1953年生まれ。京都大学大学院理学研究科植物学専攻博士後期課程修了。専門は植物生態学、島嶼地理学。1976年より小笠原諸島に通い続け、大洋島の植物の進化・生態とその保護について調査・研究を続けてきた。1994年と95年にガラパゴスで1995年から96年にかけてハワイで野外調査を実施。現在、「樹木環境ネットワーク協会」のグリーンセイバー検定委員や「日本ガラパゴスの会」の理事などを務めている。主な著書に『ハワイの自然? 3000万年の楽園』(古今書院)、『小笠原自然年代記』(岩波書店)がある。