知りたい!サイエンス
ミクロな化石,地球を語る
―微化石に刻まれた絶滅と再生―
- 谷村好洋 著
- 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2010.10.21[在庫なし] 2013.6.17
- 判型
- 四六
- 頁数
- 208ページ
- ISBN
- 978-4-7741-4426-9 978-4-7741-5800-6
サポート情報
概要
微化石とは、微細な化石のこと。一つひとつは小さく目立たないが、さまざまな場所から無数に発見できるのが特徴だ。そんな彼らをつぶさに調べると、生物と地球の歴史について、実にいろいろなことがわかってくる。
天体の衝突と絶滅は同時の起こったのか? 日本海は巨大な淡水湖だったのか?微化石が記録する過去・現在を紐解きながら、地球について語り尽くす。学問的に大きな足跡を残しながらも大型化石の陰に隠れてがちな微化石。
その魅力に存分に触れてみよう。
こんな方にオススメ
- ミクロな化石に興味ある方
- 地球史、日本列島形成の歴史の関心のある方
- 生物の繁栄・絶滅はどうやって調べるのだろう……と不思議に思っている方
目次
第1章 深海への挑戦
- 1.1 謎の微小円盤
- 1.2 ナチュラリストのドレッジ
■深海探査を支えた二つのドレッジ■無生物帯は存在しなかった - 1.3 チャレンジャー号による世界周航探検航海① 二人の博物学者
■「チャレンジャー号」大探検航海へ出発 - 1.4 チャレンジャー号による世界周航探検航海② サウンディング・マシーンで泥を採る
■チャレンジャーレポート
第2章 深海に降り積もったもの
- 2.1 海のなかの食生活
■食う―食われるの争い - 2.2 沈降速度①――17年で3000m
- 2.3 沈降速度②――20日で3000m
■セジメント・トラップで沈降速度を割り出せ■マリンスノーによる高速輸送 - 2.4 マリンスノー
■マリンスノーはどこへ行くのか? - 2.5 堆積物になれる確率は1%!?
■タフォノミック・アクティブゾーン - 2.6 深海に降り積もったプランクトンの殻
■深海底にはなにが堆積しているのか? - 2.7 エスモディスクス――謎の珪藻
■エスモディスクス軟泥■陸や氷河の堆積物
第3章 地球史は深海底に記録される
- 3.1 1000年に0.3cm……78
■堆積速度が速い場所、遅い場所■海域によって違う堆積速度 - 3.2 海洋底を掘削する
■モホール計画 - 3.3 地球科学に革命を起こした船
■海底には古い・新しいがある? - 3.4 微化石が語る地層の年代
■生層序基準面を見つけ出す■古地磁気で年代を決める■生層序基準面と古地磁気の極性反転を組み合わせると…… - 3.5 微化石に記録された小天体の衝突
■深海底から見つかった大事件の痕跡■イリジウムスパイク――戯言から定説へ - 3.6 衝突と絶滅は同時に起こったのか?
■再堆積■シニョール・リップス効果■研究成果の見直しによる小天体衝突シナリオ - 3.7 大絶滅後、プランクトンの運命
■植物プランクトン■生物ポンプの停止。そして再開■淡水域ではどうだったのか?
第4章 微化石が語る古日本海
- 4.1 日本海の形成と日本列島の成立
■日本海は淡水湖へと変化した?■日本海の形成 - 4.2 ラカストリン・アクチノキクルス 湖沼史を語るプランクトン珪藻
- 4.3 淡水珪藻が語る湖沼史
■日本列島のラカストリン・アクチノキクルス■淡水珪藻、主役の交替■淡水珪藻、興味深い研究テーマ - 4.4 湖沼堆積物の年輪 湖底の縞はなにを語る?
■三方五湖の縞々珪藻土■縞模様は珪藻のライフサイクルから■緑黄色の粒の正体■縞の記録を読み解くと…… - 4.5 海底にも縞はある
■サンタバーバラ海盆と古仙台湾■貧酸素水塊のやっかいな副産物――青潮 - 4.6 縞に記録された100年
■縞を読み取る
第5章 微化石が語る日本列島の海
- 5.1 海の大河
■冷やされた海水は深海へ■熱塩循環がストップすると…… - 5.2 プランクトンのプロビンス分化 微化石が語る海流の歴史
■コスモポリタンな珪藻「タラシオネマ」と「キャビターツス」■プランクトンのプロビンス分化 - 5.3 古黒潮と黒潮
■日本の亜熱帯化■インドネシア海路が閉じたから? - 5.4 開いたり閉じたりする? 対馬海峡と対馬海路
■対馬海流■対馬海峡 - 5.5 最終氷期の日本海
■日本海のコア■日本海の歴史、結氷~逆流? - 5.6 過去の黒潮はどのようなパスを選択していたのか?
■セジメント・トラップに記録された黒潮のパス■対馬海流と黒潮パス - 5.7 プランクトンから読みとる近過去の環境変動
■珪藻群集の交替が記録された高度経済成長
第6章 過去から未来へ、海の森の変遷
- 6.1 海の森
- 6.2 アクリタークとシアノバクテリア
■32億年前の微化石■シアノバクテリアの海■古生代を支えた「アクリターク」 - 6.3 ハプト藻の森
■ハプト藻がつくる白い崖■ハプト藻の森から珪藻の森へ - 6-4 最古のヒゲクジラ「ヤノケトゥス」 南大洋が生み出したほ乳類
■南極大陸を取り囲む海――南大洋■周南極海流の成立■陸上にイネ科植物が増えると、海中の珪藻が多様化する? - 6-5 海の森、その後
プロフィール
谷村好洋
1949年、奈良県生まれ。東北大学大学院博士課程修了。国立科学博物館 地学研究部、環境変動史研究グループ長。専門は古生物学、おもに珪藻化石を研究。著書に『化石の科学』(共編著、朝倉書店)、『日本列島の自然史』(共著、東海大学出版会)などがある。