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レポート「FlashユーザーのためのiPhoneアプリ開発入門」

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2009年10月2日(金)東京・代々木にて,ToyCamera開発者 深津貴之(ふかつたかゆき)氏と,NatsuLion for iPhone開発者 森琢磨(もりたくま)氏をお迎えし,FlashユーザーのためのiPhoneアプリ開発入門を開催した。

今回のイベントはFlashユーザーに的を絞った物だったが,スピーカーもビックネームということで即満席に。FlashユーザーのiPhoneアプリ開発に対する興味・関心がいかに高いかをうかがわせる。

会場の様子

会場の様子

iPhone application development for Flash users.

1人目の登壇者は,fladdictで知られ,日本のFlash界に大きな影響を与えている深津貴之(ふかつたかゆき)氏だ。iPhoneアプリ開発者としても著名で,ToyCameraをはじめ,OldCamera,QuadCameraなどのカメラアプリを多く手がけている。どれもApp Storeでは上位に食い込む人気アプリである。

最近では,2人目の登壇者 森琢磨(もりたくま)氏と共に,ミニチュア風写真を作成できるTiltShift Generatorを開発。当初AIRアプリとして公開されたことで話題を呼び,国内外で爆発的にヒットしている。なお,TiltShift Generatorでユーザーが編集した画像は,Twitterのハッシュキー(#TiltShiftGen)で検索し一覧することができる。

深津貴之氏

深津貴之氏

Flash使いがiPhoneに挑戦する理由

深津氏は,⁠Flash使いがiPhoneに挑戦する理由⁠として,⁠Flashは今後モバイルに移行する⁠とし,⁠今後Flashをやっていくとしても,その先行として今のうちに実験をかねていろいろやっておくのもおもしろいのではないか」と考えているという。さらに「Flashをやっている人の強みとして,Webに基盤を持っているため,キャンペーンサイトやバナーなど,自分達でアプリの露出を行うことができ,かつiPhoneにはUIの洗練されたアプリが少なく,インタラクティブな部分ではFlashで培ったノウハウを持ち込むことで,ポジションを確保できる」と語った。

iPhoneとFlashの違い

それでは,⁠iPhoneとFlash⁠では,どう違うのだろうか。

氏によれば,⁠指で操作するということ⁠と,⁠マウスで操作すること⁠が全く異なると語る。指ではマルチタッチやフリック入力などのいわゆるジェスチャーが可能であり,マウスとは異なった操作が生じる。つまり,インターフェースにもその違いを反映させ,最適化するよう考えなければならないということだ。Flashと同じ考えで作れば,使いづらいものになってしまう。注意点として,⁠小さすぎるボタンは押せない⁠ということ,⁠ロールオーバーがない⁠ということが挙げられた。iPhoneでは,ロールオーバーの概念が無いため,ボタンはボタンであるとして,明確にデザインをする必要があるのだ。

コンテンツの更新性の面でも,注意が必要だと述べる。まず,アップデートにはApple社の審査が必要だということ。そしてアプリがクライアントサイド側のものであるため,Webのように容易にアプリを更新することができないとし,リリース時のチェックが重要であると語った。

開発プロセス

iPhoneアプリの開発プロセスについても,TiltShift Generatorの実例を交えて解説がなされた。開発プロセスは,プランニング,プロトタイピング,実装,公開の大きく4つのフェーズに分けられるという。

iPhoneアプリ開発のプロセス

iPhoneアプリ開発のプロセス

プランニングでは,実働前の検証作業を行うことで,更新性の面からも⁠根本的な失敗を回避できる⁠とした。

プロトタイピングでは,要件・機能定義をまとめてモックアップを作り,検証とフィードバックを行う。⁠UIと機能定義がアプリの成功の半分を握っている⁠とし,本実装を始める前に検証モデルを制作して,最終的なUIの仕様を決めていくことは重要だとした。このフェーズで深津氏は,ポリシーとして「iPhoneアプリはマニュアルもなく,すぐ使えなければならない。機能が複雑だとあまり使ってもらえない」とし,アプリの目的と使い方を明確にするために,⁠機能をどこまで減らせるか?⁠そして,⁠使う可能性のすくない機能はいらない⁠と語った。事実,氏のアプリは非常に洗練されたUIと使いやすさでとりわけ評価が高く,⁠引き算の美学⁠を感じさせる。

深津氏はUIの実装を考慮する上で,ペーパープロトタイピングを行っているという。ペーパープロトタイピングとは,PhotoshopやIDEによるモックアップを制作せず,紙とペンでプロトタイプを作ることだ。その理由として,氏は⁠タッチUIはPCでは検証できない⁠とし,⁠PCの画面でデザインしてもそれが有効なデザインかどうかの保証はまったくない」と語った。実際にiPhone画面ぴったりの付箋を貼り付け,ペンでUIを描き使用感を試すことで,使いやすさや不便なところがないかチェックでき,PCでデザインするよりもはるかにスピーディーに検証することができるという。

iPhone画面に付箋を貼り付けたペーパープロトタイピング

iPhone画面に付箋を貼り付けたペーパープロトタイピング

iPhoneアプリ実装後の画面

iPhoneアプリ実装後の画面

対照的に,実装のフェーズの解説は,プログラムレベルとビジュアルレベルの実装を,⁠超がんばる⁠の一言でまとめた。そのためには,実装に至る前のプロトタイピングまでの段階で,UIの問題点や実装した後で出てくるであろう問題を予め埋めておくことが重要だとした。一通りの実装後,TiltShift Generatorでは,漏洩やライバルに情報が流れることを気にせずベータテストを早い段階で行い,できる限り様々な分野にフィードバックを貰い,今まで拾いきれなかった最終的な問題をできるだけ早く回収・修正できるようにしたという。

公開のフェーズでは,審査,リジェクト,そしてプロモーションについて解説。Apple独特の⁠審査⁠についてのノウハウを惜しみなく紹介した。氏曰く,⁠アップルに喧嘩を売りすぎない⁠ことがポイントだという。プロモーションでは,⁠リリース日のコントロール⁠の重要性や,⁠いかに露出を確保するか”,⁠App Store依存からの脱却⁠に着目し,⁠僕たちWebの人たちは,その重要性さえ理解していれば,ある程度対策をとることができるのではないか」と語った。

このセッションでは,Flashユーザーがどこに注意してiPhoneアプリ開発に進めばいいか,丁寧に道案内がおこなわれた。そのひとつひとつのプロセスは,非常に考え込まれ目的と理由が明確であり,効果的かつ高効率で無駄がひとつもなく美しい。深津氏が真のプロフェッショナルだと評価される,その所以を垣間見ることができた貴重なセッションだった。

著者プロフィール

ロクナナワークショップ(ロクナナワークショップ)

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