人工知能で明日のビジネスは変わるのか?

第12回 総括・人工知能をビジネスで活用するには

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これまで11回にわたって「人工知能をビジネスで活用するには」というテーマで連載をしてきました。今回が最終回ということで総括です。

まず重要なのは,この長きにわたる人工知能バズワードブームの正確なところを把握することです。何も中身がなければここまで大きなブームにはならないので,実態があるのは事実なのですが,それが過大に騒がれすぎているので正確なところが把握しづらくなっています。

人工知能ブーム,5つの内訳

ブームの内訳を大きく分けるとだいたい以下のような感じになります。

  1. ディープラーニングによる画期的な成果
  2. 取り組みによるこれまでになかった成果
  3. 未着手だった部分における成果
  4. 単なる拡大解釈
  5. ブームにのったまやかし

中身のある人工知能ブーム

1があるために,今の人工知能ブームは実態というか中身がある,すべてがまやかしではないと言えます。ディープラーニングという手法の導入により,画像認識などにおいては飛躍的な成果,ブレークスルーと言えるものがあったのは間違いない事実です。

2についてはブレークスルーというわけではないですが,人工知能ブームによってリソースがそちらに集中したことにより,画期的ではないが妥当な躍進がありました。実際,1によるブームがなければ起こらなかった可能性も高いので,これはこれでブームによる実態のある産物といえます。AlphaGoのような1と2の合わせ技のような成果もあります。

3については,ブーム以前と比較してテクノロジーの進歩があったわけではないが,取り組むことによって成果が生まれたというケースです。⁠人工知能の活用によって成果が上がった」というものは,この3が多いと言えるでしょう。

成果が上がったといっても,元々取り組んでいてそのレベルが上がったわけではなく,これまでやっていなかったのをやるようにしたので成果が出たというものです。

この3番までが,しいて言えばブームによる成果だと言えるでしょう(3はエンジニアの視点から成果といえるかはちょっと微妙ですが)⁠

中身が疑わしい人工知能ブーム

4については,とくにブーム前と比較して成果があったわけでもないのに,ブームにのって「人工知能です」と言い始めたものを指します。ブーム以前から存在する機械学習・集合知などが画期的に登場したもののようにPRされているだけです。つまり,これはソリューションの売り手のマーケティングというだけです。

5はまあよくわかってない人がよくわかってないことを言うケースです。なぜか影響力が大きい人がそれをやることが多いですが。

さて4や5はブームにおけるまやかしと言えますが,問題はこちらのボリュームがなかなか無視できないくらい大きかったことです。

そのため筆者はこの2年ほど,人工知能ブームに惑わされないようにという警鐘をずっと鳴らしてきましたが,昨年末くらいから他にもそういう意見がちらほら聞かれるようになりました。ちょっと安心ですが,それはブームがすでにピークを過ぎているということかもしれません。

マネタイズを実現するには?

さて当然のことながらビジネスに活用できるのは1~4ということになりますが,画期的な成果があったディープラーニングにおいては,まだまだマネタイズできるジャンルが少ないのが欠点です。

しいて言えば当面は医療においては有意な取り組みができるかと思いますが,ビジネスに本格活用されるようになるのはまだ先だと言えるでしょう。筆者は,当面注目すべきは2と3ではないかと思います。

2はテクノロジーの進歩を伴うので急にたくさんの成果が出ることはないでしょうが,⁠人工知能を活用できる対象を広げる」ことができます。

一方で,3については,単にテクノロジーを活用していなかったジャンルに対して活用するだけなので短時間で成果を出すことができますが,ただそれは潜在的な対象を広げるわけではないので,ある意味「市場を食い尽くしていく」とも考えられます。

それでも,まずは人工知能というテクノロジーにお金が落ちないとブームがまた終焉してしまうので,まずは3でも取り組む意味はあるでしょう。

先ほど1から5は,より意味合いが大きい順に書きましたが,問題なのはアピールされる順番はむしろ逆である(5から1)ということです。

流行らない店ほど看板がでかいといいますが,4や5はブームの単なる便乗なので,いかにブームが続く間にそのメリットを享受しようか,というスタンスなため声が大きくなるのはある意味必然だと言えます。

ですから,ビジネスで成功するためには,そうしたものを避けて,いかに実態がある1や2や3を見つけていくかが重要だということです。

費用対効果を意識する

次に重要なのは,その取り組みの費用対効果をきちんと意識するということです。連載でも何度も触れましたが,ブームの当初というのは取り組みだけでも評価されてしまいます。いわばモラトリアムですが,それに寄りかかっていては,成果につながる前にブームが終わってしまうことでしょう。

ちゃんと成果を意識して,取り組みにおけるコストを上回るリターンを得られるようにするというのは大変重要です。

「そうした短期的な視野ではテクノロジーの躍進を阻害する」という意見もあるかもしれませんし,それはそれで確かに真理でもあります。ただその場合には,⁠取り組んでいるから評価してください」というスタンスではなくて,⁠今は投資フェーズなのでコストがリターンを上回るかもしれませんがご理解ください」とはっきり表明することが重要なのではないかと思います。

投資でもコストでもなんでも良いですが,お金を使うことを決裁するポジションの人や組織に対して,どういうゴールに対して取り組んでいるのかをきちんと共有できるのであれば,そういった点は問題はないと言えるでしょう。

投資の意味と,そのゴールを明確に

人工知能がブームとしてではなく有用な手段として活用されるようになるには,正直まだまだ時間がかかります。その中で1つのヒントとしては,設備集約に適した処理から,どんどん人工知能に任せていくということです。つまり,投資に対するリターンというアップサイド的な考え方ではなく,コスト削減という発想から着手するのはハードルが低いですし,その流れの中でもテクノロジーの進化は期待できます。

そうするうちに技術の進歩による成果が期待できるようになってきたら,次はアップサイドを生む側の取り組みへとシフトしていくと良いのではないでしょうか。

費用対効果を意識するということは,経済圏を作るということです。マーケティングにおけるユニットエコノミクスのようなもので,掛けたお金を上回る収益が見込めているうちは,そのジャンルは成長を続けることができます。

最初に分類した1から5のうち,3はいわば1や2が花開くまでの時間稼ぎというか肥料のような性格を持っているので,それはそれで重要なのではないかと思います。

連載のまとめ

連載の総括としては,人工知能がビジネスに継続的に活用できるようになるかどうかは,まだ正直わかりません。ただ可能性は高いと言えます。

そのためにはまやかしを排除して,まずはハードルの低い取り組みから始めることで経済圏を作り,その中で人工知能の飛躍を育てていく,というスタンスが重要なのではないかと筆者は考えています。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。ライブドア(現LINE)のデータホテルを構築・運営の後,海外にてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 株式会社ゼロスタート)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZERO-ZONE」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

株式会社ゼロスタート:https://zero-start.jp/

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