The Analytics──誰のためのWebアクセス解析か?

第3回 訪問回数はどう数えるか?

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システムの人間の手も借り,どうにかサイトにWeb解析ツールを導入することになった。結局,システム要件,今後の可能性を含めてASPサービスタグ式のものとなった。

Webページへの解析タグ貼り作業が終わり,現在はテスト系での動作確認作業を行っており,いよいよ来週から本番での稼働となる。

しかし,自分の前に1つ大きな課題つきつけられた。Web解析ツールにログインをしてみると,その言葉の意味がほとんどわからないのである。ギリギリいくつかの言葉については聞いたことがあるものの,その定義はうろおぼえでしかない。

こんなことなら導入部分をシステムの人間に任せずに,自分でももう少し関われば良かった…。

と嘆いてもしかたがないので,困ったときの矢島である。

本屋にて

「ビールがおいしいところな」

ある意味これだけで友人を助けてくれるのだから,それはそれで尊敬ものである。

今回は矢島の方から待ち合わせ場所の指定をしてきた。居酒屋の近くにある本屋である。ちょっと遅れるかもしれないから,そこで時間をつぶしていて欲しいとのことだ。

「ライフハック~」というのは最近はやりの言葉である。この本屋でも,他の本屋同様平積みになっている。最近は自分を検索エンジンにすることがおすすめらしい。

いくつかの本をパラパラとめくったあと1冊手にもって,小説のコーナーへ進んだ。最近好きな作家「松林健司」の新作のチェックである。特に新しいものはないようだ。

「松林健司の新作はあったか?」肩越しに声がかかった。矢島である。「ビール飲む前にここで少し話そうか?」なんのことだかわからないが,本屋で講習が始まった。ビールはまだいいらしい。

ページビューとその評価

「まず,一番最初の覚えるべきものはページビューだろう。これは知ってるか?」

ページが読まれた数ということは知っている。それを答えると「あまい」とひとこと。ここに落とし穴があるらしい。ページビューはあくまで,そのコンテンツがブラウザに表示された回数であり,読まれたかどうかは別とのことだ。矢島によると,この本屋で言うなら,本の表紙を見たかどうかくらいでしかないらしい。たしかに目にした本のタイトルなんて,すべては覚えていない。

「平積みされてると,それだけ目にはとまるよな。つまり,目に触れる回数は少し工夫すれば増やせるんだ。これはページビューも同じ。増やすだけだったら,そこへのリンクを増やせばできる」

つまり,目に触れた回数だけではその本の評価はできない。同じように,ページビューもそれだけではページの評価はできないということらしい。

「じゃあ,ページの評価はどうするんだ?」

実は,これは「この指標を見れば良い」という簡単なものはないそうだ。ページによっても目的が違うから,その目的に合った評価をしなければならないから一概には言えないらしい。ただ,同じような目的ならそれが可能な場合もあるだろうとのことだった。このあたりは徐々に教えていくよと言われてしまった。

1週間に何回?

「この本屋ってはじめて?」矢島が聞いてきた。いや,通勤途中の本屋だし,1週間に1,2回くらいは立ち寄るよ,と返すと「ふ~ん,意外と読書家だな」 よけいなお世話である。

「この書店に仮に1日100人の来客があるとするだろ。単純計算だと1週間では700人の来客があるわけだ」

まぁ,この本屋に700人も来ているかはわからないが。

「しかし,実際にはお前のような1週間に数回くる客もいるだろう。わかりやすく1週間に2回来る客が50人,3回来る客が50人いるとするよね。そうすると客個人では1週間に何人になると思う?」

なるほどね,確かに700人として考えると多い感じもするが,実際にはだぶっている人がいるから,もうちょっと少ないのか。

「2回来る人がのべ100回,3回来る人がのべ150回あるわけだから,700からこの回数を引いた450人が1回だけ来ている人になるのか。ということは合計で550人なわけだな」

「そう,それと同じことがWeb解析ツールでもできるんだ。来訪した人を数えているのが訪問者という指標なんだ。そして,のべ人数の方は訪問回数という指標になる」

しかし,Webサイトの場合はどうやってサイトに来たとか,出て行ったとか判断しているんだ?…と小難しい顔をしていたら矢島が続けた。

「Webサイトの場合はセッションという考え方をもってこれらの指標の計測を行っているんだ。これはちょっとややこしいんだよな。絵に書いて説明するよ。座れるところに行こう」

やっと喉が渇いたらしい。

目では見えない訪問

とりあえずビールと枝豆を頼むと,矢島はメモ帳を取り出して図を書き始めた。

「これがページビューと訪問者とセッションの関係だ(図1)。人がサイトに訪問するとページを1枚1枚見ていくだろ,これが積み重なって,それぞれのページビューになっていくんだ」

画像

お姉さんが生ビールを持ってきた。矢島は何も言わずにぐいっと飲み干し,すぐに次のビールを頼んだ。

「さっき本屋に入っていろいろな本をいろいろ見てから出てきただろ。これが1回の訪問だ。これをWebサイトでの動きに置き換えると,いくつかのページをみてサイトを出て行くわけだ」

枝豆を1つ食べて,続く。

「ただ,本屋の訪問の場合は,人が来た,帰ったが簡単にわかるけど,サイトではわからない。だから,ページを移動している時間を計測してそれを行っているんだ」

もう1つ口に放り込む。

「ある時間内,だいたい30分くらいが多いんだけど,その時間の間にページを見て別のページに移っていることがわかれば1つのセッション,つまり訪問としてみているんだ。30分以上たってしまうと別の訪問になってしまう。そうやって訪問を見極めてるんだ」

セッションは一番つまづきやすい部分だそうだ。こういった部分を知らなくてもなんとなくは使えてしまうそうだが,基本的な部分を理解しておくことでWeb解析ツールより使いこなすことができるらしい。

まだ先が長いんだなぁと考えていたら,「徐々に教えていくよ」と最後の枝豆を取られてしまった。

つづく

著者プロフィール

安西敬介(あんざいけいすけ)

大手Eコマースサイトにおいて、システムエンジニア、コンテンツディレクターを経て、マーケティング戦略の支援や、Webサイトの分析を行う。

URLhttp://an-k.jp/blog/


松田恵利子(まつだえりこ)

ダブルクリック株式会社 アナリティクス事業部

WEBサイト制作・開発,Webディレクター,モバイル向けマーケティングツール事業の立ち上げを経て,2005年ダブルクリックに入社。さまざまな企業へのアクセス解析ツールの導入を担当する。現在は,アクセス解析チームを取りまとめる一方,Webマーケティングサービスの事業開発を行う。

URLhttp://www.doubleclick.ne.jp/

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