ネットだから気をつけたい! 著作権の基礎知識

第2回 ありがちな「思い込み」~中途半端な"知識"はトラブルの元

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3.5 分

はじめに

会社の内と外とを問わず,第三者の著作物を無断で使ってトラブルになった当事者から,「こんなはずじゃなかったのに…」という相談を持ちかけられることがよくあります。

その中には,もっともだなぁ,と思われるケースもあるのですが,実は当事者が迂闊な"思い込み"で行動していただけだった,ということも決して稀ではありません。

巷では,「著作権」に関して様々な情報が飛び交っていますし,会社の宣伝部署や広告業界に代々伝わる「慣行」なんてものも現に存在していたりします。

我々ユーザーにしてみれば,自分たちが著作物を使う上で都合の良い情報や慣行には,ついつい飛びつきたくなるものです。

しかし,インターネットの普及により,誰もが"大量複製・大量配信"できるようになった今,コンテンツホルダーの側でも,ルールに反した利用行為への警戒感を強めており,それだけにトラブルのリスクも増してきているというのが現実です。

そんな時代だけに,ユーザーの側でも,世の中に出回っている情報や慣行が,著作権に関する(法律上の)ルールにきちんと根差したものといえるのか,単なる"思い込み"で自分たちにとって都合の良い解釈をしているだけではないか,といったことに,常に目配りしていく必要があるでしょう。

今回は,著作物の利用に伴うトラブルを未然に防ぐ,という観点から,著作権にまつわる「ありがちな"思い込み"」を検証していきたいと思います。

「営利目的じゃないもん!」

(1)
「当社のウェブサイトに来訪してくれた方へのサービスとして,先日の新聞向け企業イメージ広告で使った"カリフォルニアの大草原の写真"を加工し,PCのデスクトップの壁紙用に無料でダウンロードできるようにしました。カメラマンには特に断ってないですけど,別に商売しているわけじゃないから問題ないですよね?」

毎年のように研修でうるさく言っているせいで,さすがに最近では減ってきましたが,かつてはこんな相談が飛び込んできたこともありました(苦笑)。

確かに,世の中で報道される「著作権侵害」の事例の多くは,未だに海賊版(不正コピー品)や模倣品の販売だったりするのが実情ですから,他人の著作物を使っていても,儲けさえ上げていなければ大丈夫,という考えに陥りがちです。

しかし,著作権法は「営利目的で複製すること」だけを禁止しているわけではありません。著作権が禁じているのは,あくまで,「権利者に無断で複製することそれ自体」なのです。

私的複製(後述)や,「引用」と評価されるような例外的な場合(これについては次回ご説明する予定です)を除けば,著作物のデッド・コピー(丸ごと複製)は,典型的な著作権(複製権)侵害行為として,権利者の許諾なく行うことを禁じられている行為にあたります。そして,複製物を販売して利益を上げているかどうかや,提供を有償で行っているかどうか,といったことは,原則として行為の違法性の評価に影響を与えるものではありません。

したがって,広告に写真を利用した際の契約条件等をきちんと確認することなく,著作権者(カメラマンや広告代理店など)に無断で(1)のような行為を行うのは,非常にリスクが高い!ということになります。

ちなみに,著作権法の中にも,「営利目的」かどうかが合法・違法の評価の分かれ目になるルールがいくつか存在しています。

例えば,以下のような規定です。

公表された著作物は,営利を目的とせず,かつ,聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず,著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には,公に上演し,演奏し,上映し,又は口述することができる。(第1項本文)

著作権法第38条(営利を目的としない上演等)

美術の著作物でその原作品が前条第2項に規定する屋外の場所(注:街路,公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所)に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は,次に掲げる場合を除き,いずれの方法によるかを問わず,利用することができる。

(略)

4 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し,又はその複製物を販売する場合

著作権法第46条(公開の美術の著作物等の利用)

しかし,第38条を例に取ってみても,個人がボランティアで行うイベントや,子どもの学芸会とは異なり,営利企業が行うイベントであれば直接・間接に何らかの"営利性"が付いて回るのが現実でしょう。

(2)
「公共のイベント広場に地元のアマチュアバンドを集めて,みんなで人気アーティストのラブソングを口ずさむライブイベント(参加費無料)」

にしたって,それをどこかの会社の主催でやる,ということになれば,新商品のプロモーションから企業イメージの向上まで,事業活動に付随する何らかの"営利性"を見て取ることができるわけで,そこで演奏される曲目について何ら著作権の処理を行うことなくイベントを挙行するのは,やはり無謀と言わざるを得ません。

先に挙げた(1)にしても,無料ダウンロードサービスがサイトへの来訪者数増加→自社の商品宣伝効果アップ,につながることは十分に考えられますから,その意味でも避けられるべき行為だということになります。

著者プロフィール

企業法務戦士F-JEY(きぎょうほうむせんし・えふじぇい)

199×年,都内某企業入社。以来,法務部署で禄を食む日々を送る。ここ数年はもっぱら知的財産絡みの仕事に従事。最近,周りから「そろそろ飽きただろう」と言われることも多いが,技術もビジネススキームも日々進化するこの世界,当分お腹いっぱいにはなりそうもない。

2005年以降,ブログ「企業法務戦士の雑感」をささやかに更新中。

コメント

コメントの記入