Webクリエイティブ職の学び場研究

第1回 面白法人CTO貝畑政徳氏に訊く(前編)―「変われる人」づくり

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先のよめない業界で,先を考えてみること

かたまじめなタイトルで恐縮ですが,私がこの連載を起案したのは,そのものズバリ「Webクリエイティブ職の学び場」について,あるいは学習とキャリアについて考えてみたかったからなのです。

歴史の浅いWeb業界には先人がたどった定年までのキャリアモデルもありませんし,あったからといって役立つとも思えない不穏な世の中。テクノロジーも日進月歩で,目先の仕事をこなすのに覚えなきゃならないことも多いから,自分のキャリアを長い目でみて考えたり行動を起こす機会ってなかなか持てなくはないでしょうか。

ただ,完全なる計画を立てるのは不毛でも,何か早くから考えたり動いておいて損はない,そのほうが「今」ももっと有意義になるという事柄があるんじゃないかと思うのです。そこで,今回の連載です。現場でWebクリエイティブ職を牽引する方々を訪ね歩き,スタッフ育成の考え方や実際の取り組み,ご自身のキャリア観などを伺いながら,長い目でみたWebクリエイティブ職のキャリアや,それを踏まえて今を見直すヒントを共有していければ幸いです。

大前提は「変われる人」かどうか

面白法人カヤックCTO 貝畑政徳氏

面白法人カヤックCTO 貝畑政徳氏

記念すべき第1回は,面白法人カヤックを訪問。同社のCTOを務め,50名におよぶ技術部門を現場で取り仕切る貝畑政徳さんにお話を伺いました。本題に入る前に,そもそもカヤックにはどんな人が集まっているのか,人を採用するときの前提条件を尋ねてみると。

貝畑さん「基本的に共通しているのは,変われる人。素直さを持っている人,聞く耳を持っている人っていうところは,基本的な条件です」

自分の欠点や仕事の落ち度を指摘されたとき,それを素で受け止められる耳を持っていないと,反発したりしょげたりするだけで成長がありません。市場に求められるサービスも,作るための技術も変化していくのは必至だから,変化を好まない人には相当ストレスがかかる仕事…。⁠変われる人」とは,カヤックの入社条件に留まらず,Webクリエイティブ職になくてはならない素養ではないでしょうか。

変われる「素養」「能力」に変える

しかし,こうした「素養」を現場で活きる「能力」に引き上げるには,相応の訓練が必要です。組織のやりようによっては,せっかく持っていた素養をつぶしてしまうことだってある。

カヤックに学びたいのは,素養を開花させる訓練機会が日常の中にふんだんに,意図的に組み込んでいるところ。お話を伺ってみると,精神面も実務面も一緒くたにして実践で「変われる力」を身につけるための仕掛けがわんさか。ルールを敷くのではなく,本人が自立的に身につけていく仕掛けになっているのもポイントです。前編では,この「変われる人」づくりの妙に迫ってみたいと思います。

半年も自分の目標を覚えている人なんていない

最近始めて効果が出ているのが「180度評価」だそう。360度評価は聞いたことがあるけれど,180度評価とはいったい…。まずはその成り立ちと中身について伺いました。

貝畑さん「360度評価を他者評価と自己評価で年2回行うんですけど,それは半年に1回のタイミングなので,半年も自分の目標にストイックに向かい続けられる人は少ないし,半年のスパンでその目標を達成するプランを立てられる人もそうそういない。

180度評価では,360度評価の大目標に対して1週間ごとの小目標を立てていくっていうのをやっています。360度評価は部署もプロジェクトも超えていろいろな人からの評価を受けますが,180度評価はそれよりも少し評価者が身近な人になります。6人ほどが集まり,順番に自分の目標や,それに対して1週間行ったことを5分程度で話します。発表後に,それに対して参加者全員から何かしらのフィードバックをもらう。これを1回のセッション毎週やっています」

放っておいても自ら研究開発するチームをつくる

「180度評価」の最たる狙いは,各自が自分で自分のモチベーションを高めて自己管理していけるチームづくりだそう。

貝畑さん「高い目標を立てる→結果を出す→人から評価される→次の目標を立てるというサイクルは,立てた目標が達成したり,スキルアップすれば達成感を得られるし,他人に認められる満足感もある。目標を立てて達成することって自分にとってものすごく気持ちいいことだという体験をさせることで,自ら目標を生み出すサイクルにもっていくように今チームを作っています。

これが回り始めると,放っておいても自分で研究開発するし,何も言わなくても,他の人がやっていることに対して興味を持つ流れになる。それがスムーズになる仕組みが180度評価です」

180度評価について,イメージと合わせて解説していただきました

180度評価について,イメージと合わせて解説していただきました

スタッフ育成にもマネージャー育成にも有効な「180度評価」

「目標→結果→評価」という簡単なプロセスをあまり意識しないで働いている人は意外と多いと貝畑さん。皆さんも身に覚えがあるのでは……。カヤックではこの仕組みを全社員に導入していて,実際どんなキャリアの人にもそれぞれに有効だそうです。

貝畑さん「そもそも目標が立てられないって人には,目標を立てて達成する楽しさを味わってもらう。もともと一人でものを作って満足できるって人には,そのままではクオリティが上がっていかないよってことで第三者の目を入れた評価が有効に働く。また,これができているって人に関しても,マネージャー視点がもてる機会になります。他のメンバーに高い目標を設定してあげたりフィードバックをしてあげること自体がマネージャーのスキルを身につけることに直結しています。なので,どのポジションの人にとっても効果がありますね」

著者プロフィール

林真理子(はやしまりこ)

株式会社イマジカデジタルスケープ トレーニングディレクター。1996年より一貫してクリエイティブ職のキャリア支援事業に従事。デジタルハリウッドやエン・ジャパンを経て,2005年より現職。Webに関わる実務者を対象に,クライアントの社員研修や個人向け講座の企画コーディネート,カリキュラム設計,教材開発,講座運営,評価などのインストラクショナルデザインを手がける。日本キャリア開発協会認定CDA,日本MBTI 協会認定MBTI 認定 ユーザー。

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