Webクリエイティブ職の学び場研究

第5回 VOYAGE GROUP執行役員CTO小賀昌法氏に訊く(前編)―成長をサポートする仕組みと文化をつくる

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

まずは「経営理念」に共感できるかどうか

価格比較サイト『ECナビ』を主力サービスとして,国内外で多角的にインターネット関連事業を展開するVOYAGE GROUP(ボヤージュグループ)。今回は,同社執行役員CTOの小賀昌法さんにお話を伺いました。

VOYAGE GROUP執行役員CTOの小賀昌法氏

VOYAGE GROUP執行役員CTOの小賀昌法氏

2011年10月1日,ECナビから社名変更したVOYAGE GROUPは,グループ全体の事業ドメインを『インターネット分野における事業開発』と位置づけて,さらなる大海原へと出航しました。昨年には経営理念も刷新。これに基づいてグループ全体の採用基準や人事制度も,小賀さんのほうで統一化を図ってこられたそうです。

小賀さん「これまでは各事業部や子会社に任せていましたが,昨年ぐらいから,全社としてどういう人材が必要なのかとか,その人材を見極めるためのノウハウを私のほうでまとめていまして,今は,グループの統一感が出せてきているかなと思います。また昨年は,私自身も役員として参画し,経営理念の刷新を行いました。SOULとCREEDからなる弊社の経営理念に共感できるかどうか,これが職種問わず第一の採用基準と考えています」

「経営理念」って聞くと,形ばかりの大義名分的イメージをもたれる方もいるかもしれませんが,今回の取材で感じたのは,VOYAGE GROUPの経営理念がとことん現場で体現されていること。それだけに「経営理念に共感できること」は欠かせない採用基準なのでしょうね。今回は,VOYAGE GROUPがどんなふうにSOULとCREEDを現場に展開し,人材採用・育成を実践しているのか,たっぷりお届けしたいと思います。

SOULとCREED

SOULとCREED

「経験」ってあんまり意味がない

職種問わず「経営理念に共感できること」は大前提として,ではエンジニアやWebクリエイティブ職に求めるのはどんなことでしょうか。

小賀さん「エンジニアに対して,経験ってあんまり意味はないよねってことは言っていますね。弊社は『人を軸とした事業開発会社』と謳っています。既存事業もどんどん伸ばしていきますし,新しい事業もどんどん作っていきたい。新しい事業はもちろん,既存の事業であってもこの業界同じことをやっていたら1年後には衰退していくのが見えているので,既存事業を伸ばすのにも当然新しいことをやっていかないといけない。なので,経験というよりは,入ってから新しいことを自ら学び,自ら成し遂げていく人材を採用したいと思っています」

「経験」ではなく「能力」を評価する面接法

とはいえ,選考の場で「自ら学び,自ら成し遂げる」能力を測るのって難しいですよね?どんなふうに評価しているのでしょうか。

小賀さん「面接の場では,職務経歴の話を訊きます。その中で重視しているのは,より具体的に自分のやってきたことを語れるか。『こういうサイトを作りました』とか『こういう技術を作りました』というときに,『あなたは具体的に何をやったんですか?』とか『それを作ったときにどういう考え方をしましたか?』とか,具体的に訊いていきます。

デザイナーであればポートフォリオを見せてもらって,『どんな意図で?』『想定したユーザーは?』『そのユーザーのどんなことを解決しようとしてデザインしたんですか?』といったことを訊きます。そのときに自分の言葉で語れる人っていうのは,自分の頭で考えて物事を進めていける人だと考えて,そこを重視しています。

なので,単純に『大規模開発を経験しました』とかで評価はしません。たとえ小規模であっても,逆にそのほうが個人の裁量が大きかったりするので,その中で考えなきゃいけないことはたくさんあると思っています。そういったところを自分で考えて,アウトプットしている人。そこを評価したいと思っています。知識があるなしじゃないですね,それは。

また技術的なところで言うと,弊社ではいろんなプログラミング言語を使っていますが,たとえば採用部門の開発環境がRubyだったとしても,Rubyの経験が2年以上とか,Rubyの経験がないとダメっていうふうにはしていないですね。そのかわり,1つの言語をきちんと自分の道具として使いこなせることを重視します。ちゃんと1つの道具を使いこなせている人は,他の道具にスイッチするときにコストが低いだろうと考えるからです」

経験をひも解いて,能力を導き出す

過去の経験を,規模の大小/期間の長短/項目の多少だけで捉えず,結果までのプロセスを丁寧にたどって,「その過程で発揮された能力」「その経験によって身についた能力」を評価する。そして何より重視するのが,それを自分の言葉で語れるかどうか。そこにこそ,「自ら学び,成し遂げる姿勢」が感じ取れるし,「過去の経験を再現性あるスキルとして昇華しているか」「自分の中に定着させられているか」も見えてくるわけですね。また,今ある能力が「今後どんな応用可能性をもつか」も重要なポイント。広く浅くプログラミング言語を知っているより,1つの言語を深く習得していることを求めるという見方は,その好例ですね。

選考場面では必ず過去の経験を訊かれるものですが,「経験をもとに能力をみている」,この関係を見誤っちゃいけないですね。経験を説得材料に,自分の獲得している能力や今後の可能性を示せなければ,成功体験を話すこと自体に本質的価値はないし,それが伝えられれば過去の失敗体験だって十分アピールになるはずです。

と,なんだか面接ノウハウみたいな話になってしまいましたが,1つのプロジェクトが終わった節目などにも,そのプロセスを丁寧にたどって自分の発揮・獲得した能力を言葉に表してみたり,それが今後どんなふうに応用・発展させられるか考えてみることは,とても有意義だと思いますよ。

著者プロフィール

林真理子(はやしまりこ)

株式会社イマジカデジタルスケープ トレーニングディレクター。1996年より一貫してクリエイティブ職のキャリア支援事業に従事。デジタルハリウッドやエン・ジャパンを経て,2005年より現職。Webに関わる実務者を対象に,クライアントの社員研修や個人向け講座の企画コーディネート,カリキュラム設計,教材開発,講座運営,評価などのインストラクショナルデザインを手がける。日本キャリア開発協会認定CDA,日本MBTI 協会認定MBTI 認定 ユーザー。

バックナンバー

Webクリエイティブ職の学び場研究

バックナンバー一覧

コメント

コメントの記入