Webクリエイティブ職の学び場研究

第9回 NHN Japan執行役員/CTO 池邉智洋氏に訊く(前編)―「放置」と「無茶ぶり」の裏に隠されたNHN Japan流の学習環境

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3.5 分

NHN Japanといえば,⁠ハンゲーム」⁠NAVER」⁠livedoor」を展開する国内最大手のインターネット企業。2012年1月1日には,ネイバージャパン,ライブドアと経営統合し,今後さらなるパワーアップが期待されています。今回は同社を訪問し,ライブドアの前身,オン・ザ・エッヂ時代から技術部門を支えてこられた現NHN Japan 執行役員/CTOの池邉智洋さんにお話を伺います。技術力に定評がある同社ですが,⁠研修はほとんどやらない」職場環境。⁠放置」「無茶ぶり」の裏側に,どんな人材育成の仕組みが隠されているのかを探ってきました。

NHN Japan 執行役員/CTOの池邉智洋氏

NHN Japan 執行役員/CTOの池邉智洋氏

大前提は,独特の「Webの空気感」をわかっている人

はじめに,そもそも採用段階でどんな人を採用し,どんな集団を形成しているのか,Webクリエイティブ職の選考で重視しているポイントを伺いました。

池邉さん「最近はSIerの方など,Web業界以外からの応募も割と多いんです。それはまったく問題ないんですが,インターネットとかWebが好きで,ユーザとしてもちゃんと使っていないと,入社しても難しいのかなぁとは思っています。Web業界って歴史は浅いんですけど,独特のWebの空気感みたいなものはある気がしていて,そこをまったく知らずビジネスライクにこなそうと思っても,技術力とは別の部分で難しいことが多いのかなと。ですから,そういうところは気にしていますね」⁠

独特の「Webの空気感」に触れているかどうかは,応募時の自己PRの仕方や,面接時のコミュニケーションなど,選考中の何気ないふるまいにも表れているようです。

池邉さん「簡単に言うと,自己PRの中に普通にソーシャルメディアの情報が書いてあるとか,⁠ブログにこんないいこと書いているので見てください⁠と送ってくるとか。一方で,職務経歴書にずらずらーっと職歴が並んでいて,⁠これ,何やったんですか?⁠って訊くと,⁠いや,守秘義務が…⁠って返ってくると(苦笑)⁠サブジェクトだけ見ると,ちゃんとやってるんだろうなっていうのはわかるんですけど,ちょっとねぇと思うところはあります。

開発職であれば,ちゃんとコードを見たいと思っているので,キャリアのある方でGitHubとかにコードをあげていれば,そうしたものを提示していいと思います」⁠

選考時に何を使ってどこをアピールするか,さまざまなところからその人が「Webの空気感」にどれくらい馴染んでいるかは伝わってくるものですね。

採る人は,画一化していないほうがいい

「インターネットとかWebが好きで,ユーザとしてもちゃんと使っている人」は大前提として,もう1つ採用時に気にかけているポイントを伺いました。

池邉さん「個人的には,人が画一化していないほうがいいと思っています。いろんな考え方の人とか,いろんなバックグラウンドの人がいて多様性があったほうが,生き残れるんじゃないかなと。世の中の状況もいろいろ変わっていきますし。ですから,割といろんな人を採りたいっていうのはあります」⁠

「結果的に」ではなく,⁠意識的に」人材を散らしているところが興味深いですね。

1つのサービスを育てる人,傭兵的に渡り歩く人

NHN Japanでは現在,全社員の約4割がエンジニア,デザイナー,マークアップなどの開発業務に携わっているそう。サービスの開発体制は「企画・ディレクター/エンジニア/フロントエンド側のマークアップエンジニア/デザイナー」とオーソドックスな構成。サービス規模に応じて,3~10人超のチームを組織して開発にあたっています。

過半数の人は1つ(あるいは2つ)の担当コンテンツをもって開発にあたっているそうですが,全員が全員,特定のコンテンツを担当しているわけでもないのだとか。

池邉さん「愛情をもって1つのコンテンツをやれる人もいれば,そうなると⁠飽きたわー⁠とか言い出す人もいるんですよね。ただ,⁠飽きたわー⁠とか言い出す人は,逆に名もない荒れ地みたいなところを突っ走れたりもするので,それはそれでいいと思っています。

Webの開発って,⁠開発⁠と言いつつ実は開発の部分が少ないと思っていて,とくに我々のようなコンシューマ向けだと,オープンさせてから開発するというか,運用面のことが非常に多い。それが毎回毎回派手で面白いかというと,むしろそうではない施策が当たったり,ユーザを増やすには大事だったりする。そこはほんとに,性格的に向く向かないがあるかなぁと思っています。

ですから,向かない人は1つのコンテンツを担当するのではなく,傭兵のように各コンテンツを渡り歩いて必要なところを手伝っていく。新しいもののノウハウは,割とその部隊が蓄積しています。もちろん新しいものなので大変な目に遭うこともあるんですけど(笑)⁠そこで得たノウハウを各コンテンツの担当の人たちに引き継いでいくことで,コンテンツ担当側は同じ失敗をしない,というふうにまわしています」⁠

サービス志向と技術志向,どちらの人材も活かす

多様な人材を採用していることが,ここで活きてくるわけですね。⁠画一的に人を採らない」で終わらせず,⁠画一的に仕事を割り振らない」⁠採用と現場に一貫性があるからこそ,多様な人材が活きてくる。いろんな考え方/バックグラウンドの人材を採ったところで,画一的な仕事の振り方しかできなければ宝の持ち腐れになりかねない。これは肝に銘じておきたいところ。

池邉さん「エンジニアの仕事へのアプローチって,サービス面からアプローチする人と,技術面からアプローチする人がいると思っているんです。前者は,まずサービスがあって,それをどう技術を使って伸ばすかを考える。後者は,この技術を使いたいとか,こういう技術があるとこのコンテンツでこういう面白いことができそうだとか考える。弊社の場合,バランス的にはサービス面からアプローチする人が多いと思いますが,どちらからのアプローチもあってよくて,そこのバランスをうまく調整できるのがいいのかなぁと考えています」⁠

著者プロフィール

林真理子(はやしまりこ)

株式会社イマジカデジタルスケープ トレーニングディレクター。1996年より一貫してクリエイティブ職のキャリア支援事業に従事。デジタルハリウッドやエン・ジャパンを経て,2005年より現職。Webに関わる実務者を対象に,クライアントの社員研修や個人向け講座の企画コーディネート,カリキュラム設計,教材開発,講座運営,評価などのインストラクショナルデザインを手がける。日本キャリア開発協会認定CDA,日本MBTI 協会認定MBTI 認定 ユーザー。

バックナンバー

Webクリエイティブ職の学び場研究

バックナンバー一覧

コメント

コメントの記入