読者の質で広告媒体としての価値を高める雑誌
低迷が続いている雑誌業界だが,1996年までは右肩上がりであった。落ちてしまった要因の一つは1995年に商用化されたインターネットである。興味を持ったら,まずはサーチ(検索)するという消費スタイルが定着,2002年頃から急速に普及したブログやSNSによってニーズに即した情報が容易に得られるようになった。現在,不特定多数を対象とした総合誌などはUGC(User-Generated Content)系のネットコンテンツと競合しており,かなり厳しい状況にある。
例外は,女性誌だ。コンビニの雑誌コーナーをのぞいてみよう。棚の半分ちかくを女性ファッション誌などが占めている。新雑誌の創刊も相次ぐ。3月に小学館の「AneCan」や集英社「marisol」,世界文化社「GRACE」の三誌,4月には日経ホーム出版社の「EW」が創刊された。なぜ,女性誌に勢いがあるのか?
参考情報として各誌のキャッチコピーとターゲット(読者層)を記載しておく。
- AneCan:お姉さん版CanCan[対象:25歳以上]
- marisol:ワーキングビューティのための新ファッション誌[対象:30後半~40代]
- GRACE:優雅な美しさ”グレース”[対象:40代]
上記の内容を読み解くと,ビジネスとして成功するための重要なポイントが見えてくる。簡潔に言えば,「購買力のある読者を獲得」,「広告媒体としてのプレステージを確立」,「広告収入モデルで成立する雑誌作り」となる。つまり,読者の数ではなく「読者の質」で広告媒体としての価値を高め,安定した広告収入で運営するのである。marisolとGRACE,EWの価格は730円,AneCanは620円という安さだ。定価以上の制作費で維持していく場合,販売収入だけでは難しい。
女性ファッション誌に掲載される広告の多くは,それ自体がエディトリアルデザインのクオリティを持っている。雑誌のなかにあっても違和感のない上質なビジュアルページになっているため,読者の楽しみの一つとして成り立っているのである。このような「雑誌のカタログ化」に陥らない編集ノウハウも必要になってくるだろう。
無料で提供されるWebサイトと雑誌
広告モデルの事例として,4月20日にオープンしたばかりの会員制サイト「ベビペディア」を紹介しておこう。「ベビペディア」は,妊娠中の女性などに役立つ情報を提供するサイトである(財団法人 母子衛生研究会と株式会社ザ・ネット・プランが運営)。携帯電話からも利用できる。また,サイトと連動した雑誌も今月21日に発刊される。雑誌は企業からの広告収入で制作費を賄い,全国の産科医院などを通じて無料配布される(毎号10万部ほど)。Webサイトと雑誌は無料で提供しつつ,読者のビヘイビアで広告媒体としての価値を高めているわかりやすい事例だ。
電通によるネット広告費の2007年試算では24.9%増の4534億円となる見通しで,雑誌広告を上回る。雑誌広告費がネットに流れるなか,加速する収益モデルの変化に対応し,雑誌媒体がいかにネットを取り込んでいくかが今後の分かれ目になりそうだ。
富裕層向けのハイクオリティ・ウェブマガジン
前回,3月24日に創刊された男性向けのファッション誌「zino(ジーノ)」を紹介した。実は,女性誌には及ばないが中高年向けの男性誌も相次いで創刊されている。この分野で代表格の主婦と生活社「LEON」を始めとして,昨年創刊された幻冬舎の「GOETHE」,インターナショナル・ラグジュアリー・メディアの「OCEANS」など,とても勢いがある。各誌に共通しているのは,富裕層が読者ターゲットになっていることである。新参の「zino」は,LEONの編集長だった岸田一郎氏による新雑誌で,さらに高い読者層(年収2000万以上)をメインターゲットとしている。

