デジタルブランドマネジメント

第9回 ウェブデザインヒアリングシート―ヒアリングが果たす重要な役割

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クライアントの理不尽なフィードバックはどのように回避できるのでしょうか? プロジェクトの目的が途中ですり替わったり,担当者の気分でデザインがひっくり返るような事態を防ぐにはどうすべきなのでしょうか? 多くの場合,これは製作者側やクライアントの能力の問題ではなく,事前の合意が不足していたことが原因です。

クライアントが初めから自らのニーズを完全に把握していることはありません。そのため,制作過程に気付いたことをその都度,要求してくるのです。ヒアリングを通じて,クライアントニーズをプロジェクト開始時点で正確に割り出すことは,デザインプロセスの最も基本的なステップです。

ステークホルダー

まずはウェブサイトを誰に向けて作るべきかを定義します。クライアントのビジネスによっては潜在顧客ではなく,卸先のビジネスパートナーや求職者が最も重要な対象となるかもしれません。重要なステークホルダーを定義する際には,その相手がウェブサイトで何らかのアクションを行わなければ,クライアントのビジネスが大幅に失速する状況を想定します。それが潜在顧客からの問い合わせなのか,ビジネスパートナーからの信頼獲得なのか,求職者からの応募なのか。ビジネスにクリティカル(致命的)な影響を与える相手を必ず選びましょう。

ターゲット特性

次にコミュニケーションを行う相手の特性を定めていきます。対象となるステークホルダーが複数存在する場合はその都度行ってください。年齢や性別,就業状況などの基本的なデモグラフィックだけでなく,価値観やライフスタイルなどのサイコグラフィック,購入頻度,購入理由などの購買行動について聞き出します。ターゲットの特性を明確にすることで,目的のアクションを起こさせるために必要なコミュニケーションの仮説を立てることができます。

競合ブランド/商品

ターゲットが比較検討するであろう競合ブランドをリストアップします。後にクライアントのブランドの独自性を割り出し,適切なコミュニケーションを考える際に必要となります。

ブランド/商品について

ウェブサイトのコミュニケーションを考える上で最も重要なのが,⁠クライアントとなるブランド/商品の理解です。しかし,クライアント自身も完全に担当するブランドを理解していないことが多々あります。それぞれの項目をしっかり話し合い,合意をしていきましょう。まずはブランドが抱える問題について聞き出します。⁠需要がない」などの根本的なものから,⁠ブランド体験」「クチコミ」などの販売後のものまで,ブランドが抱える問題は様々です。現時点で解決すべき,最も重大な問題を見つけましょう。

次に,ブランドが競合と最も異なる特徴について聞き出します。すべてのブランドにとって,独自性こそがアイデンティティの核であり,コミュニケーションの起点となります。特に,競合が簡単に得ることができない特徴にフォーカスすることで,参入障壁を築くことができます。その独自の特徴によって,ターゲットに提供するベネフィットを選定します。ベネフィットには主に6つのカテゴリーが存在し,1つの特徴で複数のベネフィットを提供することも可能です。また,ターゲットの信頼を獲得するために,ベネフィットの提供を証明できる情報もコミュニケーションに含める必要があります。できるだけ多くの情報を聞き出しましょう。さらに,現在クライアントがマーケティング活動を行う際に最も重視しているブランドの強みを聞くことで,相違が無いかを確認します。

ウェブサイトの設計を行う際に,活用できるアセットについて聞き出します。マスメディアのサポートや商品パッケージからの流入,キャンペーンの運用リソースなど,クライアント側から提供してもらえるものはすべて活用しましょう。

ウェブサイトのデザインを行う際にはブランドイメージのドキュメントやガイドラインが必要です。⁠既存のウェブサイトを参考に」など,不明瞭な状況ではブランドを正しく伝えることはできません。存在するすべてのドキュメントの手配を要求しましょう。デザインの一貫性を保ち,不要なワークロードを削減するためにも,他チャネルの広告クリエイティブも要求します。もちろん,ロゴやフォントなど,ブランドアイデンティティの基本要素もデータで要求しましょう。

デザインのフィードバックや改善プロセスを構築的に行うために,ブランドパーソナリティに対する合意は不可欠です。ウェブサイトの様々なクリエイティブ要素がどのようなイメージをターゲットに抱かせるべきなのかと言うことさえ明確であれば,クライアントの主観的な「好み」によってデザインが変更されるようなことはなくなります。

プロジェクトゴール

最後に,プロジェクトの目的と数値目標について合意します。具体的な成果指標については設計プロセスの中で何度か確認を行いますが,ヒアリングの段階で測定可能な目標に合意できれば,プロジェクトの方針を変更せずに進めることができます。

プロジェクトを成功させるためには参加者全員が目的やコミュニケーションに対し,様々な合意を得ておく必要があります。以下のヒアリングシートはウェブサイトを制作する際に必要な情報をクライアントから引き出せるよう設計されています。ヒアリングシートには主に2つの機能があります。1つはウェブサイトが達成すべき目標を定めること。そして,もう1つはブランドに適したコミュニケーションを定めること。これらのポイントに対し合意を得ることで,プロジェクト期間中の混乱や,主観的な判断によるミスを防止することができます。プロジェクトを開始する前に,ターゲット,目的,コミュニケーション,そしてブランドイメージを明確化し,効率的なプロジェクト運営を心がけましょう。

著者プロフィール

荻野英希(おぎのひでき)

デジタルマーケティングエージェンシー,FICC inc. 代表取締役社長。
デジタルがブランドをどのように強化し,その役割はブランド毎にどう異なるのか? デジタルブランドマネジメントの仕組みを検証する。

URLhttp://www.ficc.jp/

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