デジタルブランドマネジメント

第30回 デジタルマーケティングのコミュニケーションデザイン

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多くのタッチポイントを連携させ,ターゲット毎にメッセージを最適化するような,複雑なデジタルマーケティング施策を成功させるためには,綿密なコミュニケーションデザインが必要になります。コミュニケーションデザインはユーザーの態度変容を起こすために最適なメッセージとタッチポイントを洗い出し,施策やクリエイティブの指針となるプランを作りあげる作業です。態度変容を起こすためには,まずターゲットとなるユーザーがどのようなパーセプション(認識・視点)を持っているかを正確に理解しなければなりません。正確なパーセプションの理解が無ければ,メッセージがユーザーに刺さることはなく,マーケティング活動への投資が無駄になります。このパーセプションの変化を正確に定義することがコミュニケーションデザインにおいて最も重要なポイントです。

認知から購入,クチコミまでの購買行動におけるユーザーの態度変容プロセスはとても複雑です。タッチポイントの可能性も無数にあり,順を追って接触するとも限りません。競合や流通環境など,コントロールできない外的要因にも大きく左右されてしまいます。しかし,次に示した単純化されたフレームワークを用いれば,購買行動の重要なポイントはカバーすることができ,コミュニケーションデザインのベースを作ることができます。

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この図はユーザーの態度変容により,行動が大きく変化するポイントを5ステップで表したものです。関心・興味・購入・リピート購入・クチコミのそれぞれの段階で,パーセプションを正確に定義し,適したメッセージやタッチポイントを洗い出しましょう。

ATTENTION ─⁠─ 関心

先ずは商品に関心を示す「可能性」があるユーザーをターゲットとします。この段階のユーザーは現状に対する不満や,商品に対する積極的な興味はありません。人は何かを改善することよりも,目の前の問題を解決するために動きます。そのため,コミュニケーションの目的はユーザーにベネフィットを理解してもらうことではなく,解決すべき問題や,何らかの潜在的な損失を感じてもらうことになります。

ユーザーのパーセプションを正確に理解するために,一人称の言葉で「◯◯だから,まだ新しい◯◯は必要ない」など,現状に不満がないリアルな理由に定義しましょう。メッセージはストレートに問題を定義するものである必要はありません。現状に何らかの不満を感じさせ,新たなソリューションを求めてもらうために何を伝えるべきかを考えましょう。

商品に未だ興味を持っていないユーザーにリーチするため,タッチポイントは必然的にPRや広告などになります。

INTEREST ─⁠─ 興味

次はユーザー自身が抱えている問題を認識し,PRや広告に反応したユーザーへのコミュニケーションを考えます。この段階のユーザーは未だ特定の商品やブランドに対する購買意欲を持っている訳ではありません。商品に対する興味を持たってもらい,購入を検討してもらうためには,ユーザーが①問題を解決するソリューションに共感し,②当該商品が最適な選択肢であると理解し,③その根拠を信頼する必要があります。

タッチポイントはユーザーが情報を積極的に得ることができるコンテンツ,Webサイトやキャンペーンなどになります。

PURCHASE ─⁠─ 購入

ユーザーが商品に興味を持ち,検討をしてくれたとしても,必ず購入に至るとは限りません。この段階ではコストやデメリット,リスクなど,購入に対する何らかの抵抗を感じている可能性があるため,それらを払拭し,購入を後押しすることが目的になります。

パーセプションでは購入に至らないすべての理由を,正確に書き出しましょう。メッセージはネガティブなバリアを払拭するものだけでなく,購入するメリットや,購入をしなかった場合の機会損失などを伝え,行動を促します。

タッチポイントは購入直前のコールトゥアクションや,Eコマースの商品ページ,パッケージ,店頭POP,バナー,メール,クーポンなど様々なものが考えられます。

LOYALTY ─⁠─ リピート購入

一度商品を購入し,その体験に満足したユーザーからは,新規顧客に比べ,比較的低コストで購入を獲得することができます。ポジティブな体験を想起させ,より多く,高頻度な購入のメリットを伝えましょう。

パーセプションでは具体的に何に満足したのかを定義します。このパーセプションは実際の体験に基づいているため,商品・ブランド名に対するつぶやきなどから見つけることも可能です。メッセージは商品のベネフィットや,再購入のメリットにフォーカスしましょう。

タッチポイントは購入者への再接触が可能なリターゲティングバナーや,メール,クーポンなどなります。

ADVOCACY ─⁠─ クチコミ

ユーザーが一度商品を購入し,その体験に満足したとしても,必ず知人に勧めてくれるとは限りません。自発的なクチコミは商品体験が期待を大きく超えた時に発生しますが,大体のユーザーの気持ちはそこまで強くありません。ポジティブな商品体験を誰かに伝えたいと思わせ,クチコミをしてもらうためには積極的にインプットを求めることで,ユーザーに自らの発言に価値や影響力を感じてもらう必要があります。主張が求められていると感じてもらうことで,商品に対する満足をポジティブなクチコミへ変えることができます。

タッチポイントは購入者と接触し,インプットを獲得できるメールやアンケート,レビューやソーシャルメディアのシェアなどになります。


パーセプション,メッセージ,タッチポイントを洗い出す事ができれば,具体的な施策の設計やグラフィック制作を開始することができます。ここで,クリエイティブに対する合意形成を図るために,各段階のコミュニケーションで最も強調すべきポイントを定義しましょう。これらのポイントはユーザーの理解と記憶に大きな影響を与えるビジュアルで表現をします。ユーザーの注意を引き,より多くの情報を正確に伝え,感情すら抱かせることができるビジュアルはコミュニケーションに欠かせません。各段階で最も伝えたいポイントを定義し,イメージの選定や,グラフィック制作の指針としましょう。

著者プロフィール

荻野英希(おぎのひでき)

デジタルマーケティングエージェンシー,FICC inc. 代表取締役社長。
デジタルがブランドをどのように強化し,その役割はブランド毎にどう異なるのか? デジタルブランドマネジメントの仕組みを検証する。

URLhttp://www.ficc.jp/

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