デジタルブランドマネジメント

第35回 ブランドはどのようにデジタルに投資すべきか

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高いマーケティングROIを受け,いくつかのブランドがデジタルマーケティングに積極的な投資を続ける中,他の多くは遅れを取り,マスメディアからマーケティング予算のシフトを躊躇し続けています。長期的なビジョンと,積極的な投資がなければ,デジタルに精通したブランドとのギャップは更に広がり,デジタルマーケティングを軌道に乗せることは難しくなるでしょう。

ブランドが積極的なデジタル投資に踏み切れない理由はいくつかあります。デジタルに精通した人材や,エージェンシーの能力不足は一般的な問題ですが,最も深刻な問題は適切な予算の配分にあります。デジタルからのリターンを期待する前に,ブランドはどのように投資を行うべきかを理解する必要があります。

信頼できるインフラ,モバイルデバイスへの対応,データマネジメント,データ分析,ソーシャルリスニング,ウェブサイトのメンテナンス,ソーシャルメディアマネジメント……投資を必要とするデジタルの課題はとても多く,数え上げればきりがありません。マーケティング担当者が投資を行う場合,広告宣伝費の中での対応か,新たな設備投資予算の獲得という選択を迫られます。前者は既存のマーケティング予算のROIや,自身の評価に影響を与えてしまいます。後者は社内稟議に多くのリソースを消耗するだけでなく,企業の利益を圧迫してしまいます。結果,多くのブランドは長期的な視点でのデジタル投資を避け,不完全なツールやプラットフォームの環境により,効果的なデジタルマーケティングを実行できずにいるのです。

今こそ,デジタルに対する投資を組織全体で見直すべきタイミングです。広告宣伝費の枠を超え,投資の長期的な効果・効率性を精査するためには,マネジメント層の参加も欠かせません。消費者の情報環境が大きくデジタルへとシフトした今,もはや実験的なマーケティングを行っている場合ではありません。ブランドはデジタル上のユーザー体験を正しく理解し,最適化をするために,速やかに積極的な投資を実現する必要があります。

モバイル最適化

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多くのウェブサイトでは既に半分以上のトラフィックがモバイルデバイスを経由しています。そして,モバイルに最適化されていないウェブサイトからは76%のユーザーが離脱すると言われています。1ユーザーのライフタイムバリューを考えれば,これがどんなブランドにとっても重大な機会損失となることがわかります。消費者は,今やどんな情報も瞬時に入手することができ,低いユーザビリティを容認することはありません。消費者にリーチするウェブサイトは必ずモバイルデバイスに最適化されている必要があります。

分析とレポーティング

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今では大きなコストを掛けずに,膨大な消費者の情報をデジタル施策から得ることができます。Google Analytics(またはUniversal Analytics)を適切に設定すれば,ユーザーの行動やデモグラフィックを細かいセグメントと掛け合わせ,コミュニケーションやタッチポイントの改善に役立つデータを簡単に得ることができます。ダッシュボードや自動レポートを活用すれば業務不可を軽減できるだけでなく,価値あるデータを広く組織に浸透させることができます。マーケティングの意思決定に影響を与えるビジネス指標を明確にし,データが自動的に収集・報告されるよう分析ツールを設定すべきです。

タグ/データマネジメント

様々なデジタルチャネルから,データの収集を可能にするためにはそれぞれに適切な集計タグが付与されていなければいけません。また,マーケティング活動の横断的な分析を可能にするだけでなく,効果的なリマーケティングやCRMを可能にするために,ユーザーのデータは1つのプラットフォームに集約し,管理する必要があります。

Eコマース最適化

多くのブランドにとってEコマースは最も成長率の高いセールスチャネルです。Amazonなどの大手Eリテーラーが収益の10%以上を占めることもあり,強いブランドプレゼンスの確立はどのブランドにとっても重要課題です。そのため,売上を左右するEコマース用のコンテンツには,広告クリエイティブ同様の注意が必要です。ファインダビリティの最大化のために,商品タイトルにブランドやカテゴリー名を記載します。モバイルでの閲覧を優先し,テキストを簡略化し,ユーザーが商品を様々な視点から見れるよう複数の画像を掲載します。サイズやフレーバーのようなバリエーションは1つのアイテムにまとめ,セールスボリュームやレビューを集中させます。Eコマースは店頭同様,購入までの唯一のタッチポイントである可能性があるため,単に製品スペックを伝えるだけでなく,商品のベネフィットや,ブランドの特徴などを多くの画像や,映像を含めて紹介しましょう。Eコマースでのブランドプレゼンスの最適化は,新規ユーザーの獲得を目的としたメディア施策などよりも大幅に優先されるべきです。

人材

組織は何よりも先に,人材に投資をする必要があります。特にデジタルマーケティングのプロジェクトでは,メディア費などよりも,コンテンツ制作やテスト,分析など,多くの人的な工数がかかります。マネジメント層は長期的なROIの向上のために,デジタルマーケティングをパートタイムな責任やポジションとせず,フルタイムのチームの採用にコミットする必要があることを理解しなければいけません。デジタルメディアへの支出などは,適切なチームやインフラが確立されるまで最小化し,優秀な人材の獲得へとまわすべきです。

デジタルマーケティングに遅れを取っているブランドは,最新のトレンドやデジタルメディアへのは闇雲な投資を控えるべきです。代わりに長期的なビジョンを開発し,現在の環境の再評価を行い,適切なデジタルマーケティングの基板に投資を行う必要があります。効果的なデジタルマーケティングを行うために,先ずは環境とチームの整備を最重要課題としましょう。

著者プロフィール

荻野英希(おぎのひでき)

デジタルマーケティングエージェンシー,FICC inc. 代表取締役社長。
デジタルがブランドをどのように強化し,その役割はブランド毎にどう異なるのか? デジタルブランドマネジメントの仕組みを検証する。

URLhttp://www.ficc.jp/

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