デジタルブランドマネジメント

第47回 データ分析に基づくマーケティングプラン

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今ではどんな企業も詳細な消費者のデータを簡単に入手できます。しかし,データが利用可能であるにもかかわらず,多くのマーケターはいまだ主観的にマーケティング施策のプランニングを行っています。手元のデータや少しの調査で得られるデータを分析し,客観的なプランニングに役立てることができれば,大きくマーケティング効果を向上させ,ワークロードを軽減できるのではないでしょうか。

マーケティングプランを作るためには「誰に」⁠何を」⁠何時」⁠何処で」伝えるために,⁠いくら」投資すべきかという質問に答えなければなりません。これらの問いに合わせて,適切なデータを正しい順で取得していくことができれば,客観的なプランニングが可能になります。

セグメンテーションとターゲティング

マーケターにとって最も不確実性が高く,施策の成功を左右する要素は「顧客」です。そのため,顧客の徹底的な理解こそがプランニングにおける最も重要なポイントであると言えます。主観的に,年齢や性別などのデモグラ属性でターゲットを定義するのではなく,まずは顧客全体のセグメンテーション(分類)を行い,ターゲティング(選定)すべき顧客層を見つけ出します。例えば,該当する製品カテゴリーやブランドの購買行動を軸にセグメンテーションを行った場合,セグメント毎に目的とする行動変容を分けることができます。

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  • 右上(高カテゴリー×高ブランド)⁠知人に勧めてもらう
  • 左上(低カテゴリー×高ブランド)⁠カテゴリー消費量を高めてもらう
  • 右下(高カテゴリー×低ブランド)⁠ブランドスイッチをしてもらう,購入頻度を高めてもらう
  • 左下(低カテゴリー×低ブランド)⁠トライアル購入をしてもらう

これらのセグメントに含まれるユーザーを様々な視点から分析し,商業的な魅力,広告反応への見込み,十分な規模のあるセグメントをターゲットとします。そのセグメントに含まれるユーザーの代表的な特性をピックアップし,ペルソナ(架空の人物象)にまとめあげます。ターゲットが既に購入している競合ブランドは,ビジネスソース(収益源)となる可能性が高いため,同様の分析を行うべきでしょう。

ポジショニング

顧客の理解の次に大切なのは商品の訴求軸です。マーケティング施策を成功させるためには,顧客と商品のマッチングを行います。これには市場のニーズを(独自性の強い)商品特性に合わせる方法と,商品の訴求軸を市場のニーズに合わせる方法があります。後者の場合は,複数の訴求軸をテストすることで,特定のセグメントに効果的な訴求を見つけ出すことができます。デジタルでは個人レベルで広告の配信を分け,その反応を測定できるため,実環境でのテストが重視されがちです。しかし,この考え方には次の2つの問題があります。

  • 実際に広告を配信するコストがかかる
  • 反応しないユーザーを分析することができない

テストの目的は複数の選択肢の中から効果的でないものを棄却することだけでなく,できるだけ多くの改善に役立つ仮説を導き出すことです。そのため,少数(0.1%)が購買に至った理由だけでなく,大半(99.9%)が購買に至らなかった理由を分析する必要があります。仮説を基に複数の訴求軸とメッセージを作成し,ターゲットがターン・オフ(興味をなくす,嫌気を指す)と感じるポイントを洗い出すことで,ターゲットに最大限効く訴求軸を見つけることができます。

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タッチポイント

デジタルには様々なタッチポイントが存在し,無闇に選定をしてもターゲットとの接触は見込めません。効果的なマーケティングを実現するためには,ターゲットが日常的に利用するアプリ,SNS,Webサイト,利用時間と時間帯,購買行動に対する影響力を知る必要があります。正確な把握は決して簡単ではありませんが,実利用データやアンケート調査など,様々なデータソースを組み合わせることでターゲットの日常を割り出すことができます。

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KPI

マーケティング施策では通常投資額を上回る回収が求められます。E-コマースやダイレクトレスポンスの効果測定は比較的簡単ですが,消費財など,主にオフラインで購買される商材の場合は直接的な影響を完全には計測できません。投資額の算出や効果測定を行うためには途中経過の達成度を測るKPI(中期指標)が必要になります。まずは購買行動を計測可能な段階(認知・興味・購入・再購入・推奨)に分解し,ユーザーの分布を確認します。購買行動の段階毎のユーザー数の減衰率,購買人口におけるターゲットの割合,ビジネス目標の達成に必要となる成長率,そして平均顧客生涯価値。これらの数値を算出し,掛け合わせることで,KPIと適切な投資額を算出することができます。

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上記のデータ分析を行うことで,マーケティングプランのベースを作ることができます。これらのデータは決して入手困難なものではなく,すでに手元にあるものかもしれません。もはや勘や経験だけを頼りに,主観的なプランニングを行う理由は何一つありません。利用可能なデータを分析し客観的にマーケティングプランを組み立てましょう。

著者プロフィール

荻野英希(おぎのひでき)

デジタルマーケティングエージェンシー,FICC inc. 代表取締役社長。
デジタルがブランドをどのように強化し,その役割はブランド毎にどう異なるのか? デジタルブランドマネジメントの仕組みを検証する。

URLhttp://www.ficc.jp/

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