HDRで広がる写真の世界~一味違った写真を楽しもう

前編:HDR写真って何?

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2014年8月,技術評論社よりHDR写真 魔法のかけ方レシピが発売されました。本書は日本で初めてHDR写真をテーマにした本です。

すでにHDR写真に興味がある方はもちろん,ちょっと良いデジタルカメラを持っているけどただ写真を撮るだけじゃ面白くない,自分の写真に何となく満足がいかない,写真でいろいろ遊んでみたい……そんな方を対象に,ちょっとニッチな分野だけどHDR写真の専門書を執筆しました。

前後編の本連載では「そもそもHDR写真とは?」「HDR写真ってどのようにつくるのか?」を簡単に解説していきます。

HDR写真の世界に興味を持ってもらえる方が少しでも増えれば嬉しく思います。

HDR写真とは?

ハイダイナミックレンジ合成(英語:High Dynamic Range Imaging,略称:HDRI,HDR)した写真のことで ,1枚の画像の中で白トビや黒つぶれを無くして,明るいところと暗いところを同時に階調を残して表現することができる写真の表現技法です。

iPhone 4からカメラの標準機能として「HDR撮影」が搭載されているのはご存知だと思いますが,HDR写真を簡単に説明すれば,「暗い写真と明るい写真を別々に用意し合成していいとこ取りする」というものです。

ダイナミックレンジとは,カメラのイメージセンサーが感じとることができる.「最も明るい部分と最も暗い部分の範囲」のことを指します。

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カメラのダイナミックレンジの狭さを補うためにあるのがHDRという写真の表現技法です。

人間の眼はカメラよりもずっと優秀で,明るいものと暗いものを見分ける能力があり,カメラで捉えることのできるダイナミックレンジよりずっと多くのものが見えています。私たち人間が見る風景には白飛びも黒つぶれも無いはずですよね。

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たとえば上の写真だと,外の景色は鮮明ですが屋内の壁は真っ黒です。

測光基準を窓の外に合わせて撮影したものですが,カメラがとらえることができるダイナミックレンジの幅には限界があるため暗い部分の階調が失われて「黒つぶれ」しているのがわかります。

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同じ景色のこの写真では,測光基準を屋内の四角い石に合わせて撮影していますが,窓の外は真っ白になってしまい「白飛び」しています。

このように,カメラのダイナミックレンジを超えた暗さ(屋内)は黒つぶれしてしまい,カメラのダイナミックレンジを超えた明るさ(屋外の景色)は白飛びしてしまうのです。

これは決して写真の腕が悪いわけでもカメラの性能が悪いわけではありません(厳密にはカメラの性能でダイナミックレンジも多少変わってきますが)。デジタルカメラで記録できるダイナミックレンジには限界があるため,景色の中のどちらかの明るさを優先してしまうと,どちらかは階調の表現ができずに「飛んで」しまうのです。

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そして上の写真は同じ景色をHDR写真として作成したものです.窓の外の白とびと屋内の黒つぶれが復元できました。

つまりHDR写真とは,カメラのダイナミックレンジの狭さを補うために,1つの風景をシャッタースピードを変えて異なる露出で写真を撮影し,一枚の画像に合成することによって,画像の持つダイナミックレンジの幅を最大限に引き出すことができるというものです。

写真の合成にはHDR写真作成ソフトを利用しますが,ソフトの「トーンマッピング」の設定によって作品がアーティスティックに変化するのがまたHDR写真の魅力でもあります。このトーンマッピングの設定次第で,作り手の感性が作品に大きく影響するのもHDR写真の面白さです。

HDR写真は2種類に分けられる

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ひとつはアーティスティックなHDRスタイルです。

独特の光で高彩度,非現実的でCGのよう,または絵画のような雰囲気で,HDR写真と言われればこちらのスタイルをイメージする人の方が多いかもしれませんね。

人によって好みが別れるスタイルだと思います。

このように写真の雰囲気が途端にアーティスティックに変化するのは,取り憑かれるほど面白く,ときに初心者はとHDR加工の「やり過ぎ」中毒になってしまうこともあります. 「HDR写真は気持ち悪くて全部同じに見える」といった批判は,だいたい「アーティスティックな加工のやり過ぎ」たHDR写真に寄せられるものがほとんどです。

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もうひとつはデジタル写真が持つ露出と色調のデータを最大限に引き出すためのHDRスタイルです。

プロの写真家は写真をRAW形式で撮影し現像する際に様々な編集・調整を施しますが,HDR合成を行った写真はさらに編集領域が広がります.ダイナミックレンジの再現性や色調の範囲が広がり,可逆圧縮で写真のクオリティを損なうことなくより写真の魅力を引き出すことが可能になるのです。

撮影した写真のシチュエーションや,自分の感性に合わせて2つのスタイルを使い分けると素敵です。

後編では実際にHDRの写真の撮影の仕方を説明していきます。

HDR写真 魔法のかけ方レシピ好評発売中!

筆者が世界中を旅して撮り下ろしたたくさんのHDR写真の作例とともに,写真に「HDRの魔法」をかける楽しさと,「魔法のかけ方」をお伝えしていきます。

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  • 特殊判型判/128ページ
  • 定価(本体1,780円+税)

著者プロフィール

石川真弓(いしかわまゆみ)

ロフトワークの広報PR兼プランナー。FabCafeの広報担当、メディアリレーションの他ロフトワークのコミュニケション戦略プランニングと実施、コラボレーション企画などを行う。またクライアントプロジェクトにおいてもコミュニティデザイン、オウンドメディアからイベント企画、ソーシャルメディア活用やプロモーションなどの企画立案と実施も担当するハイブリッド型PR。

前職はWEB制作会社のWEBプロデューサーとWEBディレクターを経て、シックス・アパート株式会社でマーケティング・マネジャーとして広報・マーケティング活動全般を5年間担当。個人ブログを続けて11年、本業の傍らギズモード・ジャパンなど多数Webメディアのライターを務める。執筆した書籍に『HDR写真 魔法のかけ方レシピ』(2014年 / 技術評論社)。

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