多様化する消費者心理に響く,イマドキのプロモーション

第3回 オウンドメディアとアーンドメディアをプロモーションや制作において,どのように捉える必要があるのか

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前回は,プロモーション活用や制作物を制作するにおいても経営戦略を固めておく必要がある事を提示しましたが,今回からは,経営戦略を理解し,自社の経営戦略が固まった上で,次は,どのような戦術(手段)をとっていくのか提示してゆきます。

戦術は,目標が定まっていないと考案できません。そして,定まった目標をプロモーションや制作面において,どのように活用していけばいいかは,トリプルメディアの観点から考案します。

トリプルメディアとは,アーンド(Earned)メディア,ペイド(Paid)メディア,オウンド(Owned)メディアから構成されているものです。まず,アーンドメディアをどのように活用すれば,事業の収益に結び付くのか提示してゆきます。

アーンドメディアとは?

アーンドメディアとは,消費者からの評判や信用などを得るメディアのことを言います。

新聞記事やテレビ番組に企業活動が取り上げられるなどPR施策として使われる場合もありますが,本連載では,企業が生活者からの評判や信用などを得るソーシャルメディアを指します。

アーンドメディア(以降ソーシャルメディア)が注目されるようになった理由

ソーシャルメディアが注目されるようになった理由は,消費者の心理状況が変化したからです。

リーマンショック以降の長く続く不況,人々は経済的幸せから人間的幸せを求める方向へと変化してきました。リアルな友人・知人,そしてネット上でつながっている人々と有益な情報共有,コミュニケーションを取るなど,⁠人と人とのつながり」を重視するようになってきました。

また,ソーシャルメディアは年々,現代社会に浸透してきています。

2012年12月時点で米国のインターネット利用者の9割がソーシャルメディアを利用しているという統計が出ており,インターネット利用時間のうち約20%はソーシャルメディアを利用している事もわかっています。ソーシャルメディアは単なるコミュニケーションツールとしてだけではなく,情報入手経路としても利用されているのです。

人々は,ソーシャルグラフ※1から情報を判断,消費行動を決定しています。たとえば,⁠Aさんが勧めている映画を観に行く」⁠映画の趣味が合うBさんがいいと言っているTV番組で進めている商品を購入する」などです。ですので,このようなソーシャルメディアが代頭している現代社会を安易にみなすべきではありません。

そして,ソーシャルメディアでつながっている消費者にとって身近な人から共有された情報は,通常の広告媒体情報より重要視されます。テレビ広告,街頭広告,テレマーケティング,ダイレクトメール,オンライン広告,オフライン広告などはメディアの多様化により情報が氾濫してきています。そしていまやペイドメディアと呼ばれる,いわゆる従来の広告は「邪魔者」とさえ思われ,効果が低減しており, 新しい戦術が求められているのです。

現代社会から導き出される新しい戦術とは,消費者の邪魔をするものではなく,消費者から能動的に接触してくれるような場を構築するものです。そのためには,アーンドメディアで消費者に対してオープンな姿勢を示し,中長期的に消費者と関係を築いていくために,オウンドメディアを用いたプロモーションを行います。

その結果,消費者と企業はエモーショナルな深い信頼関係性が築けます。

※1)
ソーシャルグラフとは,人と人のつながりの関係のこと。

ソーシャルメディアの活用

では,どのようにソーシャルメディアを事業に取り込むのかを見てゆきます。ソーシャルメディアは,マーケティング,商品開発やサービス改善,リスクマネージメント,風評確認,CSRや企業ブランディング,カスタマーサービスなどで活用します。マーケティングのみではなく,その他の領域でも活用可能であることが特徴の1つです。

たとえば「商品開発やサービス改善」の活用方法は,消費者の本音,ロイヤルカスタマーの本音を収集し分析します。消費者が企業に対して好意をもっていれば,商品開発やサービス改善においての企業の問いかけにも,積極的に反応してくれます。

また,⁠マーケティング」としての活用方法は,消費者の心理変化を把握した,消費者が困っている事や興味がある事に関して,ノウハウを提供したりコミュニケーションを取ります。ノウハウなど消費者にとって,有益な情報を提供することにより,認知してもらえます。

このようにソーシャルメディアは,多様な面で活用されており,現代社会では,なくてはならない貴重な存在となっているのです。しかし,ソーシャルメディアのみでは,事業の収益に結びきません。信頼や評判を得るソーシャルメディアと,顧客と深い関係づくりを築くオウンドメディアを相互させることで,中長期的な収益につながります。

それでは,オウンドメディアとはどのようなものを指すのか見ていきましょう。

オウンドメディアとは?

オウンドメディアとは,自社が所有し情報発信しているメディアです。具体的には,自社のコーポレートサイト,ブランドサイト,メールマガジンなどのオンラインをはじめ,企業広報誌,カタログ,パンフレットなどの印刷物,セミナーや自社社員/アルバイトなどのオフラインの事を言います。しかし,本稿では,自社のコーポレートサイト,ブランドサイト,メールマガジンなどオンラインの事を指します。

オウンドメディアは,長期的な顧客との関係づくりにおいて,企業ブランドの拠点づくりとマーケティングにおいてのROI(投資対効果)測定において用いられます。

オウンドメディアとソーシャルメディアのプロモーション設計

「マーケティング」として活用する場合,売りたいという気持ちが優先され,価格を前面に出したり,製品が売れていることを出してしまい,直接的に,通販サイトの商品購入ページや自社サービスの予約フォームや,自社サイトの問い合わせフォームへ誘導している企業が見受けられます。しかし,それは信頼を失い,悪評につながる可能性があります。

ソーシャルメディアを使用している消費者は,自分にとって有益な情報や身近な人からの情報,コミュニケーションがとりたいために使用しているのであって,購入目的で使用しているわけではないからです。

消費者の心理変化を把握し,消費者の課題解決につながる情報や,興味を持ってもらえる情報提供を行い,信頼や評判を得,消費行動促進を図るべきです。

ソーシャルメディアで有益な情報を発信し,共感してくれた人に,オウンドメディア(自社のコーポレートサイト,ブランドサイト,メールマガジン)へ誘導し,詳細情報を見せ,深く認知してもらいます。

間接的に,通販サイトの商品購入ページや自社サービスの予約フォーム,自社サイトの問い合わせフォームへ誘導する事になりますが,結果的にはその方が消費者に積極的に情報へアクセスしてもらえるようになるのです。

また,一方的な情報発信のみではなく,消費者とコミュニケーションをとることも信頼や評判を得る上では重要な事です。手間や時間がかかりますが,継続的にコミュニケーションを取る事を念頭においたプロモーション設計が必要です。

オウンドメディアとソーシャルメディアのプロモーションや制作を行う際の留意点

まず,オウンドメディアもソーシャルメディアも戦術(手段)である,という事を念頭においておくべきです。

オウンドメディアやソーシャルメディアで戦術を考案する際には,経営戦略が策定できている事が前提です。企業理念・経営ビジョン,分析,競合把握,価値提供から導かれる経営戦略を策定して初めて,戦術を考案できます。

戦術を考案するために,目標(KGI)※2)⁠目標値(KPI)※3を設けます。わかりやすく言いますと,⁠事業収益化の為に,目標をどのように設定し,その目標達成のためには,どのような成功要因が必要で,その成功要因を数値化するとどうなるのか」ということです。たとえば,店舗ビジネスをしている場合,KGIが売り上げ増加で,KPIは新規来店数増加,1回の来店での消費額増加,1人当たりの消費額増加,オンライン上で予約数増加などです。

しかし,KGIが売り上げ増加で,KPIをいいね数やシェア数の増加と設定されている企業も見受けられます。事業収益においての最終のゴールは,いいね数を増やす事なのでしょうか? それともフォロワー数を増やす事なのでしょうか? いいね数を増やすことで売り上げにつながるのでしょうか?

事業収益面においてゴールとなる目標と目標値(問い合わせ数増加や予約数増加,購入数増加など)を設け,プロモーションや制作の構想を練っていきます。KGIによって,Facebook,Twitter,Google+,LINE,Youtube,Ustream,Pinterest,LinkedIn,Twitterなど用いるソーシャルメディアが異なります。オウンドメディアやソーシャルメディアで戦術を考案する際には,各ソーシャルメディアの特徴を把握しておく必要があります(次回で提示します)⁠

そしてプロモーションや制作を行う際には,消費者の行動を読み解いた仮説を行い,ROI測定をします。効果測定をすることで,消費行動シナリオ内でのボトルネックが見つかりますので,そのボトルネックを改善していく事により,自社に適したソーシャルメディアとオウンドメディアのプロモーションや制作が確立されてゆくのです。

次項では,オウンドメディアやソーシャルメディアで具体的にどのようなプロモーションや制作物が実利に影響を及ぼすのか,その事例はどのようなものがあるのかについて提示してゆきます。

参考文献
AISCA:ソーシャルメディア時代の新しい消費者行動モデル(PDF)
SIPS~来るべきソーシャルメディア時代の新しい生活者消費行動モデル概念~
※2)
KGIはKey Goal Indicatorの略で,企業の経営戦略から導かれる成果を数値で示したものです。
※3)
KPIはKey Performance Indicatorの略で,KGIとして数値がまとまる手前の業務遂行上の指標です。

著者プロフィール

田中千晶(たなかちあき)

株式会社アント。

2009年在学中にアントに勤務し,新規開拓事業部に携わり,1年半で大手アパレルメーカ,大手スーパーマーケット,大手化粧品メーカや他中小企業を50社開拓し,Web広告,Web活用,ソーシャルメディア支援を担当。2010年からB2Cの事業収益に結び付くためのコンサルティング,コンテンツ制作,社内教育支援,講演を行い高い評価を得る。

マーケティング全般,ソーシャルメディアの情報サイト「UNT Social Media Lab」「Pinterest lab」「LinkedIn lab」「foursquare lab」「Movie Lab」を立ち上げ,中心的に運営管理している。

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