iOS7で考える これからの時代のUIデザイン

第3回 iOS7に合わせて変えるべきところ,守るべきところ

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標準ジェスチャーを採用しないのはアリ?

Safari上では,これらの標準ジェスチャーは強制的に発動してしまうので,スマートフォンWeb上でこれを防ぐ術はありません。しかしネイティブアプリであれば,これらのジェスチャーをあえて利用しないことも可能です。特にゲームなどのステータスバーもタブバーも排した全画面アプリに採用されています。

コントロールセンターを呼びだそうとすると,一度矢印が表示されてもう一回フリックする必要がある

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しかし筆者はこの方法をあまり良い方法だとは思っていません。そもそもiOSで採用しているこれらのジェスチャーは見た目からは学習できず,それを知っている人にしか使えない補助的な機能です。つまり「このアプリはこのジェスチャーに対応している」ということが,ジェスチャーを使ってみなければわかりません。特に「戻る」⁠進む」といった多くのアプリに共通するジェスチャーでは,フリックしてみて使えなかった時のストレスはとても強いものです。

使えて当たり前という機能が使えないことは利便性を著しく落とすものになります。ユーザーが期待する機能をあえて提供しないリスクをきちんと測る必要があります。

影響を受けやすいUI例

ここではジェスチャーの混乱をまねきやすいUIをいくつか上げてみます。

横幅いっぱいのカルーセルリスト

iOSでは昔からカルーセルリストが多用されてきました。色々なカルーセルリストがデザインとして登場しましたが,横幅いっぱいのカルーセルリストは今回のジェスチャーと競合する可能性があります。

横幅いっぱいで展開するカルーセルイメージ

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普通に使っている分にはあまり気にならない箇所かもしれませんが,横幅いっぱいの画像を使うことはつまり,その画像がある範囲のどこでフリックしても大丈夫だという意思表示となります。もちろんそのように作られていることと思いますが,それが結果としてiOSの進む/戻るジェスチャーと競合する可能性があります。

はじめから計算に入れていたわけでは無いと思いますが,App Storeアプリでは画像の左右に余白が入っており,結果として画像の上でのフリックを誘導したデザインになっています。

App Storeのカルーセル

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メニューリスト

GmailやFacebookで採用されて一気に浸透したメニューリスト。非常に機能性が高いUIだと思いますが,こちらも残念ながら競合していると言えるでしょう。

Gmailのメニューリスト

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メニューリストを展開するジェスチャーとして,左から右へのジェスチャーを採用しているアプリは数多くあります。これは左端から出現するメニューに非常にマッチしています。しかし「左端から出現する」からこそ,画面の左端からフリックをしてしまいますので,結果として「戻りたかったのにメニューが出た」⁠メニューを表示したかったのに戻った」という,ユーザーの意図とは離れた動作をしてしまうケースが出てきました。

このジェスチャーの変更を受けてかはわかりませんが,メニューリストを採用した代表的なアプリであるFacebookは,結果として自ら提案したUIを撤廃しています。

今までiOSはサードパーティーが考えたUIやジェスチャーを,標準ジェスチャーとしていくつか採用してきています(Cover Flowや引っ張って更新など⁠⁠。筆者はこのメニューリストも標準UIとして採用されるのではないかとまで思っていましたが,結果としては真っ向から対立するような形となりました。

UIとしては非常に優れたものだと今でも思っていますが,⁠戻る」という動作をすることが期待されるUIとの併用は難しいと考えた方が良いでしょう。

コラム Googleの純正アプリ

ちなみにGoogleの純正アプリであるGmailとGoogle ChromeはそれぞれこのiOSの標準ジェスチャーと競合する全く異なるジェスチャーを採用しています。筆者の記憶ではメニューリストUIを採用したのはFacebookよりもGmailが先でした。

左右のジェスチャーでタブの切り替えをするGoogle Chrome(左)と左右のジェスチャーで前後のメールに移動するGmail(右)

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これらのUIはiOS7の標準ジェスチャーに慣れた今としては使いにくいものとなってしまいましたが,今後果たしてどのような変化を見せてくるのでしょうか。楽しみです。

今回はデザインがユーザーに与える心理的な影響と,目には見えないジェスチャーが及ぼすUIの変更点についてお送りしました。

単純に見た目だけを気にすれば良いのではなく,やはり適材適所があります。また,今までストレスなく使えていたアプリが,今回のiOS7の変更によっていきなり使いにくくなってしまうこともあります。

今もまだUI/UXデザインは常に進化し続けています。今デファクトスタンダード(事実上の標準)となっているものが,ある時突然なくなるかもしれません。しかしそれでユーザーが使いやすくなるのならば歓迎すべきことでしょう。むしろ筆者はこれらの進化や変化を楽しんでいます。世界中で行われているデザインが,それぞれ良い所を吸収しながら進化を続ける様子を,ぜひ皆さんも一緒に楽しみましょう!

次回は本連載の締めとしてこれからのUIデザインのあり方を考えてみたいと思います。お楽しみに!

著者プロフィール

宇野雄(うのゆう)

ヤフー株式会社 UI・UXデザイナー。スマートフォンWebとアプリを中心に,UI・UX設計/デザイン/コーディングを担当。

全く新しいモノづくりよりも,既にあるモノを新しい視点でとらえるデザインが好き。犬派。昨年「親バカ」ステータスも追加。

Twitter:@saladdays