UI/UX 未来志向―進化の方向を予測し,今必要なことを知る

最終回 学びを深めるために勧める8冊の書籍

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本コラムもこれで最終回となりました。そこで今回は,筆者がUIやUXについて学んできた中で,個人的に印象に残った書籍を紹介します。みなさんの今後の学びを広げていくための参考となれば幸いです。

学びを深めるための8冊の書籍

UIやUXを学ぶうえで,心理学的な考え方が重要になります。しかしエンジニアやデザイナからすれば,心理学は縁遠い分野だと思います。しかもUIで使われる心理学は,テレビで紹介されるような心理テストのようなものではなく,認知心理学や知覚心理学ですから,なかなかそういう本を手に取ろうとは思わないでしょうし,そもそも心理学という領域がどのようになっているかすらわからないと思います。

ここで紹介するのは「人は人工物や環境の前でどのような振る舞いをするのか」という,人の認知や行為についての書籍たちです。

デザインの生態学注1

デザインの生態学

デザインの生態学

アフォーダンス注2を生んだJames Jerome Gibsonの生態心理学についての佐々木正人氏による解説や,深澤直人氏との対談があり,デザインと生態心理学の関係性を学べます。また後藤武氏による建築との関係についての解説も収録されています。

デザインは見た目だけではないという発想を知るのにちょうどよいと思います。

注1)
後藤武,佐々木正人,深澤直人著『デザインの生態学─⁠─新しいデザインの教科書』東京書籍,2004年
注2)
環境が人に与える行為の可能性のことです。

アフォーダンス入門注3

アフォーダンス入門

アフォーダンス入門

もう少し深くアフォーダンスについて学びたい人向けの読み物です。人間や動物の知性がそれ自身に内在するのではなく,環境に分散して存在していることを感じさせてくれる1冊です。デザインという視点で読むとおもしろく読めると思います。

注3)
佐々木正人著『アフォーダンス入門─⁠─知性はどこに生まれるか』講談社,2008年

かくれた次元注4

かくれた次元

かくれた次元

プロクセミックスという対人空間距離が国柄,文化によって変わるという話で有名な本です。ここでもGibsonの生態心理学が紹介されており,人工物や対人との関係性を考察するうえで示唆に富んだ本です。インタラクションの基礎とも言えます。

注4)
Edward T. Hall著/日高敏隆,佐藤信行訳『かくれた次元』みすず書房,1970年

誰のためのデザイン?注5

誰のためのデザイン?

誰のためのデザイン?

インタフェースデザインを学ぶ人が,だいたい最初に紹介されるNormanの本です。定番であるだけに読んでおいてほしい1冊です。人工物と人とのインタラクションをどうとらえるかが書かれています。人間を中心に発想する基本がここにあります。

注5)
Don Norman著/野島久雄訳『誰のためのデザイン?─⁠─認知科学者のデザイン原論』新曜社,1990年

人を賢くする道具注6

人を賢くする道具

人を賢くする道具

『誰のためのデザイン?』が有名な一方で,同じNormanの本でもこちらはあまり紹介されないのですが,人間と道具を考えるうえで学ぶことの多い1冊です。人間中心に物を設計することについて『誰のためのデザイン?』以上に示唆に富む内容だと思っています。

注6)
Don Norman著/佐伯胖監訳/岡本明,八木大彦,藤田克彦,嶋田敦夫訳『人を賢くする道具─⁠─ソフト・テクノロジーの心理学』新曜社,1996年

認知的道具のデザイン注7

認知的道具のデザイン

認知的道具のデザイン

こちらは専門書なのですが,人間が道具やある環境を利用し,あるタスクを遂行するときにどのようにその環境を利用しているのかを研究した事例集です。うまくタスクを遂行する能力は,うまく環境を作る能力だと気づかされます。

注7)
加藤浩,有元典文編著『認知的道具のデザイン』金子書房,2001年

生態学的視覚論注8

生態学的視覚論

生態学的視覚論

こちらもGibsonの著書です。内容は難解な部分もありますが,環境と人の関係性が詳細に記述してあり,世界に対する感覚や視点が大きく変わる1冊です。Gibsonの著書は,このほかに,視覚ワールドの知覚注9)⁠生態学的知覚システム注10という書籍が出ています。

注8)
James Jerome Gibson著/古崎敬,古崎愛子,辻敬一郎,村瀬旻訳『生態学的視覚論』サイエンス社,1985年
注9)
東山篤規,竹澤智美,村上嵩至訳『視覚ワールドの知覚』新曜社,2011年
注10)
佐々木正人,古山宣洋,三嶋博之 監訳『生態学的知覚システム─⁠─感性をとらえなおす』東京大学出版会,2011年

融けるデザイン注11

融けるデザイン

融けるデザイン

手前味噌ですが拙著です。人間にとってのコンピュータの歴史的経緯を踏まえながら,コンピュータの万能性を目の前にこれからどうデザインするかについて考えていく本です。本コラムでも紹介してきたiPhoneの気持ち良さ,自己帰属感といった道具の透明性を議論しながら,情報がどのように身体と近づくのかを考察していきます。また,情報の道具化,環境化として,ブラウザ以外の方法でインターネットと接するあり方についても考察しています。

注11)
渡邊恵太著『融けるデザイン─⁠─ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論』ビー・エヌ・エヌ新社,2015年

どうやってUIやUXを学ぶのか

本コラムは今回で最終回です。コラムという形式のため,毎回異なるテーマを簡単にしか説明できませんでした。ですからぜひこれらの本を参考にしてみてください。この分野の歴史は浅く,UXというキーワードがバズワード化し混乱が起きるのも,さまざまな人が独自の視点で新しいプラットフォーム,新しい方法をリアルタイムで試行錯誤しているからです。みなさんは最先端にいることを自負しながら,ぜひ学びを言語化し共有していってほしいと思います。なぜならそれが,いつの日か学問の一部を成すからです。

さらに筆者としては,WebやスマートフォンのUIデザインだけではなく,これまで見たことのない新しい体験を作るメディア(インタフェース)自体の発明にも挑戦していってしてほしいと願っています。

著者プロフィール

渡邊恵太(わたなべけいた)

博士(政策・メディア)

高校生のときにMacの画面は心理学者が設計している話に感動してヒューマンインタフェースの研究するために慶應SFCに進学。そのままインタフェース,インタラクションの研究者に。現在は2013年4月に明治大学が中野キャンパスごと新設した総合数理学部 先端メディアサイエンス学科にて専任講師を務める。

日本のインタラクションの研究拠点にすべく日々研究活動中。

web:http://persistent.org/

twitter:@100kw

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