WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」

第1回 CLARIFYING OBJECTIVES「ウェブサイトの目的と目標を定める」

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はじめに/正しいウェブデザインとは

ウェブデザインは大変自由な業種である。日々進歩する技術や新しいクリエイティブにあふれ,「正しい」という言葉はあまり似合わない。しかし自由で,インタラクティブなインフラを活用するウェブデザインだからこそ,クリエイティブなアイディア以前に考えなければならない点がたくさん存在する。無論ウェ ブだけでなく,いかなるデザインにおいても目的を達成するためのロジックの積み上げやリサーチは必要であり,構築的なプロセスは存在する。

では,「正しい」ウェブデザインとはどのようなプロセスだろうか?

この連載を通じて筆者はウェブデザインの「正しい」プロセスを見出してみたい。ウェブデザインという仕事に関わるクリエイティブ・ディレクター,アート・ディレクター,デザイナーの視点から,ウェブデザインに必要なロジックを導き出そう。

まずは「手法」ではなく「目的」

なぜウェブサイトを立ち上げるのか? そこには様々な「目的」が存在する。当たり前のようで,簡単に聞こえる事かもしれないが,実はこのステップが無視されてしまうことが多いのだ。

その大きな理由として,新しい技術や表現方法の起用がある。新しい技術などが大きな話題やPR効果を呼ぶこの業界では,つい手法ばかりに目が行き,本当の目的を達成するための企画が考慮される前にプロジェクトが走り出してしまうことがある。

「今注目されているサイトの表現方法を使いたい。」

「どのサイトよりもいち早く注目の技術を採用したい。」

もちろん新しい技術や表現方法に取り組むことは決して悪いことではない。むしろ挑戦するべきである。しかし,このようなエゴティスティックな願望が明確な目的を割り出す前に取り上げられてしまうと,プロジェクトの目的がクライアントや製作者の満足に留まる。その場合,ウェブサイトは本来の目的にフォーカスすることができず,効果を発揮することができない事は言うまでも無い。

できれば表現方法や技術,ディテール等の話は一旦忘れよう。いくらかっこよくて,面白くても目的を達成できなければ意味は無い。最初は単純にこのプロジェクトの(ウェブサイト以外のソリューションも含め)目的を明確にすることに集中するのだ。

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こういったアイディアが間違っていると言う訳ではないが,目的が定められていない場合はアイディア自体の正否を問うこともできない。明確な目的から望む成果が見出されてこそ効果的な企画を作ることができる。望む成果を確実に得るために,プロジェクトを始める前に「目的」を定めることが企画の最も重要な最初のステップなのである。

WHO:誰に?

インターネットといえども,つまりは人対人である。プロジェクトの目的を明確にするにはまず,ウェブサイトを通じて影響を与えたいターゲットが誰であるか定める必要がある。

潜在顧客や既存顧客だけでなく,リクルート対象ユーザー,プレス,スタッフ・パートナー,株主等,他にもターゲットとなり得るユーザーはたくさん存在する。さらにこれらのターゲットのエイジ(年齢)・グループ,性別,プロフィールなども明確にする必要がある。例として同じ20~30代の女性でもOLと主婦ではインターネットの利用習慣に大きな違いがあり,それぞれに対して効果的に影響を与えるための伝達方法や表現手法には大きく異なるのだ。

WHAT:何を?

情報を発信する対象ユーザーが明確になれば,次に「それらのターゲットにどのような影響を与えるか?」を定める必要がある。単純にアクセス数だけでなく,製品,社名,サービスの認知度の向上,長期的なブランディング,IR,店舗やコマースサイトでの販売促進,話題喚起,コミュニケーション,B2B サービスの営業,リクルーティング,申し込み,問い合わせ,ユーザー登録などの個人情報や会員の獲得,目的は様々なものが考えられる。

ウェブサイトを通じてこれらの目的を達成できるよう,できるだけ細かく,シンプルに,当たり前のような「目的」も全てリストアップするべきである。目的が複数挙げられる場合は必ず優先順位を明確にし,関連する目的は順番も考えておくと良い。

HOW MUCH:どれくらい?

ターゲットと目的が定まったら,それらに対しアクセス数,コンバージョン率といった数値目標を設ける。 具体的な数値目標を掲げるにはある程度の慣れは必要になるが,リニューアルの場合には過去のデータから目測を立てる事が可能である。アクセス情報が無い, または新規の場合には目的と業務の内容からどれくらいのコンバージョン率を設定するかを検討する。全ての目標が直接計算できる訳ではないが,ウェブサイト への訪問者数をベースに予測を立てることは可能である。

「誰に何をどれくらいしたいか,してもらいたいか」,これを定めることがウェブデザインを行う上でのスターティング・ポイントとなる。

ウェブサイトの目的は「WHO(誰が)」,「WHAT(何を)」,「HOW MUCH(どれくらい)」を出来る限り細かく,複数用意し,優先順位を決めておこう。

ウェブサイトの目的は「WHO(誰が)」,「WHAT(何を)」,「HOW MUCH(どれくらい)」を出来る限り細かく,複数用意し,優先順位を決めておこう。

<例>
  • リピーターを増やし,e-コマースサイトの売り上げを25%伸ばしたい
  • 潜在顧客に対して製品の認知度を向上したい(トラフィック,外部リンク数50%UP等)
  • リクルート対象ユーザーの求職応募を100件獲得したい
  • 潜在顧客の新規問合せを200%UPしたい
  • 10以上のオンラインメディアにキャンペーンを取り上げてもらいたい
    等…

このような具体的な目的と目標を定めることによって,サイトに必要な機能やプロモーションを割り出すことが出来,優先順位をつけることにより,コンテンツを表示する導線上,レイアウト上の順番などをプランする事ができるようになる。また,製作者だけではなくクライアントにもとても重要で立てられた企画,作られたデザイン,レイアウトの正否をバイアス無く採用するかを判断出来るようになるのだ。

次回は目標を達成するための大前提である「トラフィックの確保」についてと,その様々な方法を解説する。

※ コンバージョン率
サイト訪問者数に対して目的に結びついた人の割合のこと。

著者プロフィール

荻野英希(おぎのひでき)

FICC inc. 代表。ファッションブランドのアートディレクターを勤め,ウェブプロデューサーとして様々なブランドや企業のウェブプロモーションを手がける。デザインポータルAnotherbookmarkの運営や雑誌連載の執筆など,幅広い活動を行っている。

URLhttp://www.ficc.jp/

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