圏外からのWeb未来観測

最終回 アルゴリズムからキュレーションへ

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最終回となる今回のゲストは,ネットメディアを中心に話題作を次々と発表している作家,佐々木俊尚さんです。最新作,⁠キュレーションの時代』注1は,本号が出ているころには店頭に並んでいると思います。本書のテーマである「キュレーション」についてお聞きしました。

キュレーションとは,⁠Business Insider」の記事への佐々木俊尚さんのコメントを引用すると,⁠情報を収集し,選別し,意味づけを与えて,それをみんなと共有することです。インタビューを通してその意味の実感がつかめると思います。

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(撮影:平野正樹)
注1)
筑摩書房,ISBN:978-4-480-06591-9,2011年

パーソナライゼーションの限界

中島:そもそもキュレーションという概念はどんなふうに生まれてきたんでしょうか?

佐々木:Webの目的は,大きく言えば「情報アクセス」「つながり」の2つに集約されます。その中で,情報アクセスは1990年代の半ばぐらいにYahoo!のディレクトリ型検索からスタートしました。しかし,情報量がどんどん増えていくと,情報をディレクトリにカテゴライズすることが難しくなり,検索エンジンが登場しました。当初は検索のスパムなどがあったんですが,1998年に誕生したGoogleによって,ページランクなどのアルゴリズムを利用した検索でアクセスする方法が確立しました。

ところが2000年代半ばぐらいから,パーソナライズの必要性が言われはじめ,アルゴリズムによるパーソナライゼーションに向かうだろうという見方が主流になりました。

中島:はい,そうでしたね。

佐々木:それで,その究極がたぶんライフログからの情報の活用だったと思うんですよ。で,僕も実際あちこちでライフログのことを書いたり,自分でも考えていたりしてたんですけど,結果的にはこの方向は発展していませんね。

それと,⁠つながり」の問題もあります。自分の友人が自分にとって有用な情報を持っているわけではないということです。

どうやってその2つを統合するのかが結構重要な問題だよねっていうことを,2年ぐらい前に『インフォコモンズ』注2という本に書きました。

注2)
講談社,ISBN:978-4-06-282092-9,2008年

情報アクセスの鍵は「人」にある

中島:『インフォコモンズ』は私も読ませていただきましたが,非常に印象的な本でした。

佐々木:ただあのときは,最終的にはやっぱりパーソナライゼーションだろうと思っていたので,自分が明示的に何かを選択しなくても,暗黙裏に情報が流れていくしくみが必要だと思っていたんですよ。でも,あれから2年経ってソーシャルメディアが普及してきて気づいたことは,いい情報を得るためには人を見つければ大丈夫っていうことです。

中島:はい。そうですね。

佐々木:どこにいい情報があるかはわからないけど,誰がいい情報を持っているのかということは推測可能だよねと。要は,⁠TwitterでWebの情報を拾いたいならこの人をフォローすればいい」⁠このブログを見ていればだいたいこの分野の話が入ってくる」というのが段々わかってくるようになる。そうすると必要なことは,情報単体を探すことではなくて,その情報を持っている人を探すためのツールになってきます。

中島:なるほど。

佐々木:たとえば,Facebookはあくまでもリアルな友人としてのつながりだけど,たとえばファンページのような,片方向的な情報の流れが生まれることによって,有用な情報が流れるしくみができていたりします。

あるいは,食べログとかクックパッドなどの口コミメディアですね。完全に情報の流れとそのつながりが両立している。つまり,今までは「リアルな友人のつながり」「情報の流れ」という,まったく関係ない2つのものをどうにかして統合しなきゃいけないと思われていました。しかし,実はそうじゃなくて,情報の流れが先にあって,自分にとって有意義な情報を発信する人に対してリスペクトを感じるようになってくる。つまりは,情報の流れそのものが実はそこにつながりを生み出すという,逆流みたいなことが起きてきているんですね。そういう考えがキュレーションにつながっていくんじゃないかという風に最近考えています。

中島:情報そのものではなく,それに関連する人のほうにフォーカスが移ってきて,それを明示的に意識するようになったところから,キュレーションという概念が生まれたわけですね。

キュレーションの実験

中島:佐々木さんは最近,Twitterで毎朝その日の重要なニュースやブログ記事をコメント付きで流されていますがキュレーションとはあのような感じのものでしょうか?

佐々木:そうですね。あれはキュレーションという言葉を意識するようになって,それを自分で実験的にやってみようと思ったものです。

それまでも,毎朝膨大な量のブログをGoogle Readerでチェックしてブックマークしていました。そのブックマーク先をDeliciousに加えて,Twitterにも流せばそれで済むじゃないですか。FirefoxのTomblooというツールを使っていたので,チェックを1つ増やすだけなんですね。

中島:私もよく拝見しているんですが,あれはやっぱり,佐々木さんのピリッとしたコメントがついていることで,おもしろみがあると思うんですよね。単に重要な記事だけを羅列しているツイートならほかにもたくさんありますが。

佐々木:そうなんです! 主観をなるべく入れて…なぜ私がこれを紹介したのかがちょっと伝わるのを心がけています。

キュレーションで大事なことは,キュレートしている側の世界観とか価値観が見えるということ,そして人を経由して情報が流れることで,人の世界観の違いから生じる「ゆらぎ」が生まれることです。

著者プロフィール

中島拓(なかじまたく)

ソフトウェア技術者として,汎用機上での大規模プロジェクト,ミニコンによる制御システム,パソコン用のパッケージソフト,オープンソースソフトウェア(Amrita,ReviewableMindなど)といった,幅広い分野での開発に携わる。アンカテのブロガーとして,2006年アルファブロガーに選出される。現職 株式会社ブレーン 研究部長

アンカテ:http://d.hatena.ne.jp/essa/

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