ネットとリアルをつなげるWeb 3.0の波
2006年ごろから2008年上旬ごろまでは, サンフランシスコ市内を中心に, Web 2.0系のWebサービスを提供するネットベンチャー企業が多く見られましたが, 2008年後半あたりから, オンライン上のみで提供されるサービスの多くが淘汰されはじめ, それに代わり, ネットとリアルな生活を繋げる“Web 3.0”とでもいうべきサービスが注目され始めています。
アメリカの自動車所有事情
最近になり日本でも少しずつ知名度が上がってきた,“カーシェアリング”という仕組みが現在アメリカの都心部では大人気です。車社会のアメリカですが,リーマンショック以降車が売れなくなり,大手自動車メーカが大変な影響を受けていることをご存知の方も多いでしょう。実は近年車が売れなくなってきた裏には,不景気以外にも理由があるようです。その大きな理由の1つがZipCar(ジップカー)に代表されるカーシェアリングの人気ではないかと思います。車が必需品のアメリカで,近年のネットテクノロジーの進化に伴い,車を“所有すること”自体が考え直されています。
昨今の不景気にプラスして原油高や環境に対する人々の関心の向上など,ここ1,2年アメリカでも自動車を所有することに対するデメリットが多くなりました。とくに僕の住むサンフランシスコという街は,ニューヨークとともに交通機関が発展しているだけではなく,路上に車を停めることが非常に困難な地域です。
元々アメリカでは路上駐車が可能なエリアが多くあるのですが,都心になるとメータパーキングになり,長時間停めることが難しくなります。中でもサンフランシスコやシリコンバレーは最近駐車禁止エリアの増加とメータに停められる時間の制限が強化されたため,長時間路上駐車を行うのはほぼ不可能になっています。そのような環境の中,普段は公共交通機関を利用し,週末や必要なときにだけ車を使う人が増えてきました。この辺の事情は日本に共通するのではないでしょうか。
しかしながら,車は所有しているだけで保険料,登録費用,整備費用などの維持費がかかるので,所有すること自体に疑問を感じます。一方所有していない場合,いざ必要となるとレンタカーを借りなければいけなくなり,その際の予約手続きや追加保険料,返却時間などが気になるうえ,店舗まで足を運ばなければならないなど,かなりおっくうです。
そこで,ネットやITテクノロジーを最大活用し,それらを解決したのが今回紹介するカーシェアリングの大手ZipCarです。
“Wheels When You Want Them”―話題のカーシェアリングサービスZipCar
ZipCarが提供するサービスは簡単に言うと,“時間割レンタカー”です。通常レンタカーは1日単位で車を貸すのですが,そこを最低1時間,30分単位で区切り,必要な時間だけ乗れます。キャッチフレーズも“Wheels When You Want Them”(必要なときにだけ乗る車)が採用されています。
しかしながら,実際に利用してみると実はレンタカーとは根本的に一戦を画するサービスコンセプトや内容を打ち出しているのがわかります。その違いを下記の5つのポイントを例に説明します。
1.町中いたるところに車がある
ZipCarを借りる際には人に会う必要がありません。店舗がないからです。そのかわり,ネットで自分の近くの駐車場に停まっている車を検索・予約し,時間が来たらその車に乗り,終わったら同じ場所に戻す。それだけです。
まさに自分の車に乗る感覚に近いと言えます。自分のいる場所から検索できるので,手軽に見つけることができます。
2.車を借りるのではなく,みんなで所有する
カーシェアリングというサービス名のとおり,車を誰かから借りるのではなく,みんなで一緒に所有するというコンセプトが基本。借りるにはZipCarメンバーになり,他のメンバーと車を共同所有します。借りた車のガソリンが減っている場合は,気づいた人が車内にあるガソリンカード(プリペイド)を使い給油します。車内が汚れている場合も気づいた人が掃除をします。
3.最新テクノロジーを最大活用したサービス
上記の通り,借りる際にはまずサイト上のGoogleマップから自分の近くのロケーションにある車を検索し予約します。その瞬間セントラルシステムより,その車に搭載されているGPSシステムとRFIDトランスポンダーに予約情報が信号として送られます。
予約をしたユーザがメンバーカードを車に当てることでドアのロックが解除され,エンジンがかかるようになります。 最近更新されたiPhoneアプリをリモートキーとして利用することで,ロックの開閉をすることも可能です。また,利用した時間や走行距離の情報も,車からセントラルシステムに送られます。
4.パーソナルでフレンドリーなブランディング
ZipCarは全体を通して非常に“やわらか”なイメージをユーザに届けることに成功しています。ZipCarが停められている駐車場には“ZipCars Live Here”と書かれた看板があり,それぞれの車にも,ジョンやマイクなど,ファーストネームがつけられています。
また,メンバーになったユーザは“Zipster”と呼ばれます。ITや車といった機械を使ったサービスを展開する中で,パーソナルなイメージをユーザに届けているのです。さらに,メールによるカスタマーサポートも担当者から直接メールが届く仕組みになっています。
5.おしゃれで環境に優しい
最近アメリカの若者の間では,車を所有しないことがおしゃれだという風潮があります。ZipCarを利用すること自体がおしゃれだということです。ZipCar.comはシンプルで洗練されています。
広告や宣伝も若者向けにかっこよく作られており,モデル車両はかわいい黄色のミニクーパーを採用。また,みんなで車を所有するので,全体の車の数が減るために環境にも優しいといったイメージ作りにも成功しています。
彼らのロゴやイメージカラーもグリーンです。

