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Webデザイン業界の三位一体モデル

第3回 NEC宣伝部 吉見大輔(前編) サイトのクリエイティブと誘導はセットにして考える

メディア単体で考えるのではなくて,メディアを使って何を伝えるか

Webキャンペーンに関わるキープレイヤーである,広告主,Webクリエイター(制作会社),広告代理店,の三者のそれぞれの立場をインタビューすることで,これからのWeb広告/Webデザイン業界の未来を探るこの連載。

3回目は,広告主の集まる日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会のメンバーとしても活動されている,NECの吉見大輔さんにお話を伺った。

新野:

吉見さんには,私の前職時代に大変お世話になりました。こうしてお話しするのは久々でなんだか緊張しますね。まずは改めてご自身の略歴を教えていただけますか。

吉見大輔さん

吉見大輔さん

吉見:

そうですね,新野さんとこうしてお話しすることになるとはなんだか変な感じです。(笑)

私がネットと関わることになったのは,2000年にNECの関連会社でサイバーウィングに出向してレップ(ポータルサイトのバナー枠などを広告主に仲介して販売する広告代理店)としてインターネットの広告を売る仕事を2年8ヶ月担当したのが最初ですね。

新野:

2000年からというと,ちょうどインパク(ミレニアムを記念して森内閣の主導で行われたインターネット博覧会)の年ですね。NECでもパビリオンがありました。当時私はあれを担当していたんですよ。

あの当時からネットにかかわっているひとって,その経験を活かして今まさにWeb業界の中心的な役割で活躍されているかたが多いですよね。

吉見:

そうですね,結構この業界長いほうです。

当時はまだネット広告の黎明期で,広告メニューの開発をしたり,広告主に対して提案したりしていました。

その後NECの宣伝部に復帰して,新聞とネットメディアのバイイングを担当していましたが,今年の4月からはネットを含め全ての媒体のバイイングにかかわっています。

一番初めに出会ったメディアがインターネットメディアだったというのは,宣伝部の人間としては珍しいかもしれないですね。

新野:

今現在は,ネットメディアも従来メディアも両方やられていらっしゃるというのは,メディア全体が見渡せるポジションだと思いますが,よく言われるクロスメディアのプランで重要なことってどんなことでしょう?

吉見:

メディア単体で考えるのではなくて,メディアを使って何を伝えるかというコンテキストの部分が重要ですね。

たとえば広告の制作物は制作物で進めて,メディアはメディアで単に閲覧者数が多いからみたいなことだけでプランを進めて,後で合体させただけみたいなクロスメディアは決していい結果は生みません。

新野:

ここで言うコンテキストの重要性というのは,まずキャンペーンの目的ありきで,それに即して,「じゃあこのメディアにはこの役割を持たせよう。」というようなメディアプランが必要だということですね。

吉見:

ええ,TVCMに「○○で検索。続きはWebで」と入れたってコンテキストが考えられていなければ単なる後付になってしまう。

何を伝えたいかのコンテキストがあって初めてクロスメディアでどう展開するか考えないといけないですね。

新野:

では,少しお話を戻して,最近担当された案件を何か紹介していただけますか。

吉見:

半年くらい前になりますが,インターネット動画のGyaO(www.gyao.jp)で携帯電話製品の動画CMをやりました。

これは,TVCMと同じものも流しましたし,ネットオリジナルのバージョンも4種類作りました。

オリジナルバージョンでは,テキストを多く使ったものだったり,対面形式で視聴者に語りかける感じのものだったりと全部違う作りにしました。

その後の調査でわかったことなのですが,結果としてはネットだったらこのCMが一番よかったということではなくて,携帯電話の機能を伝えるにはこのCM,サイトへの誘引だったらこのCMというように利き方が違うんです。

このケースではそういったことを調査する実験的な役割もあって実施したのですが,先ほどのコンテキストの話にあったように,ネットだからこんな広告クリエイティブがよいという型にはまったものではなく,目的に応じた使い方をすることが大事ですね。

新野:

それはよく判ります。消費者に伝えたいことを動画CMで伝えたいのか,それともその先のスペシャルサイトで伝えたいのか,伝えたいことが製品特性なのか,ブランディングなのかで当然変わってきますからね。

よく考えたら当たり前なことなのですが,実際にそれがプロジェクトの最初から最後まで通してブレずにやれているかというと,難しいケースも多のでしょうね。

吉見大輔さん(手前),新野(奥)

画像

サイトのクリエイティブと誘導をセットで考える

新野:

業界の話をすると何年か前までは,とりあえず最新のテクノロジーを使って見た目にかっこいいサイトを作ることだけで満足していた時代もありました。

でも今では,いくらかっこいいサイトを作ったって,そこにどうやって人を連れてくるかを考えなければいけないことにみんな経験上気づいてます。

だから,誘引のためのバナーだったりTVCMや雑誌広告からの誘導を考えることは,キャンペーン全体を考える上ですごく重要ですね。

ネットの媒体だけでなくて,消費者が接する全てのメディアの役割を考えて設計できるような人が求められると強く感じていますが,業界を見渡してもなかなかいない。

吉見:

なかなかいないし,まだそういったことを考える上でのこれだって言う方程式もまだできていないですよね。

それにサイト自体の評価指標もまだ定まっていなくて。たとえば,ページビューなのか,ユニークユーザー数なのか,滞在時間なのか,リピート率なのか,そもそものプロモーションの目的によって違ってくるから答えはひとつではないのですが,そこがきっちり関係者内で共有されてないことが多い。広告主と,制作会社と,広告代理店で共有できていないといけないのに。

それをはっきりすることで,ネットのどういう手法を使って,どういうメディアを使えばいいのか見えてくる。

新野:

目的が共有されていないとプロジェクトに関わるいろんな人から,それぞれの立場からの意見や要望がサイトに対して五月雨式にでてきて,全部のリクエストに応えようとしてよく判らないサイトになってしまうこととかありますよね。

吉見:

目的よりも先に手法ありきで話が進むケースもありますよね。「Webムービーを作りたい」とか。目的にあったWebキャンペーンの手法がほかにももっとあるかもしれないのに。

新野:

新しい手法とかテクノロジーが出てくるととりあえず試してみたくなるんですかね。

それが経験を積む実験目的だと割り切れればいいのかも知れませんが。

吉見:

どこの広告主でも,もはやそんなことで話が通るほど甘くはないですよ。

正解はわからないとしても仮説を持って作らないと,やっぱり目的を見失ってしまうでしょう。

手法ありきでサイトのクリエイティブだけ考えて作ってしまうと,出来上がったあとに「さて,どうやって人を連れてこよう。」となる。

TVCMや雑誌などの媒体ではそれでもよかったんです。作ったものを載せさえすれば,あとは自然と見てもらえる。どうやって見てもらうかまでは気にする必要がなかったんですね。

でも,Webだとそうは行かない。だからやっぱりサイトのクリエイティブと誘導をセットで考えることが重要なんです。

著者プロフィール

新野文健(あらのふみたけ)

1999年よりWeb業界に身をおき,2004年 NEC ecotonoha(エコトノハ)でアジアで初のカンヌ国際広告祭サイバー部門グランプリを獲得。2007年ハーマンミラー 「Get Real キャンペーン」バナーで,東京インタラクティブアドアワード Gold等,他受賞多数。2005年6月よりビーコンコミュニケーションズにてシニアプロデューサーとして,世界的メガブランドの日本サイト本格立ち上げに尽力。

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