いま,見ておきたいウェブサイト

第152回 株式会社scouty,Coinhive,NBA Jerseys featuring NikeConnect.

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

もう冬かと思うような季節外れの寒さが続くため,そろそろ「こたつでも用意しようかな」と思っている今日このごろ,皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた,素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

最適な人材,インターネットから探します

株式会社scouty(スカウティ)

日本初の登録不要AIヘッドハンティングサービスを開始した,株式会社scouty(スカウティ)のウェブサイトです。

図1 日本発のAIヘッドハンティングサービスを開始した,株式会社scoutyのウェブサイト

図1 日本発のAIヘッドハンティングサービスを開始した,株式会社scoutyのウェブサイト

「scouty」では,SNSやGitHubなどの技術情報共有サービスで公開されているデータから,転職候補者の情報を取得します。この取得した情報を,独自のマッチングアルゴリズムで解析して,企業が求める最適の人材を探し出します。

転職候補者の能力も,人工知能がデータから能力値を弾き出します。候補者のスキルや市場でのニーズを分析することで,より活躍できる企業を提案できるだけでなく,人事担当者が行っていた候補者選びも省力化します。

転職希望者が登録情報を自らが登録するという面倒な作業が必要ないことや,候補者が転職しそうな時期を予測して,企業側が候補者を採用しやすいタイミングでスカウトメールが送れるなど,従来の転職サービスとは全く異なった人材獲得方法も特徴のひとつです。

AIが人間の能力を判断する時代は来るか

ここ数年,⁠HR Tech(Human Resource Technology:ヒューマン・リソース・テクノロジー」と呼ばれる,さまざまな人事関連業務の自動化や効率化を進める動きが活発です。中には株式の上場を行って,さらに事業を拡大しようとするサービスも登場しています。

今年5月,ソフトバンク株式会社は新卒者の採用業務にAIを導入することを発表しました。IBMの「Watson」を活用して,採用試験時に新卒者が提出する大量のエントリーシートを審査することで,人事担当者の確認作業が75%程度削減できるということです。

面接の一部にAIを採用している企業も現れています。アメリカのHireVue Inc.が提供しているクラウド型の面接プラットフォーム「HireVue」は,カメラを通じた映像の表情や動作から採用候補者の評価を行うというもので,CocaCola,Goldman Sachs Group,Walmartといった世界的企業で採用されています。

『Business Insider』による「HireVue」の取材動画

アメリカのMya Systems Inc.では,⁠採用プロセスの75%を自動化する⁠ために,AIチャットボットの「Mya」を開発しています。⁠Messenger」⁠Skype」などのメッセージングアプリを用いて,対話しながら採用候補となるユーザーを特定し,最終的に面接を取り付けます。すでに200万人の採用候補者との対話が進んでいます。

紹介した上記の例では,さまざまなテクノロジーを駆使しているものの,採用の最終的な判断は人間が行っています。そのため,AIが人間の能力を判断して採用を決定することは,まだまだ⁠時期尚早⁠と思われる方も多いでしょう。

ただし,人間の処理能力や採用基準のゆらぎ(能力の評価,個人の好み,相手の印象の違いなど)を考えれば,いずれ採用活動の量と質の問題がやってきます。迅速かつ公平で,質の高い採用を推し進めるのであれば,採用側と応募側の双方にとってメリットの多い「HRTech」のサービスがこれから拡大していくのは,当然なのかもしれません。

マイニングが生み出す,新たな収益構造

Coinhive – Monero JavaScript Mining

仮想通貨「Monero」のマイニング(採掘)によって各種サービスを提供する「Coinhive」のウェブサイト,⁠Coinhive – Monero JavaScript Mining』です。

図2 仮想通貨のマイニングで各種サービスを提供する「Coinhive」のウェブサイト

図2 仮想通貨のマイニングで各種サービスを提供する「Coinhive」のウェブサイト

「Coinhive」は,JavaScriptのコードを埋め込んだウェブサイトを閲覧したユーザーに仮想通貨をマイニングさせることで,特定のリンク先に移動する「短縮URLサービス」⁠人間かマシンを判別する「Captcha代替サービス」⁠さまざまなウェブサービスに導入できる「APIの提供」などのサービスを提供しています。

ユーザーがマイニングした仮想通貨の収益は,7割がウェブサイトの運営者に,3割が手数料として「Coinhive」側に配分されるという仕組みです。

仮想通貨は新たなルールを生み出すか

1ヶ月ほど前,BitTorrentファイルの共有サイト「The Pirate Bay」を利用するユーザーたちが,特定のページにアクセスする度にPCのCPU使用率が上昇することに気づき始めました。さまざまな憶測が流れる中,ウェブサイトの運営側から「ユーザーのPCを使って仮想通貨をマイニングする⁠実験⁠を行っていた」ことが発表されました。この時,⁠The Pirate Bay」で利用されていたのが「Coinhive」で,その名前が広く知られるようになりました。

「The Pirate Bay」⁠実験行為⁠は,ユーザーの許可なくマイニングが行われたことで多くの批判を浴びました。さらに「Coihive」を利用したChromeの拡張機能やマルバタイジング(クリックするとマルウェアサイトに転送されるてしまう悪質な広告)などが「マルウェア開発者の収益源になっているのでは」という疑念から,現在,多くのコンテンツブロッカー(広告ブロック)やアンチウイルスソフトが「Coihive」をブロック対象としています。

図3 ⁠Coinhive」が新たに提供した「AuthineMine」は,ウィンドウを表示してユーザーにマイニングの同意を尋ねる仕組み

図3 「Coinhive」が新たに提供した「AuthineMine」は,ウィンドウを表示してユーザーにマイニングの同意を尋ねる仕組み

上記の批判については「Coinhive」も謝罪し,素早い対応を行っています。Coinhive』を迷惑な広告の代替手段にすることを意図していた」ということで,⁠AuthineMine」⁠ユーザーの許可がなければマイニングできない仕組み)を新たに用意し,アンチウイルスソフトなどのブロック対象から外すことを要請しています。

「The Pirate Bay」の件では,事前にマイニングすることを明示して,閲覧するユーザーにマイニングの許可を求めていれば,批判は避けられたと思います。コンテンツ内に大量の広告が表示されるウェブサイトやサービスの現状を考えれば,マイニングの方が良いと思うユーザーも少なくないでしょう。

コンテンツの提供側は,マイニングの利用によって,ユーザーがコンテンツを閲覧したタイミングで収益が得られます。また長い文章や動画など,ユーザーの滞在時間が長いコンテンツを提供するウェブサイトやサービスは,より大きな収入を得られる可能性があります。

こうした理由から,個人的には「Coinhive」に可能性を感じています。ただし,現時点では,広告の表示回数とCTR(クリック率)を増やすことが,最も効率よく収益を上げる手段であることは否定できません。それでも,大量の広告表示以外の選択肢が増えることは,コンテンツの提供側にとって多くのメリットがあるでしょう。投機の対象としてではなく,仮想通貨の特性を生かした新たなルールの登場が,世の中を変える日も近いかもしれません。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。

コメント

コメントの記入