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第3回可読性を高める(2)言葉の意味を分かりやすくしよう

直接会って何かを伝えるときには、身振り手振り、表情、声色など、あらゆる表現手段を駆使することが出来ます。しかし文章は、基本的に言葉だけで意図することを伝えなければなりません。

また日常の会話でも、聞き取りにくい・分かりにくい言葉があると話をうまく理解出来ないものですが、文章の場合はそれがもっとシビアです。会話の基本である「相手のことを考えて話す」ことを忘れず、ユーザーの立場で一つ一つの言葉を選ぶように心がけましょう。

言葉と言葉の切れ目を分かりやくする

人は、文章という文字列の中から、一つ一つの言葉を切り出しながら内容を読み取っていきます。英文では一つ一つの単語をスペースで区切って記述していきますが(分かち書き⁠⁠、日本語の場合はそういった区切り方はあまり使いません。もし文中に似たような種別の文字ばかり連続する部分があると、その都度知っている言葉を当てはめて"つぶ"を分けていくしかなく、読んでいてひどく疲れます。

以下の例文を参考に、一つ一つの言葉の切れ目が、考えずとも一目でわかるようにしておきましょう。

【例】

同じ種別の文字が連続しないよう言葉を置き換える
  • 「即時対応致します」
    ⁠速やかに対応させて頂きます」
言葉の切れ目を異なる種別の文字で表記する
  • 「随時御質問下さい。なんでもおこたえいたします。」
    ⁠随時ご質問ください。何でもお答え致します。」
単語の境界を記号で囲む/区切る
  • 「サマーシーズンスペシャルセールへようこそ」
    ⁠サマーシーズン・スペシャルセール』へようこそ」
意味の切れ目に読点を打つ
  • 「わからないことがありましたらどうぞなんなりと」
    ⁠わからないことがありましたら、どうぞなんなりと」

なるべく易しい表記を選ぶ

パソコンを使って文章を書いていると、ついつい難しい漢字表記を選んでしまいがちです。漢字には、字数を縮めたり、言葉の意味をハッキリさせる効果もありますが、相手が読めない文字を使ってしまっては元も子もありません。

印刷物では読み仮名を付けるという手も良く用いられますが、Webでは今のところ一般的なスタイルではないので、固有名称などのやむを得ない場合を除いて、なるべく易しい表記を選ぶようにしましょう。

表外漢字

義務教育で教わる漢字の範囲は、国語審議会発表の「常用漢字表」がもとになっています。誰にでも読めるのはその範囲内と考え、表外の漢字は使わないようにしましょう。

【例】

  • 「ご請求先を一箇所にめることも出来ます」
    ⁠ご請求先を一か所にまとめることも出来ます」

表外音訓

常用漢字表には、それぞれの漢字の"読み"も記載されています。表外のものは避けておきましょう。

【例】

  • 「最後まであきらめず任務を完うします」
    ⁠最後まであきらめず任務を全うします」

当て字

当て字は、漢字本来の意味や読みを無視して作られた"造語"です。人によっては読めない場合がありますので、出来るだけ仮名での表記を選びましょう。

【例】

  • 出鱈目な情報は、その存在自体が社会悪です」
    デタラメな情報は、その存在自体が社会悪です」

なるべく一般的な言葉を選ぶ

持っている語彙の量や種類は人それぞれです。あなたにとって当たり前の言葉が、相手にも同じように伝わるとは限りません。ターゲットを絞り込む場合はそのセグメント(集団)に言葉を合わせることも重要ですが、まずは誰にでも通じる一般的な言葉だけで説明することを意識しましょう。

"よそゆき"の表現

人前に出す文章では、つい"よそゆき"の難しい表現を使ってしまいがちです。知的な印象を与える効果もありますが、相手によっては意味を理解出来なかったり、意味を誤認してしまう恐れもあります。また、普段使い慣れない言葉を無理に使うと、言葉の誤用を生じる危険性も増えます。子供にも通じる易しい表現を選ぶようにしましょう。

【例】

  • 「"マーケティング"を謳いながら・」
    ⁠"マーケティング"などと言っておいて・」

専門用語・略語

専門用語・略語は、知識の範囲が一致する相手にしか通じない特に難しい言葉です。出来るだけ一般的な言葉に置き換えるとともに、やむを得ず使う場合でも最初に注釈を施しておくなどの配慮が必要です。Webの特性を活かし、別途用語解説ページを用意してリンクしたり、外部の辞書サイトにリンクするといった方法も有効です。

【例】

  • LPOの導入でコンバージョンをアップさせます」
    LPO(ランディングページ最適化技術)の導入で成約率をアップさせます」

複数解釈出来る部分を無くす/曖昧な表現を避ける

文中に複数の解釈が出来る部分や曖昧な表現があると、何が"正解"なのか前後の文脈から考えなければなりません。読んでいて疲れますし、間違った解釈をしてしまう危険性もあります。以下の文例を参考に、あくまで一義的に伝わるように気をつけましょう。

【例】

修飾語・被修飾語は近づける
  • 「新たな当店のサービスは・・」
    ⁠当店の新たなサービスは・・」
    ⁠新たに(オープンした)当店のサービス」という意味にも取れる状態を回避)
舌足らずな部分に言葉を補う
  • 「新たな当店のサービスは・・」
    ⁠新たにオープンした当店のサービスは・・⁠
    ⁠当店の新たなサービス」という意味にも取れる状態を回避)
「てにをは」を正しく付ける
  • 「当店お客さまにお勧めする商品は・・」
    ⁠当店お客さまにお勧めする商品は・・」
    ⁠当店のお客さま」という意味にも取れる状態を回避)
なるべくストレートな表現を選ぶ
  • 「場合によっては保証修理が出来なくもありません。」
    ⁠保証修理が出来る場合もあります。」
    ⁠修理出来るのか出来ないのかをハッキリさせる)
  • 「食器洗剤的な用途などにも使えるような自然成分100%のクリーナーです」
    ⁠食器洗剤としての用途にも使える自然成分100%のクリーナーです」
    ⁠結局何に使うクリーナーなのかをハッキリさせる)

「最後に直せば良い」は禁物

以上のような用字用語の問題は「最後に直せば良いもの」と軽く見られがちです。しかし文章の"まとまり"は全体的な言葉のバランスの上で成り立つものです。置き換える言葉が多ければ多いほどバランスを取り直すのも大変になりますし、たった一語を置き換えただけで文章全体のバランスが崩れてしまうこともあります。最終的な確認はもちろん重要ですが、気付いた時点ですぐに直すよう習慣づけておくことが何より肝心です。

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