WSEA(Web Site Expert Academia)
【実践編】第3回 オーガニックなサイバネティクス
毎回,さまざまな分野の方をゲストに迎え『関心空間』代表取締役 前田邦宏氏との対談をお届けする『Web Site Expert Academia』。
今回は慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 田中浩也氏をゲストに迎え,ネイチャーインターフェースの話を中心に,ネットワーク社会が現状抱えている悩みまで話が弾みました。
ネイチャーインターフェース
SNSの先にあるもの
前田:
いずれの活動や作品も大好きなのですが, 正直に言うと,とても他人に説明しにくいんです。もしかすると根源的なコンセプトを十分理解できていないかもしれませんので, 今回は腑に落ちるまでお話できたらと思っています。
田中:
確かに未踏領域に入ってきていて,試行錯誤の連続なんです。僕もこの対談で問題点や曖昧な部分,コンセプトが明らかになったら良いなと思います。なのでいろいろと突っ込んでください。
前田:
では, まずこの研究を始めることになったきっかけから教えてください。
田中:
WWWで「世界」中の情報と情報のつながりができて,その後,SNSで「社会」のなかの人間と人間の新しいつながりが実現され,現在に至りますよね。その文明史の上で,近未来にネットワークがもう一段,質的に進展することがありうるとしたら,キーとなるのは「生物と生物の新しいつながり」なのではないか,という仮説を立てて研究を行っています(図1)。今までネットワークでつながるのは人間と人間だけでしたが,植物と人間,植物と動物,動物と人間というつながりがネットワーク上でできてきたら,どのような関係が生まれるだろうか? という試みです。
まずやっているのは植物です。植物には微弱な電位が走っているので,それをネットワークに配信するようなサービスを作っています。まったく別々の場所にある植物同士の情報交換や,人間がメールを通じて植物に水をあげたり,植物のほうでも水が足りなくなったら人間にメールで伝える,というようなことができます。
これは,「人間同士だけに閉じられたコミュニケーションの道具」だと多くの人がすでに持ってしまっている情報ネットワークに対する固定観念を変えるところがあって。別の生態系や生物と情報システムがどこか連続的に接続されているという新しい世界観を開くんですね。現代の多様なライフスタイルの中における植物とのコミュニケーションの可能性を拓いたり,チャンネルを豊富化するという目的も持ち合わせている実験です。これ自体は2007年度のグッドデザイン賞をいただきました。
前田:
なるほど。このコンセプトモデル(図2~4)というのは,1つ1つ作品として作られたんですか?
田中:
これは学生が整理してくれたデザインパターンです。栗林君という学生が植物をネットワークに接続するための汎用的なデバイスキットを完成させたんですが,要はそれを使うと人間がネットワーク上で活動をしている現在のシステムを応用して,「人間」という部分を全部「植物」に置き換えることができるんです。それをいろんなパターンに当てはめるとこういうアプリケーションが考えられますよ,というのを示したデザインパターンがこれ。
前田:
これ(図4)って可能なんですか?
田中:
可能です。水が足りなくなったら,植物自らが水をあげるというようなシステムを作ります。それを2個用意して,こっちに水が足りなくなったらあっちからあげて,あっちが足りなくなったらこっちから…というふうに,相互依存の関係にするとどうなるのか?という実験です。


