本記事は「WEB+DB PRESS Vol.54」に掲載された特別企画の第1章の再掲になります。
Waveがやってきた!
2009年5月サンフランシスコで開催されたGoogle I/O 2009で発表され,今秋一般プレビューも始まったGoogle Wave(注1・図1)。すでにあちこちで紹介されているので,ご存じの人も多いかと思います。
Google Waveは,単にGoogleの新しいWebサービスというだけでなく,その基盤となる技術が「Google Wave Federation Protocol」として公開されており,誰でもその開発に加われるようオープンソースとしての実装も始まっています。
注目を集めるGoogle WaveならびにWave(後述)ではありますが,まだ開発途中の技術であり,プロトコルとして未完成の部分も多々あります。今回の記事では,公式にまとめられている範囲において,現在のWaveプロトコルについて解説したいと思います。
- 注1)
- Google I/O 2009での発表,Google Waveについては次のサイトなどが参考になります。「【詳報】Google Waveとは何なのか?」(@IT)
Product,Platform,Protocol
Google Waveは3つの「P~」から構成されるといわれます。
- ① Product
- まず,GoogleによるProduct(製品)としてのWave。これは皆さんがよく目にするであろう,メールのようなチャットのような,あのGoogle Wave
- ② Platform
- 次にPlatform(プラットフォーム)としてのWave。開発者は自分の作ったアプリケーションをWaveに組み込んで動かせる
- ③ Protocol
- 最後にProtocol(プロトコル)としてのWave。Waveのしくみは技術文書として公開されているので,開発者は自分でWaveを作って運用することもできる
本記事で取り上げるのは③の「Protocol」で,Google Waveではない「自分のWave」を立ち上げることを考えていきます。
以下,本記事で「Wave」とはプロトコルを含めたフレームワーク全体を指すものとし,Googleが運用しているシステムは「Google Wave」として区別します。
Waveのデータ構造
まずは基本的な概念から整理していきます。ここではWaveの概念を電子メールとの対比で考えます。
waveとwavelet
電子メールでは,返信を繰り返した一連のメールのことを「スレッド」と呼びます。Waveの世界では,同じように繋がりのある一連のドキュメントのことをwaveと呼びます(注2)。
waveは複数のwaveletから構成されます。waveletとは,Waveにおけるアクセス管理の基本単位です。ユーザが特定のwaveを開くと,wave内のそのユーザに関連するwaveletが表示されます(注3)。
- 注2)
- 名前が同じで紛らわしいですが,技術全体を大文字の「Wave」,waveletの集合を小文字の「wave」として使い分けることにします。
- 注3)
- これをwaveの「ビュー」といいます。同一のwaveを開いても,ユーザによって異なるビューが与えられます。
waveletの構造
waveletとは,主として次の二つから構成されるデータ構造です(図2 左)。
- ドキュメントリスト(documents)
- 参加者リスト(participants)
一つのwaveletは複数のドキュメント(document,文書)から構成されます。ドキュメントはwaveletの中でツリー状に配置されます。誰かが書いたドキュメントに別の人が返信する,といった形でドキュメントは増えていきます。
ドキュメントを読み書きするには,そのwaveletの参加者(participant)に加わる必要があります。参加者には,個々のユーザに加えて,複数のユーザからなるグループ(group)や,プログラムによる自動処理を行うロボット(robot)といったものがあります。
ドキュメントの構造
個々のドキュメントは,さらに次の二つから構成されます(図2 右)。
- XMLデータ
- アノテーションリスト(key-valueペア)
ドキュメントの内容は,内部的にはXMLデータとして表されます。また,XMLとは独立したアノテーション(annotation,注釈)という形で,文字のスタイルやハイパーリンクなどの付加情報が付け加えられます。
ドキュメントには,その役割に応じてtextとdataの二種類があります。textは,ユーザによって入力されたドキュメントそのものです。textは画面に表示されます。
dataは,画面上には直接表示されないドキュメントです。たとえば,waveletに含まれるすべてのtextの全体構造がdataとして格納されます。
waveletは共有物
waveletはサーバ上で共有されます。ここが電子メールとは決定的に異なるところです。電子メールは基本的に,受け取った人の「所有物」であり,その人が自由に扱えます。一方,waveletは送り主と受取人の「共有物」であり,サーバにある実体を二人で(あるいは大勢で)操作することになります。
Waveでは,誰かに宛てたドキュメントを後から修正したり,削除することも可能です。waveletというネットワーク上の媒体を通して,参加者が同じドキュメントを編集する,というのがWaveの基本コンセプトです。

