新春特別企画

2017年のChat bot

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あけましておめでとうございます。よういちろうです。昨年はChat Botという分野が大きく前進した年となりました。今年もさらなる発展を遂げるであろうChat Botについて,本稿では取り上げてみます。

APIが公開されたメッセージングアプリ

今やスマートフォンで最も長い時間利用されているアプリは,メッセージングアプリとなりました。友人知人との連絡は,電話ではなく,メールでもなく,メッセージングアプリが主に使われている時代です。日本ではLINEが最も広く使われていますが,世界に目を向けてみると,Facebook Messenger, WeChat, WhatsApp, Tango, Viber, Kik Messengerが億以上のユーザ数をそれぞれ獲得しています。既に各国でのメッセージングアプリのシェア争いは落ち着いていて,勝敗が見えている状況です。獲得ユーザ数の伸びや,シェア争いを追っていくのは,既に余り意味のないことと言えます。ただし,Googleが昨年リリースしたAlloについては期待値も大きく,今後シェアを取っていけるかどうかは注目すべき点です。

各メッセージングアプリ開発ベンダーの視点は,昨年一斉に次のステージに移行しました。それは,メッセージングアプリの中でビジネスを回す,ということです。つまり,ユーザ間のコミュニケーションだけでなく,メッセージングアプリにもっと多様な機能をもたらすことによって,そこに経済圏を作ろうという試みが数多く行われるようになりました。スマートフォン上でユーザに長時間利用されているメッセージングアプリ内で,様々なサービスが利用可能になれば,ユーザにとってもそれは嬉しい話であり,また多くの企業にとってもサービスへのタッチポイントが増えますので,参入したい市場となります。

メッセージングアプリ内で様々なサービスを利用可能とするために,APIの公開をはじめとしたプラットフォーム化について昨年はよく耳にしたと思います。特に,ユーザ間のコミュニケーションではなく,ユーザからのメッセージを受け取って,それをプログラムが機械的に処理をして返事を返すことができる,いわゆるChat Botを開発可能な環境が提供されるようになりました。昨年のChat Botでの大きなニュースとしては,以下が挙げられるでしょう。

  • 3月に行われたMicrosoft Build 2016にて,Microsoft Bot Frameworkが発表された。
  • 4月にKikから,BotストアおよびBot APIが発表された。
  • 4月に行われたF8 2016 Developer Conferenceにて,Messenger Platformが発表された。
  • 9月に行われたLINE Developer Day 2016にて,Messaging APIが発表された。

特に,FacebookとMicrosoftの2社がそれぞれChat Botの世界に参入してきたニュースは,非常に大きな話題となりました。これによって,昨年Chat Bot市場が大きく始まったと言って良いでしょう。

Chat Botが切り開くAIという新分野

メッセージングアプリの本質は,テキストコミュニケーションです。つまり,自然言語を使った会話です。今までは人間対人間のコミュニケーションでしたが,Chat Botが登場したことによって,人間対機械というコミュニケーションがメッセージングアプリ内で行われることになります。例えて言うならば,電話でサポートセンターに電話をした時に,オペレータと会話をするだけではなく,自動応答による機械的なやり取りを想像すると近いでしょう。

様々なサービスをメッセージングアプリに持ち込もうと考えた際に,メッセージングアプリ内で友人や知人と会話をしているような体験でサービスも利用できたらと考えるのがやはり普通かと思います。つまり,日本語や英語などの自然言語でユーザが「○○したい」と打ち込むことで,その意図を正しく理解し,適切な返事をする,という,あたかもオペレータと会話をしているような感覚でサービスを利用できると良さそうです。

Chat Botが昨年話題になった際に,同時にAIという分野についても非常に多く取り上げられるようになりました。つまり,メッセージングアプリ内でChat Botを開発するためには,ユーザが打ち込んできた自然言語で表現された発言からその意図を理解することが必要であり,それにはAIを駆使して分析,解析をすることが現時点での解決策として取り組むべきことになります。

実際には,いくつかのメッセージングアプリでは,数年前からChat Botを作るための基盤は提供されていました。WeChatは2013年から,LINEにおいても2014年から,Chat Botの環境は存在しています。その中で,Chat Botを開発してきたいくつかの企業は,AIを取り入れるためにTensorFlowやWatsonといった機械学習の仕組みを導入しています。

Chat BotにおけるAIの重要性は,FacebookとMicrosoftからChat Botに関する発表が行われた際に,AI環境も開発者に提供することが発表されたことからもわかることです。

Chat BotにおけるAIは,欠かせないものとしてそのポジションを確立しつつあります。特にAlloは,GoogleアシスタントというAIを積極的に組み込んでいます。そして,Googleアシスタントによって導き出されたアクションを利用してGoogle HomeやAlloにサービスを提供するためのActions on Googleを公開しました。

過去に起きたこととして,ソーシャルアプリ/ゲームの市場が急速に大きくなるにしたがって,そのバックエンドを構築するためのクラウドサービスの市場も大きく成長しました。それと同じように,今年はChat Botの市場が大きくなるにしたがって,AIの市場も活性化していくものと思われます。様々なノウハウが共有されるでしょうし,またAIを提供するベンチャー企業も数多く立ち上がってくるものと思われます。

著者プロフィール

田中洋一郎(たなかよういちろう)

Google Developer Expert(Chrome担当)。Mash up Award 3rd 3部門同時受賞。『開発者のためのChromeガイドブック(Google Expert Series)』を出版。

Blog:https://www.eisbahn.jp/yoichiro
Twitter:@yoichiro

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