業務分析も含めた情報システム全体構築の手順としてEnterprise Architecture(EA)があります。最後にまとめとして,今回紹介したUMLを含め,EAで定義されている各モデリング手法についてざっと説明します。どの手法を使う場合も,第1章で触れたポイントを押さえておけば,要求分析でつまずく可能性は格段に下がるでしょう。
1.業務参照モデル(BRM:Business Reference Model)
対象となる組織内で行われている業務を体系的に整理するとともに,雛形となる業務モデルを作成します。BRMの中心となるのが業務分類(LOB:Line Of Business)で,業務分類に従った現行業務の分析やモデルを作成しますまた,BRMで作成したLOBが他の参照モデルを活用するための索引となります。
BRMでは,各対象組織で業務システム化されているかの一覧を作成します。この一覧は業務システム間の関連や共通業務の抽出とその方向性の明確化を行うことができます。
2.データ参照モデル(DRM:Data Reference Model)
対象となる組織内で共有される可能性の高いデータ・情報について,名称,定義および各種の属性(型,桁数など)を統一的に記述したモデルです。各組織内の業務システムで,データの共有,再利用,共有化などを図るため,共通で一貫性のある分類・記述方法を策定し,個々のデータ体系(DA)を作成する際に参照すべき標準を作成します。これにより,各組織間で統合されたデータ,情報の構築が可能となります。
3.サービスコンポーネント参照モデル(SRM:Service component Reference Model)
アプリケーションを機能(サービス)の観点から標準化し,再利用を可能とするためのモデルです。アプリケーションを機能的な側面からソフトウェア部品(コンポーネント)として分類,体系化して公開することで,新しいシステムを開発する際に必要な機能を実現するコンポーネントを探しやすくします。
コンポーネントにはいくつかの粒度(大きさ)があり,サービスコンポーネント参照モデル(SRM)が一般的に規定されているコンポーネントの粒度には以下の4つがあります。
分散コンポーネント
最小粒度のコンポーネントであり,明確なインターフェース,およびインターフェースと分離された実装から構成され,提供されます。
ビジネスコンポーネント
ひとつの自立したビジネス機能を実装したコンポーネントで,自律的なビジネスプロセスやビジネスコンセプトを提供します。
- ビジネスコンポーネントシステム
- ビジネスコンポーネントの集まりで,複数のビジネスコンポーネントが連携してビジネス機能を実現するための機能一式が提供されます。
- 連携コンポーネント
- ビジネスコンポーネントシステムの集まりで,複数のビジネスコンポーネントシステムが連携してビジネス機能を実現するための機能一式が1つのビジネスコンポーネントシステムとして提供されます。
4.技術参照モデル(TRM:Technical Reference Model)
業務システムの構築・運用において,以下の3点を技術アーキテクチャ(TA)として考慮しながら作成します。
- 相互運用性(Interoperability)
- 可搬性(Portability)
- 拡張容易性(Scalability)
そして,作成する技術アーキテクチャを4つに分類して作成します。
アプリケーションソフトウェア
各組織で利用される業務プログラムやオフィス業務で利用されるプログラムが含まれます。
アプリケーションプラットフォーム
アプリケーションソフトウェアが動作するために必要なOS,ミドルソフトウェア,データベース管理システムなどが含まれます。
外部環境
ネットワークやディスクなどのハードウェアが含まれます。
共通基盤
セキュリティや管理など全体を通して構築される情報システムの基盤を指します。これらはさらに個々の技術レベルまで細かく細分化されそれぞれがサービスとして提供されます。
EAについては経済産業省から「EAの主要概念」として公開されています。詳細については下記URLを参照してください。
- 経済産業省 EAの主要概念
- URL:http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ea/gainen/index.html
また,EAで定義はされていませんが,業務分析手法として以下の手法もあります。
