小飼弾のアルファギークに逢いたい♥

#1⁠株⁠はてな 近藤淳也・令子 × 小飼弾・直美(中編)

はてなの成長

弾:これからはてなを大きくしていくにあたって、どういう手でいこうと思いますか? 外のユーザから見たはてなというのは、急に成長して、急にドカーンと落っこちる同業者が多い中では、成長がゆっくりではないですか。たとえばこの間40万人目のユーザが来ましたといってましたよね。何で老舗のはてなは、これだけ今までは成長が確実ではあったけれどゆっくりだったのか。

淳也:いろいろな要因はあると思いますけれど、一般の、多くの方に届ける努力を怠っているというところはあると思います。この辺まで作って、わかってもらえたらそれでいいみたいなところが若干あるので、課題だとは思っています。新しいものをどんどん求めていく姿勢を失うと、ここまではバーンと上がったけれど、そのあとは続かないということがあると思うので、新しいものに対する姿勢を失わないながら、いかにたくさんの人に届けられるか、その両方をいかにやっていけるか。その意味では、今いる(はてなの)メンバーはどこまでも前に進みたがるんですけど、作ったものを後ろできれいにまとめたり、人に届けたりっていう人ももっといるかなと。

小飼弾さん(撮影:武田康宏)
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弾:その一方で、40万人の内訳を見てみると、Webで一番ブログが好きな人たちが使っているという印象もありますよね。たとえば、フィードメーター[1]のランキングとかを見ると、トップはほとんどはてなのブログですよね。だから、質から量に転換というときに、必ず彼らから文句が出ると思うんです。⁠はてなはもう昔のはてなじゃない!!」みたいなことを言う人たちが絶対に出ると思うんですよ。

淳也:そこは最後まで失わないでいたいというのは一番強く思っていて、そもそも、⁠ブログの)書き手を集めることが大事なのか、読み手を集めるほうが大事なのかというのは、本当は書き手が少なくて読み手が多いほうがビジネス的には有利だったりするかもしれないですし、その意味では会員数だけが唯一の指標だとは思っていないです。本当に良い書き手というか、僕たちが読みたいブログが出ていってしまうことほど悲しいことはないというのはあるんですけれど、別にそれはどっちを取るかという話ではなく、両立はできると思っています。たとえば使いやすい道具とは何かって考えたときに、⁠道具としてのサービスが)使いやすければ文章書くよっていう人が世の中にはいっぱいいて、一方で(使い方の説明を)よく読んでも意味がわからないからはてなが使えないという人がもしいるんだとしたら、それはちゃんと僕たちが説明をすればいいということなので。

標準の耐えられない軽さ

弾:はてなは今後、世界の標準を作りたいと言われていますよね。技術の上での標準というのは、普及しているいないではなくて、このとおりにやればこのとおりに動くということです。ネジにたとえると、はてなが作ったネジ穴に、僕が作ったネジでも収まる。これが標準。はてなが欲しい標準というのはどんなネジですか?

近藤淳也さん(撮影:武田康宏)
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淳也:たとえば、トラックバックの例をよく出しますけれど、ブログとブログが繋がり合う方法を考えるときに、トラックバックというしくみを作ればいいんじゃないかとSix Apartの人が考え付く。そのとき自社の製品だけにとどまらずに、ちゃんと標準化ということを呼びかけられたわけですよね。それで標準化されていると思うんです。そういう意味では僕たち自身もキーワードのリンクだとか、リンク元の記録だとか、お互いのブログを繋ぐ機能をどんどん作ってはいたんですけれど、独自機能みたいな感じに言われてしまう。

弾:そうなると、欲しいのはドキュメントを書く人ですよね。僕は個人で標準を握っていて[2]⁠、Perlの世界で文字コードと付き合いたかったら、僕の標準に嫌でも合わせなきゃならない。ですが、そういう標準を守っていくというのは本当に退屈で、つまらなくて、1つ感謝の言葉があれば10文句が来るという世界でもあります。心理的にあまりカタルシスはないよというのは先に申し上げておきます。

編集部注)
本対談は2006年5月に行われたものです。

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