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#9 Pathtraq 奥 一穂(後編) 「この世の森羅万象の9割はクソ」なのか

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サイボウズ・ラボ(株)開発者の奥一穂さんへのインタビューの後編です。

オススメの使い方

弾:オススメの使い方ってありますか?

奥:個人的には,Pathtraq入れてから,livedoor Reader見る機会が減ったんですよね。

弾:あはははは。

奥:それがいいのか悪いのかっていうのはありますけど。ある程度の数のおもしろい情報を拾ってきてくれるので,わざわざ自分で探しにいかなくてもよくなりつつあります。livedoor Readerでおもしろい情報を得ようと思うと,いっぱいRSS登録しなきゃいけなくて,それだとS/N比注1が下がるんですよね。

弾:まぁおっしゃる通りですよね。はい。

奥:もちろん4000フィードとか登録して…。

弾:中の人とかね(笑)。

奥:それで超高速で見ていく能力があればいいんでしょうけども。個人的にそこまでして読みたいネタがどんだけあるかっていうのがあるので。まぁ自動的なほうが楽は楽だよねっていう感じですね。

注1)
信号量(S)とノイズ(N)の比。Signal to Noise ratio。

スタージョンの法則

弾:S/N比っていうのは,僕は結構割り切ってるんですよ。「スタージョンの法則」っていう言葉を聞いたことあります?

奥:どういうの?

弾:要は「SFの9割はクソ」だと。なぜなら,「この世の森羅万象の9割はクソ」だから。どんな対象を見ても使えるものは1割しかありませんっていうような意味で使われてるんですけど。だから逆にS/N比は,一定以上やるとこれ以上,下げようがないというような,閾値があるような気がするんですよね。

奥:一つ思うのは,SFに関してそういう発言が出るのは母数が少ないからじゃないんですかっていうことです。たとえばSFの読者の多くは,何種類かのSF雑誌を読んでいるとか,そういうのが背景にありますよね。でもじゃあ古典文学だったらどうかっていったら,実はみんなが読んでるのはごく一部で,みんながずっと歴史を通じて選んできた名作と呼ばれるものなのかなと。

弾:その場合は歴史がフィルターの役割をしているわけですよね。歴史的なフィルターを含んでもいいとこ2割だっていうのが,僕の意見です。

奥:なるほど。

弾:人に教えてもらうとかしてフィルターの精度を思いっきり上げても,やっぱり8割はゴミなのかなぁっていう(笑)。ましてや,フィルターがなければそんなもんじゃ済まないわけですよね。

奥:まあそうですね。一方でここ10年くらい見ると,やっぱり情報の発信量が増えているでしょうから,ある意味S/N比が下がってきているのかもしれないですけど…。

メディアの価値

弾:Pathtraqみたいなものの根源的な欠点っていうのは,Pathtraqを利用者が使ってくれるほど,より世界を忠実に反映したデータになるわけじゃないですか。ところが,最初のうちはとんがった人たちが飛びつくわけですね。どんなWebサービスでもそうですけども。ですから最初のうちに集まったデータというのは,どうしても世の中のありのままの姿と比べてゆがんだ形になりますよね。たとえばYahoo!とはてなブックマークを比べればわかると思うんですけども,そういう偏りはPathtraqを続けるに従って減ってきてるという感覚は得てます?

奥:まず,今得られたデータをどういう風に切って見せるのか,という問題があると思うんですよ。得られてるデータがたとえば円錐だったとします。横から見ればとがってますよね。下から見れば丸いんですよ。そういう形で,たとえばITニュースみたいな切り口をするのか,2chコピペブログみたいな切り口にするのか,どういう切り口をデフォルトで提供するかっていうのは,結構大きな問題だと思います。もう一つは,じゃあ最初の母集団がとがっててそもそも問題なのかっていうところで,メディアの価値っていうのはデータを送る人と受ける人の落差なんですよ。そういう意味で言うと,みんなが使っていて,みんなが見た後のページの情報をとっても実は全然メディアとしての意味がない。統計としては意味がありますけど,たぶんそれだとそんなに需要がない。だからやっぱり出来るだけ,まずはニッチな人に使ってもらって,じゃあそこまでニッチじゃない人にとって便利なツールになる。そういう形で,一番上にいる人たちと,その次の人たちの間で今コミュニケーションがあって,次にもう一段下の人と,さらに一段下の人とのコミュニケーションが出来る。そういうふうにできればいいと思っているので,最初にとがってる人(のログ)が取れてるっていうのは正解なんだろうと思っています。逆にそういう形にしないと,一気にマスを狙うっていうのは中々難しいですよね,資本的な問題とか,コミュニケーションの問題とか。

優れたエンジニア

弾:奥さんにとって,どんな人が優れたエンジニアに見えますか?

奥:たとえば自分が実際に必要としてるエンジニアは,Pathtraqで言うと,デザインとかをちゃんと見れるような人だったりするわけです。ユーザビリティとか。でも一方,自分がどういうエンジニアが優れてるっていうか,おもしろいなと思うか,自分の興味の対象としていうと,もっとエッジなアプリケーション作っている人たちは自分の仕事にとっての刺激にはなりますよね。その辺で当然,どういう夢を見るかによって変わる話だと思います。どっちもまぁ,必要という感じですね。あるいは,請求書を書く人が必要ですし(笑)。

長いスパンでものを考える力

弾:最後に,長いスパンで物を見る力を養うにはどうしたらいいでしょう。

奥:Webというのは手段だと思うんです。自分の場合,コミュニケーションの形態とはどういうものかとか,そのためにどんなツールが今後出てくるのかとか,そういう形で見ていて,必ずしもWebじゃなくてもコミュニケーションは取れるわけじゃないですか。たぶん,その辺を考えていく必要があるんだろうなって思います。たとえばsalesforce.comはもともとWebじゃなかったわけですし。「Webは手段」ということは重要なのかなって思います。

サイボウズ・ラボ オフィスにて(撮影:武田康宏)

サイボウズ・ラボ オフィスにて(撮影:武田康宏)

著者プロフィール

小飼弾(こがいだん)

ブロガー/オープンソースプログラマー/投資家などなど。ディーエイエヌ(有)代表取締役。1999~2001年(株)オン・ザ・エッヂ(現(株)ライブドア)取締役最高技術責任者(CTO)。プログラミング言語Perlでは,標準添付最大のモジュールEncodeのメンテナンス担当。著書に『アルファギークに逢ってきた』(2008年5月,技術評論社)。ブログは『404 Blog Not Found』

URLhttp://blog.livedoor.jp/dankogai/

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