ビジネスがわからないシステム屋はいらない!?

第2回 システムだけでは解決できない

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第2回は,⁠経営や現場の視点」という観点でお話をします。

システムにどこまで求めるか?

新たにSFA(Sales Force Automation)を導入したものの,なかなか営業現場で使われず,受注確度はバラつき,顧客情報の抜け・モレは当たり前という会社があります。最新の顧客情報は手帳に貼り付けた付箋や,PCの表計算ソフトにあります。そして,最もホットな情報は営業マンの頭の中にあり,⁠この大事な情報を他の人に渡してなるものか!」と競争意識むき出しです。

SFAベンダであるあなたは,この会社から「SFA導入に大きなコストをかけたのに,効果が上がっていない。どうしてくれる?」と詰め寄られました。もちろん,あなたにはあなたの言い分があります。⁠うちはやることはやったし,そこまで面倒は見切れない…」と心の中で叫んでいます。

エンドユーザの本質的問題を事前に知りたい

後になって,お客様の会社は,営業マンの評価基準が営業案件の成約ではなく,見込み案件の件数と金額でなされていることがわかりました。したがって,受注確度が低くても営業マンはどんどんデータを入力してしまい,結果の伴わない見込み数字ばかりが積み上げられます。どうやら,使い勝手にも不満がある様子です。営業予算の予実報告は,毎週の営業会議でマネージャが幹部に行っていますが,マネージャ自身も予算そのものの達成に疑問を持っており,⁠できもしない数字が上から降ってくる」と思っています。

さて,このような問題や体質を,システム開発の前にあらかじめわかっていたら,あなたは開発や導入をどのように行いますか?

経営と現場の視点から見ると,システム導入の前にやることがある!

この場合,営業マン一人ひとりの行動を決めているのはモチベーションであり,インセンティブの与え方や評価制度です。ということは,マネージャや経営にも問題がありそうです。この会社の場合,システム導入だけでは本質的には解決しそうにありません。営業予算を決めているのは,より上位の経営計画です。予算と実績に大きな乖離がある場合,経営計画の中身や作り方,現場への落とし込み方に問題があると考えられます。

SFAと営業プロセスの整合をどう取るか,制度やルールをどう変えればいいのか,そしてそれは誰が行うのか?経営と現場の視点で見ると,システム導入以前に問題がたくさんあったのです。

エンドユーザの環境づくり

経営課題を挙げれば,売上拡大・コスト削減・業務効率化・品質向上・人材育成・財務基盤の安定化・企業認知度の向上・CS向上など,きりがありません。たとえば,コスト削減が最重要経営課題である場合,システム導入の初期投資を上回るリターンを出さなければなりません。お客様からすれば,システムはあくまでもツールなので,システムを導入したところがスタートラインです。システムを用いてどれだけ効率化が図れ,結果的にどれだけコストが落ちたのかが問われます。⁠使われないシステム」では効果ゼロで,高い買い物をしたに過ぎません。

期待を上回る効果を出すために,お客様の経営課題や現場に潜む問題,そしてシステム導入に伴う環境づくりまでを,システム屋がその視野に入れる必要があります。システム導入に伴い,業務プロセスはシステムの使用を前提としたものに変わります。業務プロセスが変わると各担当部門の役割,責任,権限も変わり,情報共有や意思決定のやり方も変わります。そのためには,エンドユーザのシステムを使う環境構築支援を,システム屋が行うことが必須となります。

何をどこまでシステムで解決するのか(目的と範囲の明確化)

システムで解決できる課題と解決できない課題を切り分けることが鍵です。この切り分けができるかできないかによって,システムの要件定義をはじめ課題解決にむけた取り組み方が大きく変わります。目的あってのシステム導入ですから,まずは目的を定め,次にどこまでシステムで解決するのかを初期段階で経営や現場のエンドユーザと徹底的に議論し,はっきりさせます。システム以外の要素として,経営の知識・業務の知識をはじめ,問題発見や問題解決の思考,客観性なども新たに必要となってきます。

現状調査と業務分析のやり方を変える

現状調査と業務分析の目的は,システム導入だけではありません。

「何だって?」と思われる方も多いでしょうが,システム屋の皆さんには多かれ少なかれ経験があるはずです。通常,要件定義には,ITや業務コンサルタントが相当の時間と費用をかけて行います。その時に,経営や現場の泥臭い問題をかなり多く聞くはずです。そして,この泥臭い問題こそがシステム開発に大きく関係します。ベテランのITコンサルタントはこの声の聞きだし方に長けています。

全ての課題をシステム導入で解決できなくても,⁠システムで解決できない問題としては○があり,システム稼動後に△の影響を与えるリスクがあります。このリスクを回避するためには□が不可欠です」と,ビジネス上の課題解決の方向性を提案できれば,システム屋としてワンランク上のステージに立つことになります。


経営や現場の視点で見るとシステムの見え方が変わります。見え方が変わると,システムの設計や導入のやり方が変わります。多角的,かつ多面的に見ることで,多くの問題は解決できるものになります。そのためには,現状調査と業務分析の目的をシステム導入以外にも拡げることです。

次回が最終回ですが,システム導入に止まらない現状調査・業務分析のやり方をご紹介します。ビジネス主導として経営を知り,現場をいかに巻き込んでいくかというお話をします。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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