[公式]Evernote API徹底活用レシピ

第13回 [特別編]ETCフォローアップレポート(その1)

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投資活動のポイント

「企業に投資するとき,どんな点に着眼しますか?」とガイ氏。ティム氏は「毎日使えるもの」であることが一番大切であり,B-Bには滅多に投資しないという。自分で毎日使って,よいと思えるものであればユーザとしての宣伝もしやすい。ロエロフ氏は次のように答える。⁠今著名な起業家でも,起業したばかりの頃は無名だった。だから,投資をする時点ではまだ証明されていない人たちが大半だ。PayPal創業者の一人,マックス・レブチンはPayPalの前に会社を2つ潰していて,クレジットカードを作る許可も出なかった。注目すべきは証明されていない起業家だ」⁠

このロエロフ氏の答えにガイ氏は驚いてみせ,⁠そうしたことをVCが公でいうのを聞くのは初めてだ。ほとんどのVCは投資家への建前上,証明された起業家,証明されたビジネスモデル,証明されたマーケットが大切だというからね」とコメント。ロエロフ氏は続けて話す。⁠うわべはなく,本質を見ることだよ。完璧なプレゼンテーション,紺色のジャケットにチノパンなんていうのは大抵悪いサインだ。セコイアに在籍した8年半の今までにした最高の投資では,初めて話をしたときにそのチームはプレゼンさえ用意していなかった。肝心なのは本質を見抜くことだ。証明されていない人だけれども,突き抜けていてやる気があり,問題に対する鋭い目をもって,誰にもできなかったようなやり方で問題を解決することができるかを見抜くことだ」⁠

「投資しようとするまでどのぐらい時間をかけますか?」とガイ氏は続けて尋ねる。⁠経営上の数字を分析したりして決断をする場合には時間をかけるのが普通だが,最初の10分で意気投合して決めたこともある」とティム氏。

ロエロフ氏は「始めの15分間で大体決まる。ただ,即座に良いアイディアだと惚れ込んで素晴らしいアイデアだと思っても,同じことをすでにやっている会社が多数あるかもしれないからデュー・ディリジェンスをきちんとすることが大切」と答え,次のように強調した。

「ただ,最初のミーティングで煮え切らない感触しかなくて投資に至ったことは一度もない」⁠これには,ティム氏も同意。ガイ氏も非常に興味深い点だと指摘し,煮え切らない感触で会議室を出た後に,追加のスライドや資料を送るなどというケースで上手くいった試しはないと語った。

決め手は最初の10~15分

エレベーターピッチという表現があるが,もう少し時間が長く与えられた場合でも,始めの10~15分が投資家と話をする場合に一番肝心な決め手となるようだ。ガイ氏は,そのゴールデンタイムにくだらない話をする起業家が多いという。曽祖父がアメリカどうやって来たかだとか,サマーインターンシップの話だとかしてしまって,肝心の製品の話が出てこないのだそうだ。

では,貴重な始めの10~15分間に何を話すべきなのか。ロエロフ氏は ⁠プロダクトに対する洞察を聞きたい,解決しようとしている問題は何なのか,なぜソリューションが今まで存在しなかったのか,自分のソリューションがどうしてよいと思うのかを聞きたい」という。ティム氏は ⁠自分でもどうやってその製品を使えるかが知りたい。Evernoteに投資したときも,実際に自分で使って納得した」と述べた。

企業コストの大幅な低下

今日,起業するためのコストは5~10年前に比べて劇的に安くなった。ツールはオープンソースで手に入るし,マーケティングはTwitter,Facebook,Google+でできる。不動産がなくてもバーチャルやリモートで働けるし,不景気になると雇用も安くつく。すべてが無料もしくは格安な環境において,エンジェル投資家やベンチャーキャピタリストの役割は何であろうか。⁠プロダクトのコンバージョンやメデイアを利用しての宣伝などに貢献することができる」というティム氏。ロエロフ氏は「確かに,起業するコストは劇的に安くなった。結果として,よいプロダクトが最終的には生き残る環境が整ったのはよいことだ」という。⁠たとえば,ユーザの率直な意見は公のものとなり,適当なマーケティング戦略は通用しなくなった。しかし,長期的に持続する会社をつくるには他も必要なリソースが沢山ある。スケールする資金に加え,例えば,リクルーティングや戦略アドバイスが必要。Evernoteの場合でも,セコイアのネットワークから何人か人を紹介している」

さまざまな内容の話が進められた

さまざまな内容の話が進められた

リスクと決断

以上,セッションはざっとこんな流れで進行した。起業するにあたってのヒントをいくつか垣間見ることができたのではないだろうか。起業にリスクはつきもの,そして決断にはタイミングというものがある。セッション後のQ&Aでは,そんなことがとくに話題になった。

セコイアのロエロフ氏は「長くやり続けるより,早く止めすぎるほうがリスクが高い。起業家というのは普通の人よりも早く気づく人たちだ。マーケットが成熟するまでもう少しやり続けるほうが正しい場合が多い」という。たとえば,Jawboneはスタンフォード大学の学生2人がノイズキャンセリングヘッドホンのアイデアを題材に'99年に創業したが,当時はBluetoothの技術がなかなか進化せずマーケットのタイミングが悪く倒産。しかし創業者たちは諦めなかった。そうこうしているうちにBluetoothの技術がついに成熟して会社を再建することができたのだ。

状況は常に変わり続ける,その変化に柔軟に対応していくことが大切なのである。リスクを取ることについてティム氏は,最悪の事態に陥った場合をよく想定してみることだと強調した。毎日ラーメンばかり食べ続けても大丈夫か,お金がなくなったら元の仕事に戻れるかだとか,納得できるまで考えて見るということだ。そもそも,絶対に安全な状況というものはなかなかないものだ。安全な職業だと思って選んだものが斜陽になってしまうことは多々ある。周りを見回して見ても,2000年代半ばに安全だと考えて投資銀行に就職した人たちと起業したりスタートアップに就職した人を比較した場合,リーマン・ショックの後何が起こったかを考えてみればわかる。最後に,ガイ氏が「多くの場合,最悪事態はそれほど悪くはない。けれども,最高の場合はもの凄くよい」とコメントしたのは印象深い。

本セッションの全録画がこちらにあるので,興味のある人は通して見てみることを是非お勧めする。

著者プロフィール

松原晶子(まつばらあきこ)

ソフトウェアエンジニアリングおよびテクノロジーマネージメントを専門としたプロフェッショナル。アドビ システムズの米国本社にてソフトウェアエンジニアとして約10年間勤務の経験を持つ。また,シリコンバレーベンチャー企業にてプロジェクトマネージメントにも従事。シリコンバレーで働く技術者を中心とした日本人プロフェッショナルを支援するNPO,Japanese Technology Professionals Association(JTPA)の共同代表も務める。

Twitter: @kokiara

Blog:http://kokiara.blogspot.com/

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