本連載もいよいよ最終回を迎えました。ここまで開発してきたアプリケーションを、App Store上で全世界に公開する手順を解説し、これまでのまとめを行います。
アプリの登録に必要なもの
App Storeへアプリを登録するためには、以下のものを用意する必要があります。
57×57ピクセルのアイコン
512×512ピクセルのアイコン (JPEGまたはTIFF)
スクリーンショット
アイコンを作る
アイコンは、アプリを起動するためのホーム画面に並ぶアイコン用に57×57ピクセルの物と、iTunesのApp Store上で表示するために512×512ピクセルの物の2種類が必要です。そこで、はじめに512×512ピクセルのアイコンを作っておき、それを57×57ピクセルに縮小すると手間を省くことができます。もちろん、App Store用とアプリ用でアイコンを別の物にしても構いません。
アイコンは2つ用意する
気をつけなければならないのは、アプリ用の小さいアイコンはPNG形式でかまわないのですが、App Store用の大きいアイコンはJPEGかTIFFで保存しておく必要があるということです。プレビューなどを使って保存する際に形式を間違えないようにしましょう。小さいアイコンはアプリをビルドする際にアプリの中に含めてしまいます。一方で大きいアイコンはアプリをApp Storeに登録する際に別途提出する必要があります。
アプリにアイコンを設定
小さいアイコンはあらかじめアプリのホームアイコンとして設定し、ビルドしてアプリに含めておく必要があります。アイコンのファイル名を「Icon.png」とし、PNG形式で保存してください。
アプリのXcodeプロジェクトを開き、左側にある「Resources」フォルダにアイコンファイルをドラッグアンドドロップします。
アイコンファイルをResourcesに入れる
ダイアログが表示されますので、上部「デスティネーショングループのフォルダに項目をコピーする(必要な場合)」にチェックを入れ、下部「ターゲットに追加」のリストにチェックが入っていることを確認して「追加」をクリックします。
ファイルのインポート設定
これで、アイコンファイルであるIcon.pngがプロジェクトに追加されました。次にこのファイルをアプリのアイコンとして設定します。
同じResourcesフォルダにある「Info.plist」をクリックすると、エディタにファイルの中身が表示されます(ダブルクリックで開いてもかまいません) 。このリスト中の「Icon file」の項目に、先ほどのアイコンのファイル名「Icon.png」を入力してください。
アイコンファイルの指定
概要でターゲット(SimulatorまたはDevice)を選択して「ビルドして進行」で実行してみてください。その後iPhoneシミュレーターまたはデバイスのホームボタンを押してホーム画面に戻り、アプリにアイコンが表示されていれば成功です。
スクリーンショットを撮る
スクリーンショットは、Xcodeのオーガナイザを使って撮ることができます。デバイスが接続された状態で、オーガナイザから「Screenshot」タブを選択します。
スクリーンショットの撮影
右下にある「Capture」ボタンを押すと、接続されているデバイスで現在表示されている画面が撮影されますので、アプリを起動した状態でこのボタンを押してスクリーンショットを撮りましょう。撮影した画像は左側に並びますので、使用したいものを選択し、右側に表示された大きな画像をデスクトップなどの適当な場所にドラッグアンドドロップして保存します。
このままでは上部のステータスバーが余計なので、プレビューを使って取り除きましょう。保存したファイルを開きます。
ステータスバー部分を取り除く
ステータスバー以外の部分を選択ツールで選択し、メニューのツールから「切り取り」を実行して完了です。保存する際はメニューのファイルから「別名で保存...」を選択し、フォーマットで「JPEG」を選択して保存しましょう。
JPEG形式で保存
スクリーンショットは少なくとも1枚、必要に応じて2~3枚を用意しておきます。
アプリの名前を決める
名前をつける際の注意点
アプリの名前は、ホーム画面でアイコンの下に表示されます。日本語でも英語でも構いませんが、あまり長い名前にしてしまうと入りきらずに省略して表示されてしまいます。これでは見た目も良くないので、長い名前にならないように注意しましょう。
省略されてしまったアプリ名
名前を変更する
何もしない状態ではXcodeプロジェクトの名前がそのままアプリ名となりますので、変更がない場合はこのままで構いません。アプリ名を変更したい場合は、先ほどアイコンを設定した時に編集したInfo.plistにある「Bundle display name」の項目を、好きなアプリ名に変更します。
アプリ名を変更する
変更が完了したら、保存してビルドしましょう。iPhone シミュレータかデバイスで実行てホーム画面に戻り、アプリ名が省略されていないことを確認してください。
その他の設定
Info.plistには、これらのほかにもいくつか変更しておかなければならない項目があります。
画面構成が日本語の場合や日本のApp Store向けのアプリでは「Localization native development region」の項目を「Japan」に変更します。
「Bundle identifier」の項目に設定されている「com.yourcompany」の部分を、自分を識別するためのキーワードに変更します。これはiPhoneやApp Storeで個々のアプリを識別するために使われますので、できるだけ他の開発者と重複しないようなものを選びましょう。
「Bundle version」の項目にはアプリのバージョンを設定します。通常は「1.0」のままで構いません。
編集後のInfo.plist
編集が完了したら忘れずに保存しましょう。
ディストリビューションビルドの作成
App Storeで配布するアプリは、開発中にiPhone シミュレータやデバイスで動かしたアプリとは別に「ディストリビューション」と呼ばれる形式でビルドされたものを用意する必要があります。デバイスで動作させた際と同様に、プロビジョニングを作成します。
プロビジョニングの作成
前回デバイスのプロビジョニングを作成した時と同様に、iPhone Dev CenterからProgram Portalへ移動し、以下の手順で設定を行います。
証明書要求の登録
左側から「Certificates」を選択し、「 Distribution」タブをクリックします。
Distributionを選択
前回、デバイスのための証明書要求を登録した時と同じ手順で、ファイルを選択して登録しましょう。完了したら証明書をダウンロードしてインストールします。
Provisioning Profileの作成
こちらも前回と同様です。左側から「Provisioning」を選択し、「 Distribution」タブをクリックします。「 Distribution Method」では「App Store」を、その他は前回に習って入力し、Submitをクリックして作成します。作成したプロビジョニングをダウンロードしてインストールします。
プロビジョニングの作成
プロジェクトの設定
ディストリビューションビルドを作成するために、プロジェクトの構成を追加します。Xcodeのメニューから「プロジェクト」 →「 プロジェクト設定の編集」を選択し「構成」タブをクリックします。
プロジェクトの構成リスト
リストの中にある「Release」を選択した状態で左下の「複製」をクリックすると「Releaseのコピー」が作成されますので、名前を「Distribution」に変更します。完了したら「ビルド」タブを選択し、構成で「Distribution」を選択します。
ディストリビューションビルドの設定
デバイスで動かす際にも選択した「コード署名ID」にある「Any iPhone OS Device」の項目で、先ほどインストールしたディストリビューション用のプロビジョニングを選択します。これでプロジェクトの設定は完了です。
ビルド
Xcodeのメインウィンドウに戻り、概要でアクティブなSDKに「Device」を、アクティブな構成に「Distribution」を選択します。ディストリビューションビルドで作られた物は直接デバイスで動かすことはできませんので、今回は「ビルドして進行」ではなく、Xcodeの「ビルド」メニューから「ビルド」を実行してビルドだけを行います。
構成を選択してビルド
ビルドが完了すると、プロジェクトが保存されているフォルダにある「build」フォルダの中に「Distribution-iphoneos」というフォルダができています。そこに拡張子がappのファイルができていますので、ファイルを右クリックして「"(プロジェクト名).app"を圧縮」を選択してください。
アプリのファイルを圧縮
同じフォルダに拡張子がzipの圧縮ファイルができました。
App Storeへの登録
App Storeでアプリを公開するために、iTunes Connectを使ってアプリの登録を行います。
iTunes Connectへ接続
Program Portalの「Distribution」にある「App Store」タブを選択します。App Storeの項目にある「Learn More」をクリックして、中ほどにある「Go to iTunes Connect」のリンクをクリックします。
iTunes Connectへのリンク
アプリの登録
iTunes Connect
右側にある「Manage Your Application」を選択します。次の画面で「Add New Application」をクリックして手続きを開始します。
初めてアプリを登録する場合、デフォルトの言語と開発元の名前を設定する画面が表示されます。言語については、この先日本語でしか開発を行わない場合は「Japanese」を選択して構いませんが、他の言語圏でもリリースを行いたい場合は「English」を選択しておくと良いでしょう。開発元の名前はApp Storeで表示されます。この時iTunes Connectに登録されている名前(右上に表示されている)も一緒に表示されるので、ここではそれとは異なるチーム名やブランド名などを設定しても良いでしょう。この2つは後から変更ができませんので、慎重に決定する必要があります。次の画面ではアプリが暗号化技術を利用しているかどうかを確認されますので、通常は「No」を選択して先へ進みます。
次の画面「Overview」ではアプリの情報を入力します。太字は必須項目です。
Application Name - アプリの名前
Application Description - アプリの説明
Device - 対応するデバイス。デバイスのハードウェアに依存する機能を利用している場合は対応するデバイスを選択します
Primary Category - アプリのカテゴリ(ジャンル)
Copyright - 著作権表示。開発者の名前などを入力します
Version Number - App Storeに表示されるバージョンの表記。アプリに設定したバージョンと同じものを入力します
SKU Number - 製品番号。他のアプリと重複しない任意の番号を入力します
Support URL - App Storeに表示されるサポートのリンクに設定するURL
Support Email Address - メールアドレス
すべてを入力したら先へ進みます。
次の画面「Upload」では、あらかじめ用意したファイルを選択してアップロードします。
Application - アプリのファイルを圧縮したもの(拡張子がzipのもの)
Large 512x512 Icon - 512×512ピクセルの大きいアイコンファイル
Primary Screenshot - スクリーンショットのファイル
すべてのファイルの選択が完了したら先へ進みます。
次の「Pricing」では、アプリの公開日と、公開するApp Storeの国を選択します。
Availability Date - アプリの公開日。特に指定しない場合は登録日を選択します
Price Tier - アプリの価格。無料アプリケーションは「Free」を選択します
国の選択では「Japan」のみにチェックを入れた状態にしておくと、日本のApp Storeのみで公開されます。入力が完了したら先へ進みましょう。
次の「Localization」では、デフォルトの言語以外でのアプリの説明を入力することができます。必要に応じて入力しましょう。
すべてが完了したら最後に「Review」で内容を確認し、問題がなければ登録を完了してください。「 Manage Your Application」のトップページに戻り、アプリがリストに追加されていることを確認してください。Statusが「In Review」になっている間は、アプリの審査が行われています。審査が完了してApp Storeで公開されて良い段階になると「Ready for Sale」に変わり、設定した公開日を待って自動的に公開されます。
Statusが「Pending Contract」になっている場合はiPhone Developer Programのアカウント手続きが完了していない状態ですので、しばらく待ってもこの状態が続く場合はADC事務局へ問い合わせてみましょう。
エキスパートを目指して
好きなアプリを作れるようになると、iPhoneやiPod touchを使う楽しみが格段に広がります。本連載は最終的にApp Storeでのアプリの公開を目指しましたが、その過程でオリジナルのアプリを作って動かすことの楽しさを感じていただけましたでしょうか。
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